みかん小説
本棚

"愛人とタイへ行った夫の10日後" 第3話

本棚の裏にテープで貼り付けてあるさな鍵を取り、引きしをける。

には私の通帳と計関係のファイルが入っていた。

私は自分のものを取りした。

それだけで終わるはずだった。

だが、引きしを閉めようとした、奥に見慣れない黒い革張りの帳があることに気づいた。

何となく胸騒ぎがした。

に取り、く。

に挟まれていたを見た瞬、私は息を止めた。

細だった。

名義は浩司。

だが、私がっている座ではない。

その座へ入っていたのは、5くなった私の父が残してくれた遺産だった。

父はさな町を営み、毎油まみれになって働いた。

母と2、決して贅沢をせず、私のために残してくれた約1500万円。

父がくなった、浩司は言った。

「こんな、由美が持っていると配だろ。俺が定期預にして、老の資として管理してやる」

私は夫を信じた。

疑う理由などないとっていた。

けれど、細の残は数万円にまで減っていた。

のように数万円が引きされている。

級レストラン。

ブランドショップ。

そして、繰り返されていた同じ座への振り込み。

振込先には、はっきりと名があった。

美穂。

私は子に座り込んだ。

父と母が懸命残してくれたおを、浩司はのために使っていた。

広告

さらに細のろから、都内の級マンションのパンフレットがてきた。

には、浩司の字でき込みがあった。

向き希望〉

〈キッチン広め〉

500万円支払い済み〉

昨夜、私が荷造りを伝おうとしたのことをした。

「触るな。会社の類が入っている」

浩司は私のを払いのけた。

あのスーツケースに類など入っていなかったのだろう。

入っていたのは、美穂と過ごす10のためのや荷物だった。

そして、私への何にもわたる裏切り。

しいというは、議なほど湧かなかった。

代わりに、腹の底からたいりがこみげてきた。

「由美さん! ちょっと!」

1階から呼ぶ声が聞こえた。

私は細やパンフレットを度戻し、く息を吸ってからへ向かった。

義母はテレビを見ながら満そうにを尖らせていた。

「テレビの音がさいわ。それに寒い。浩司がいないと、あんたは本当に気が利かないわね」

画面には偶然にもタイの美しいが映っていた。

青い空。

い砂浜。

エメラルド

「浩司さんは、あんな綺麗な所で仕事なんて変ですね」

私が静かに言うと、義母は得げにを鳴らした。

「当たりでしょう。浩司は会社のために働いているのよ。あんたみたいにで1だらだらしてるには分からないでしょうけどね」

広告

私は黙って義母を見た。

何もらない。

息子がと旅していることも。

その息子が、母親の介護費まで惜しみながら自分のしい活を準備していることも。

義母自もまた、浩司にとって邪魔なになっていることも。

私はエアコンの温度だけ調し、部た。

斎へ戻り、さっきの黒い帳をもういた。

その奥に、い封筒があった。

取りしてみると、封はされていない。

には役所で使う婚届が入っていた。

すでに浩司の欄には署名と押印がある。

そして証欄には、田美穂の名かれていた。

体がたくなった。

浩司はタイから帰ったら、これを私へ突きつけるつもりだったのだ。

さらに、婚届にはピンクの便箋がクリップで留められていた。

丸みを帯びた若い女性の字だった。

〈浩司さんへ

いよいよだね。ずっと楽しみにしてたから嬉しい。

ところで、あの邪魔なおばあちゃん、くどうにかならないかな。

でも今すぐ施設に入れるとおかかっちゃうから、それまでは奥さんにたっぷり働かせておこうね。

奥さんのお父さんが残したおは、私たちのしいマンションの具に使えるし。

から帰ったら、いよいよ婚届を突きつけてから追いしちゃおう。

く浩司さんと2きりで暮らしたいな。

美穂より〉

私は何度も読み返した。

これほどの悪がまっすぐ文字になったものを、私は見たことがなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: