"離婚したら140万円の請求が来た" 第1話
そのの夕は、私が2くかけて作った。
豚の角煮には姜と髪ねぎを添え、魚の煮付けとにんにくの芽の炒め物、それに義姉の彩子さんの息子・健太が来るたびんでべる鶏の唐揚げまで用した。鍋をにかけたりろしたりするたび、油と湯気のにおいがなって喉の奥が詰まり、胃が何度もむかついた。
最の私は、以とはらかに違っていた。
臭い魚のにおいも、揚げ油のにおいも、しくじただけで気分が悪くなる。それでも私は唇を固く結び、をんでから再び包丁を握った。
今は、どうしても夫の勇気に話したいことがあったからだ。
私は妊娠2かだった。
先週、産婦科で診察を受けた。医師からは赤ちゃんの拍も確認でき、今のところ順調だと言われた。
病院をた、私は目も構わず泣きそうになった。
結婚して7。
子供を望まなかった期など度もない。それでも期待しては何も起きず、だけが過ぎていった。
だから今回は、勇気が仕事から帰ってきたら温かい卓を囲み、2きりでゆっくり伝えようとっていた。
ところが午3をし過ぎた頃、彩子さんが健太を連れてやって来た。
玄関をけた途端、彼女は自分のへ帰ってきたような顔で靴を乱雑に脱ぎ捨てた。そしてリビングのソファへ体を投げし、スマートフォンで音量のきな画を流し始めた。
広告
甲い笑い声と派な音楽が、キッチンまで響いてくる。
その騒音になるように、卓でピーナッツの殻をむいていた義母が声をげた。
「さやかさん、ここ、まだ汚れてるわよ。この彩子が来たも、テレビ台の隅に埃が残ってたって言ってたでしょう」
私は雑巾を持つを止め、計を見た。
1740分。
勇気は普段18を過ぎてから帰宅する。
私は何も言わず、を洗ってご飯をよそい、箸を並べ直した。せめて夕くらいはきちんとした形にしたかった。
「お腹すいた」
健太が唐揚げの皿へを伸ばした。
彩子さんは息子のを軽く叩いた。
「だめ。叔父さんが帰ってくるまで待ちなさい。卓では儀よくしないとね」
そう言いながら、本は唐揚げを1つつまみ、を確かめるように眺めた。
「あら、ちょっと濃すぎない? 醤油入れすぎたんじゃないの」
私は黙った。
「私ならこんなには作らないわ。勇気みたいに毎何万円も稼いでくる男に、こんなのべさせるなんてね」
私は皿を1枚に取り、そのままキッチンへ戻った。
結婚して7、こので学んだことがある。
言い返せば言い返すほど、話はきくなる。
私が1つ反論すると、彩子さんは10の話に膨らませた。しでも言い返せば、「婚して1で息子を育てている私がどれだけ変か分からないの」と泣き、義母は必ず娘の側についた。
広告
そして勇気は、ほとんど黙っていた。
その沈黙が、には骨な悪よりも私を疲れさせた。
1810分。
玄関がいた。
いシャツにスラックス姿の勇気が入ってきた。35歳の彼は京のIT企業で技術チームのリーダーを務め、収入も定していた。
では「仕事のできる男」「族いの夫」と見られていた。
義母も、親戚のではいつも自げだった。
「娘は婚したけれど、頼りになる弟がいるから何の配もないの」
勇気がを洗いにくと、彩子さんはすぐを追った。
「勇気、お帰り。ちょっと聞いてよ。今またあなたのお嫁さん、きな箱を3つも受け取ってたのよ」
洗面所から戻ってきた勇気の顔が固くなった。
「また何か買ったのか」
私はをきかけた。
は妊婦用の栄養剤、ゆったりした、それに妊娠や育児に関する本だった。
しかし、腕を組んでこちらを見ている彩子さんと、答えを待つ義母を見た瞬、説する気が失せた。
「必なものを買いました」
勇気の眉が寄った。
「必なものって何だよ。1度に3箱も?」
彩子さんがすかさずを挟んだ。
「にいて働いてるわけでもないんだから、普段は適当なでいいじゃない。おを使うことばかり考えない方がいいわよ」
私は振り返り、初めて彩子さんをまっすぐ見た。
議だった。
いつもの私なら、が悪くなることを恐れて黙っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
3年ぶりの帰省、弟嫁がゴミ箱を漁っていた理由
32歳の玲奈は、3年ぶりに実家へ帰り、弟の妻・南が別人のように痩せていることに驚く。夕食の席でも南の前には料理がなく、家族は誰も気に留めない。その深夜、台所で物音を聞いた玲奈は、ゴミ箱を漁る南の姿を目撃する。「食べられるものを探していました」――その言葉をきっかけに、母と弟が南に強いていた異常な暮らしが明らかになっていく。さらに、南が隠し持っていた手帳には、翌朝に迫る恐ろしい約束が記されていた。玲奈は弟嫁を守るため、信じていた家族と向き合う決意をする。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|修羅場2.4万字5 37 -
完結第11話
新婚初夜の裏切り
