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"母の命日と550万円の披露宴" 第1話

スマートフォンをに当てると、義母の美子が命令を突きつけてきた。

「今すぐご祝儀を持ってきなさい。来られないなら婚よ」

私は母をくした直の病院で、震えていた指を止めた。

「では、婚でお願いします」

の母が急逝し、絶望の淵にいた私へ向けられたのは、慰めではなく、義妹の結婚式を優先しろという求だった。

夫の勝も私のしみに寄り添わず、族の体面を守るために私を責めた。

私は、その瞬に彼らとの関係を終わらせると決めた。

その話からわずか2、豪華な披宴会では、勝ち誇っていたはずの勝が声をげることになる。

体、何をしたんだ。おが裏で糸を引いたんだろう」

私が正当な続きを取ったことで、彼らの虚栄に満ちた台は音をてて崩れ始めたのだった。

私は川楓、35歳だった。

夫の勝は、2歳の33歳だった。

毎朝、本社ビルの正面玄関がくと、私は誰もいない役員フロアへ向かった。

顔なじみの警備員は、私を見つけると会釈した。

「おはようございます。今いですね」

私はを止め、笑顔を返した。

「おはようございます。し肌寒くなりましたね」

総務部員である私の仕事は、組織がに環境をえることから始まった。

夜の会議でげられた空調を適温へ戻し、ブラインドの角度を調した。

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役員ごとの好みの茶葉やコーヒーも、すべてに入っていた。

準備を終えて自分の机へ戻ると、午の経営戦略会議で使う資料が置かれていた。

ページをめくった私は、売予測のグラフと添付されたExcel表の数字が致していないことに気づいた。

桁が1つずれていたため、このままでは担当者が会議で責任を問われる。

私は赤い付箋に訂正箇所をき、担当者の机へ差し替えを求めるメモを残した。

誰かが失敗するに防ぎ、組織が滞りなくむように支える。

たなくても、それが私の誇りだった。

8を過ぎると、社した役員たちが次々に声をかけてきた。

常務はを止め、したように私を見た。

「昨配、助かったよ。何も言わなくても、先方の好みにわせて産まで変えてくれたそうだね」

私は軽くげた。

「当然のことをしたまでです」

球1つ、コピー用1枚の管理から類の備確認まで、細部を怠れば組織は簡単に乱れる。

昼休み、私は机でコンビニのパンをべていた。

輩の女性社員が私の元を見て、冗談めかして笑った。

「楓さん、またパンですか。旦さんはお弁当を作ってくれないんですか」

私は苦笑し、袋を畳んだ。

「まさか。夫は料理なんてできないわ」

輩はうらやましそうに首を傾げた。

「でも、の旦様なんて素敵です。

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では楓さんに甘えているんでしょうね」

胸の奥にさな痛みを覚えながら、私は曖昧に笑った。

「そうね。のかかるきな子供よ」

になると、私は勝との約束どおり残業をせずに退社した。

結婚した、彼は私の目を見て言っていた。

「俺より遅く帰ってくるな」

スーパーに寄って築15の3LDKへ戻ると、リビングからゲームの子音が聞こえた。

着を脱ぎ捨て、ソファに寝転んだまま画面を見ていた。

私は着を拾い、彼の背へ声をかけた。

「ただいま。今かったのね」

は画面から目をさず、コントローラーをかした。

「ああ、お帰り」

私はハンガーへ着を掛けながら、散らかったテーブルを見た。

「脱いだものは掛けてって、いつも言っているでしょう」

は眉を寄せ、苛った声を返した。

でやるつもりだったんだよ。今いいところなんだから、話しかけるな」

私は言葉をみ込み、買ってきた材を蔵庫へ入れた。

を作りながら、そのに役員から仕事を褒められたことを話した。

はゲームを続けたままで笑った。

「事務職は気楽でいいよな。俺たち営業はげ、靴底をすり減らして契約を取っているんだ」

私が黙ると、勝はようやく卓へ移り、噌汁をひとんで眉をひそめた。

い。営業は汗をかくんだから、もっと濃くしてくれよ」

私は健康のためだと説したが、彼は聞かず、会社の愚痴を並べた。

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