1998年12月25日、長野県の信用金庫で働く宮本佳代は、給料日の夜に突然姿を消した。 支店では2800万円が消えたと騒ぎになり、佳代は現金を持ち逃げした女性行員として扱われる。家に残された娘の奈緒は、母が用意していたクリームシチューとケーキを前に、帰らない母を待ち続けた。 3日後、千曲川の河原で見つかった母の靴と赤い囲巾。さらに東京行きの片道切符、夫の証言、不自然な借金整理――すべてが「母は家族を捨てて逃げた」と示しているように見えた。 それから23年後。 閉鎖された商店街の地下から、古い貸金庫が発見される。中に入っていたのは、佳代の印鑑、12冊の通帳、そして奈緒が生まれる前に作られたはずの“存在しない口座”だった。 母は本当に2800万円を盗んだのか。 あの夜、灰色の箱に入っていたものは何だったのか。 娘の奈緒が23年越しにたどり着いたのは、信用金庫、父、そして町全体が隠してきた、あまりにも残酷な真実だった――。