結婚式を終えた夜、美香はホテルの浴室から、夫の健太が自分のバッグを探る姿を目撃する。持ち去られたのは、父から贈られた1億円の預金口座のキャッシュカードだった。翌朝、健太は「弟の用事がある」と言ってホテルを出ていく。以前から義母と義弟は、8800万円の新居を欲しがっていた。まさか、私のお金で家を買うつもりなの? 夫を問い詰めず、黙って様子を見る美香。やがて不動産会社から、思いもよらない電話がかかってくる。結婚初日に露わになる夫の本性と、美香が密かに用意していた対抗策とは。兄弟姉妹|夫婦|ATM扱い|金銭問題1.8万字5 38 -
完結第16話
二人きりのはずだった旅行
結婚以来、義母のわがままと、それを当然のように受け入れる夫・俊也に振り回されてきた由香。二人きりの結婚記念日旅行まで義母に台無しにされた翌年、夫は「今度こそ二人だけで行こう」と約束する。ところが出発当日、玄関には大きな旅行鞄を抱えた義母の姿が。「家族なんだからいいだろ」と開き直る夫に、由香は思い切った行動に出る。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題3.0万字5 743 -
完結第16話
「姉の足を折る」と笑った地元の顔役――7年ぶりに帰った“工場勤務”の弟を見下したが、彼の本当の勤務先を知った時にはもう遅い
32歳の佐藤健二は、神奈川の工場で働いていると家族に嘘をつき、陸上自衛隊に勤務していた。故郷を離れて7年。ある日、姉・由美子が営む食堂が地元企業の社長・山田大蔵に襲われ、母まで倒れたと知らされる。再開発予定地を狙う山田は、警察官や市役所職員と結託し、1600万円で店を奪おうとしていた。健二を貧しい工員だと決めつけ、「次は姉の足を折る」と笑う山田。だが健二は拳を使わず、11回の不正閲覧、病室の録音、4600万円の資金移動を一つずつつなぎ、町を支配する巨大な癒着へ迫っていく。兄弟姉妹2.1万字5 246 -
完結第18話
夜勤明けに鍵を替えられた私
看護師長として働く千歳は、後輩に昇進で追い抜かれ、仕事を休みがちになった夫・徹を支えようとしていた。ところが徹は次第に横柄になり、家事を押しつけ、「妻なら夫に従え」と言い始める。そんなある朝、夜勤を終えて帰宅した千歳は、玄関の鍵が替えられていることに気づく。「ダメ嫁への躾だ。謝れば入れてやる」と笑う夫に、千歳は「あっそ。さようなら」とだけ告げて立ち去った。妻が本気で戻らないと知った徹は、どんな行動に出るのか。自分の人生を取り戻そうとする女性の再出発を描く物語。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.6万字5 99 -
完結第10話
もやしと消えた仕送り
フリーランスのデザイナーとして働く里見は、一人暮らしの母・春江に毎月10万円を仕送りしているつもりだった。ところが、久しぶりに訪ねた実家で目にしたのは、冷やご飯ともやしだけの寂しい食卓。母は仕送りなど一度も受け取っていないと言う。家計を任せていたのは、優しく頼りになる夫の久し。疑念を抱いた里見が夫のスマホを確かめると、そこには信じがたい送金記録と、妻をあざ笑うメッセージが残されていた。さらに、夫が隠していた給与明細にも不可解な数字が……。信じていた家族の裏切りを知った里見の反撃が始まる。裏切られた|嫁姑|親子関係|金銭問題1.5万字5 67 -
完結第20話
夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転
夫・達也の専務昇進を喜んだ美桜。ところが父に報告すると、返ってきたのは祝福ではなく、「財産をすべて母さんの名義に移しなさい」という不可解な指示だった。昇進を境に夫は横柄になり、義母まで豪邸と通帳を自分たちのもののように扱い始める。さらに、高額な宝石の領収書や会社の不審な資金移動が見つかり、美桜は夫の裏の顔を知っていく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.5万字5 99 -
完結第20話
「子なし」と笑われた私に、姪が吹雪の夜に土下座した
43歳の望は、子どもがいないことを理由に、義兄夫婦から嫌味を言われ続けていた。そんな望を慕ってくれるのは、8歳の姪・メイ。しかし正月の夜、猛吹雪の中、幼い妹を背負ったメイが望の家を訪ねてくる。「三千円だけ貸してください。大きくなったら返します」そう言って床に頭を下げる少女。事情を聞いた望と夫の剛は、義兄夫婦が隠してきた恐ろしい実態を知る。因果応報|人生逆転|嫁姑|第二の人生|絶縁1.9万字5 548 -
完結第10話
赤ワインの余興
義妹・真由美の結婚披露宴で、突然赤ワインを浴びせられた美桜。義母も親族も「ただの余興」と笑い、夫の達也まで美桜を責め立てる。 結婚して三年。貧しい嫁だと見下され、家族の言いなりになってきた美桜だったが、実は誰にも明かしていない秘密があった。 しかも、名門病院の跡取りとの結婚を喜ぶ義妹には、恐ろしい裏の顔があった。美桜の手元には、披露宴前夜に録音された決定的な会話が残されている。 華やかな祝宴の裏で進む金と欲望の企み。美桜が静かにスマホを取り出したとき、すべてが動き始める。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|第二の人生1.9万字5 674