"消えたアナウンサー" 第4話
それが最初の違いだった。
第章 消された素材
央テレビの古い倉庫には、デジタル化の資料が混していた。
真紀は保担当の許を取り、の報素材覧をかけて洗った。
松田絵里。
野紗季。
央仁誠会。
献体。
どれも映像そのものはてこない。
だが、削除記録だけが自然にっていた。
通常、未放送素材は担当者単位で保期限がばらつく。ところが紗季が追っていた期の部だけ、同じにまとめて「契約の理由」で理されている。
処理申請者の欄は空だった。
「こんなの、あります?」
真紀が保担当に聞くと、相は困った顔をした。
「古いシステム移の期なんで、申請者が落ちたケースはあります」
「契約の理由って?」
「スポンサーや部提供素材の権利関係とか。法務判断とか」
「誰が法務にげたかは?」
「そこまでは残ってないですね」
また、説は成していた。
成する説ばかりが積みなっていく。
真紀は処理を見た。
紗季が失踪した翌週。
そののスポンサー関連記録を辿ると、央テレビの医療特番に黒川文化財団の協賛が入っていた。
当の担当プロデューサーはすでに退職していた。
話をかけると、最初は「覚えていない」と言った。
だが真紀が黒川文化財団の名をすと、い沈黙のあと、声を落とした。
広告
「さん、これ、今さら掘るの?」
「今さらだからです」
「野さんの件?」
「そうです」
「だったら、私は何もらない」
「でも、何かを覚えている」
相はため息をついた。
「、法務から斉に言われたんだよ。仁誠会関連の未確認報は、取材メモも素材もに持ちすなって。名誉毀損リスクがあるからって」
「黒川側から圧力が?」
「そんな直接な話じゃない。スポンサーもある。医療事故報は訴訟リスクがい。普通のリスク管理だよ」
「野さんは?」
「納得してなかった。『普通のリスク管理で、が消えるんですか』って、会議で言ってた」
真紀はメモするを止めた。
「が消える?」
「松田って女性のことだとう」
「その会議、誰がていたんですか」
「報、法務、編成。あと……部から来てた気がする」
「誰です?」
「黒川文化財団のだったかな。いや、医療法の顧問だったかもしれない。だぞ」
名はいせないと言った。
しかし最に、彼はつだけ付け加えた。
「野さんは、その頃から『子記録は信用できない』って言ってた」
「なぜ?」
「病院の搬送記録の付が変わってるとか、そんな話だった」
「どの記録?」
「らない。俺は、証拠がないなら放送できないって言っただけだ」
話が切れた。
真紀は倉庫の蛍灯を見げた。
子記録は信用できない。
その言葉と、標本の管理番号がので結びついた。
広告
MA-214。
もし都メディカルアーツの記録が残っているなら、あの標本がどこから来たか辿れるかもしれない。
会社はすでに吸収併されている。
だが、法登記を追うと、旧社員の名が数てきた。
そのに、記録管理システム責任者として記載された物がいた。
佐伯修。
現歳。
真紀は話番号を探した。
翌の夕方、らない番号から折り返しが来た。
「佐伯です」
「央テレビのと申します。、都メディカルアーツにいらっしゃいましたね」
受話器の向こうで、呼吸が止まった。
「何の話でしょう」
「MA-214という管理番号について伺いたいんです」
数秒、無音になった。
そして佐伯は、い声で言った。
「その番号を、どこで見ました」
「の体標本展です」
再び沈黙。
「会っていただけませんか」
「無理です」
「野紗季さんをごじですか」
話が切れた。
真紀は画面を見つめた。
拒絶だった。
だが、らないの反応ではなかった。
第章 の台帳
佐伯修が会う気になったのは、だった。
〈テレビ局ではなく、個として来てください〉
指定されたのは、央県の沿いにある古い喫茶だった。
佐伯は窓際の席に座っていた。髪まじりの髪をく切り、いグレーのシャツを着ている。退職した技術者らしい、目たない男だった。
真紀が名刺を差しすと、受け取らなかった。
「録音は?」
「許をいただけるなら」
「駄目です」
真紀は録音を鞄に戻した。
「MA-214は、都メディカルアーツの番号ですか」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 22 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 94 -
完結第16話
雪の空港で消えた四人と第七格納庫
1989年のクリスマスイブ、北海道の空港から四人の客室乗務員が姿を消した。車には荷物と靴だけが残され、手掛かりのないまま35年が過ぎる。 2024年、解体中の旧格納庫で隠し部屋が発見され、事件は再び動き始めた。浮かび上がったのは、空港内部を熟知し、彼女たちを密かに監視していた元整備士だった。ミステリー|真実|真相1.9万字5 135 -
完結第14話
七年後、屋上で見つかった妻の秘密
1993年、鹿児島。自治会の帳簿を整理していた主婦・ミキは、過去の火災復旧費に不自然な水増しを見つける。調査を始めた直後、彼女は遺書とバッグだけを残して姿を消した。 投身とされた事件から七年後、マンション屋上の封鎖された旧貯水槽から、ミキと一致する人骨が発見される。ミステリー|真相|行方不明2.1万字5 221 -
完結第12話
二十六年目の告白
余命わずかな夫・浩司は、妻ゆみに衝撃の告白をする。二十六年前、ゆみが産んだ息子と愛人の子を、病院で密かにすり替えたというのだ。 だが、ゆみはすべてを知っていた。夫の行動を目撃し、名札を元へ戻していたため、浩司が愛人の子だと信じて溺愛してきた誠は、紛れもなくゆみの実子だった。夫婦|真相|親子関係|修羅場|不倫1.7万字5 1368 -
完結第13話
成人式に消えた母と十三着目の振袖
2014年の成人式当日、貸衣装店から母・奈津子が消えた。店の960万円もなくなり、共に姿を消したカメラマンとの逃避行が疑われる。娘の紗季に残されたのは、「今日は署名をしないで」という謎のメモだけだった。 10年後、閉店する店の倉庫から、記録にない「13着目の振袖」が見つかる。その裾には、若い女性たちの名義で作られた高額ローン契約書と、母が隠した証拠が縫い込まれていた。ミステリー|真実|行方不明2.3万字5 274 -
完結第18話
昭和38年、つなぐなと言われた救急電話
昭和38年、山間の電話交換所で働く澄子は、診療所から県立病院への緊急電話を受ける。重傷の17歳を救うための連絡だったが、主任は「その電話だけは絶対につなぐな」と命じた。 少年が亡くなった後、澄子の判断ミスとして処理されようとする。しかし記録を調べると、救急回線が止められていた時間にも、工事会社と本社、町役場の間では電話がつながっていた。時代|歴史|昭和|ミステリー2.3万字5 155 -
完結第10話
31年間、母が捨てなかったマットレスの秘密
31年間、両親が頑なに使い続けてきた古いマットレス。中央は大きく沈み、父の腰痛も悪化していたが、母はなぜか買い替えを拒み続けていた。 息子のデイヴィッドは、両親を旅行へ連れ出した隙に新しいものと交換しようとする。ところが搬出業者から、「お母様を寝室へ入れず、まず一人で確認してください」と切迫した電話が入る。 マットレスの下から現れたのは、古い手紙や小さな靴、写真、ぬいぐるみ。そこには両親が31年間、息子にさえ存在を明かさなかった幼い娘・グレースの記憶が封じられていた。 娘を失った悲しみから逃げるため、名前すら口にしなくなった父。そして誰にも見つからない場所で、毎年娘へ手紙を書き続けた母。古い寝台が取り払われた日、沈黙の下に閉じ込められていた家族の時間が、ようやく光の中へ戻り始める。ミステリー|真実|真相|親子関係1.5万字5 773