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"9年間消えた娘と「お姫様の部屋」" 第4話

すっかり夜の帳がりる頃には、リビングルームは段ボールの塔で埋め尽くされていた。

エリコはが残していった古のソファーに、どさりと倒れ込んだ。

彼女の全は、これまでの緊張と肉体労働で完全に疲れ果てていた。

本来ならば、からの仕事に使う制から片付けるべきである。

それに、洗面用具やキッチン用品など、すぐに必なものからをつけるのがだ。

しかし、ソファーに横たわるエリコの目は、あるつの段ボール箱に引き寄せられていた。

その箱の側面には、太いマジックで「ユイナのお気に入り」とかれている。

それは、エリコが婚の続きに追われているに、修平が気を利かせて詰めてくれた箱だった。

エリコは以、ユイナが番好きだったものだけは居に入れて欲しいと、彼に頼んでおいたのだ。

彼女は溢れを抑えきれず、ゆっくりとソファーからを起こした。

に膝をつき、その特別な箱を自分の元へと引き寄せる。

エリコは震える指先で、表面に貼られたガムテープを慎に剥がしていった。

箱のフラップをけると、にはのクマのぬいぐるみが顔をした。

その隣には、ユイナが寝るさなかったお気に入りのユニコーンのぬいぐるみがある。

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さらに、彼女が切にしていた形のコレクションが綺麗に並べられていた。

それらを丁寧に取りすと、そのからはが現れた。

子供代の微かな、甘いりがまだ残っているようにじる。

綺麗に畳まれた柄のワンピースと、さなパジャマだった。

さらに底の方を探ると、懐かしいベビー鹸と、おやつのたまごぼうろの空箱がてきた。

には、何度も読まれて角が折れ曲がった、の絵本たちが平積みにされていた。

『ぐりとぐら』、『はらぺこあおむし』、そして『ノンタン』。

その絵本の束を退けた、エリコはついにそれを見つけた。

赤とのプラスチックでできた、子供用のカセットレコーダーである。

それは5歳の誕に、ユイナが欲しがっていた価な器ではなかった。

トイザらスのおもちゃ売りで買った、比較い録音用のおもちゃだ。

あの、夫婦はしい洗濯を買うために、しでも貯をしたかったのである。

だから、その妥協は当にとっては、極めてな判断にえたのだ。

エリコはそのおもちゃの両端を掴み、ゆっくりと持ちげた。

に伝わるそのさに、彼女はしだけ驚いた。

も放置されていたのだから、池はとっくに切れているはずである。

エリコは裏返し、親指で池ボックスのカバーを押しけた。

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に入っていた古い池はし液漏れを起こしており、周囲がカサカサに乾燥していた。

彼女は元のティッシュを枚引き抜き、属の端子部分を丁寧に拭き取る。

そして、自分の荷物の引きしから買ってきたばかりのしい単池を取りした。

プラスとマイナスの向きを確認し、しい池をしっかりと押し込む。

エリコはレコーダーを正面に直し、く息を吸い込んでから再ボタンを押し込んだ。

カチャッというスイッチの触と共に、懐かしい械音が作した。

ザーといういノイズが数秒流れた、スピーカーからさな声が聞こえてきた。

『テスト、テスト。私はユイナです。5歳です』

その無邪気な声を聞いた瞬、エリコの胸が激しく締め付けられた。

する娘のの声をにするのは、実に9ぶりのことだった。

テープののユイナは、幼稚園での楽しかった来事を弾むような声で話している。

仲良しの友達のことや、庭で見た綺麗な蝶々のこと。

娘が楽しそうにおしゃべりしている、エリコの頬をい涙が止めどなく伝い落ちた。

彼女は両で顔を覆い、しゃくりげるのを必に堪えていた。

しかし、そのだった。

スピーカーから流れる録音の雰囲気が、突然自然に変わったのである。

背景で何かがくような、ガサガサという物音が気配として録音されている。

そして、はっきりと修平の声が聞こえてきたのだ。

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