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"9年間消えた娘と「お姫様の部屋」" 第6話

「遅くまで帰らない予定だよ」

エリコは窓のを見た。

が完全に沈みかけ、空がいオレンジと暗いピンクに染まっている。

彼女は受話器を握り直し、懇願するような声をした。

「今夜のシフトに絶対必なの。私の鍵を使って入ってもいい?」

修平はすぐに答えた。

「もちろんだ」

彼の声に、焦りやためらいはじられなかった。

「どこに何があるかは、君もってるだろう。は鍵をかけてくれ」

エリコはほっと息をついた。

「ありがとう。助かるわ」

「気にするな。今夜の仕事、頑張れよ」

修平はそう言うと、静かに話を切った。

ツーツーという音を聞きながら、エリコは受話器を本体に戻した。

彼女はハンドバッグのから、の鍵と古いの鍵を取りした。

かつてのの鍵の属のみが、今はなぜかひどく奇妙にじられた。

まるで、捨てったはずの古いの残骸を握らされているようだ。

く取りにって、すぐにこのしいに戻ってくるべきだ。

彼女はリビングに散らかったままの段ボールを横目に、玄関へと向かった。

靴を履き、ドアを施錠してへと向かう。

エリコは15分、見慣れた私にシビックを止めた。

は、夕に黒々と静かにそびえっていた。

階の窓ガラスが、沈みゆく最の夕を赤く反射している。

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彼女は玄関のち、バッグから取りした鍵を鍵穴に差し込んだ。

カチャリと錠し、いドアを押しける。

壁のスイッチを探りで押し、気をつけながらを奥へとむ。

の全てが、数に自分たちがったのまま残されていた。

しかし、で歩くこのは、以よりもさらに空虚さが際ってじられた。

エリコは廊を真っ直ぐにみ、突き当たりにある主寝へと向かった。

ここはもう、修平だけが使う部になっている。

彼女は部の隅にある見慣れたキャビネットのち、段目の引きしにをかけた。

スライドさせてけると、「医療資格」と丁寧にラベルが貼られたフォルダーがそこにあった。

エリコはそれをに取り、を素く確認する。

免許更類も、研修の修も、全てがきちんと揃っていた。

彼女は堵のきな息をつき、そのフォルダーを脇にしっかりと抱え込んだ。

任務は完した。あとは病院に向かうだけだ。

エリコが踵を返し、部ようと廊歩踏みしたのことだ。

に、あのカセットレコーダーから流れた言葉が、で鋭く響き渡った。

『お姫様の部

その無邪気な、しかし自然な言葉の響き。

それがまるで、くはまらないパズルのピースのように、エリコのく引っかかった。

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気がつけば、彼女は玄関へ向かうのをやめ、の向きを変えていた。

そして、無識のうちに再びユイナの部へと続く階段を登り始めていたのである。

階段を登りきり、ユイナの部のドアをける。

荷物がすっかり片付けられ、殺景になったその部

に見たよりも、さらに広く、そして底れずしげに見えた。

エリコは壁沿いをゆっくりと歩き、部の隅々まで線を巡らせた。

自分が忘れていたような、「お姫様」に関する飾りがどこかにないかを探したのだ。

しかし、ピンクの壁にも、井にも、それらしきものは何つ見当たらなかった。

彼女は部の奥にある、シールの貼られた古いタンスにづいた。

その、彼女は違に気づき、を止めた。

タンスの巨具全体が、わずかにへと傾いているのである。

が全て取りされ、完全に空になったことで、具の構造な問題が浮き彫りになったのだ。

エリコはをかがめ、タンスの元を覗き込んだ。

製のが、にきちんと着いておらず、数ミリ浮いている。

ユイナが姿を消して以来、この部しみゆえに締め切られていることがかった。

本の特の湿気が部にこもり、板が徐々に歪んでしまったのだろう。

エリコはがり、タンスの側面に両を当てて軽く揺らしてみた。

ガタッという音と共に、タンスはいのほかきくにぐらついた。

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