"兄を笑った銀行一家へ、300億円の解約通知" 第1話
郎控の1
「結婚も、式も、全部ドッキリだったって」
兄はいタキシードの膝を撫でながら言った。私が郎控の扉をけたのは午1045分。挙式まで、あと15分のはずだった。
胸にはいが挿してあり、靴だけはの誕に私が贈ったものだった。鏡のには子が2脚並んでいたが、兄の隣には誰もいない。さな机に、指輪の箱と「絵里さんへ」とかれた封筒が置かれていた。
「嘘って、誰が言ったの」
兄はスマートフォンを差しした。画面のには、午942分の受信刻が残っている。
再すると、見覚えのない座敷が映った。央に座る男性の両脇で、女性と若い男性が笑っている。兄から見せてもらった族写真にいた、婚約者の父母と兄だった。
『ドッキリ成功。琢磨さん、ここまでお疲れさまでした』
母親の園部正子が拍をした。隣の息子がを乗りし、カメラに向かって尋ねる。
『本当にの婿になれるとってました?』
父親は笑いを収めるようにをげた。
『悪くわんでくれ。の程をるのも、いい勉だ』
画は80秒で終わった。兄が待っていた相の姿は、最まで映らなかった。
「絵里さんには話した?」
「ない。何度かかけたけど」
机のお茶はえていた。兄はコップをしかし、その跡を指で拭いた。私の目を見るより、そのさな滴を消す方が楽なのだとった。
広告
夜、ソウルから戻る便が欠航になった。振り替えられた朝の便も遅れ、ホテルに着くまで兄に連絡がつかなかった。着替えや写真で忙しいのだろうと、タクシーので祝辞を読み直していた自分が腹たしかった。
「9に来て、940分には着替え終わったんだ。そのすぐに、これが来た」
「ホテルのは?」
「取りやめだって説してくれた。着替えも伝うって。でも、おが来るまではとって」
兄は扉を見た。
「誰もいなかったら、探すだろ」
私のために、この格好で待っていた。廊では台の輪が鳴り、使われなかったらしいが箱に戻されていた。兄が何度も確かめた予定だけが、部のに取り残されている。
「俺が、の程らずだったのかな」
兄は元を緩めた。昔から、自分が困ると先に笑ってしまうだった。
23、両親を失った、兄は20歳で私は12歳だった。学を辞めて昼も夜も働き、私を学までかせてくれた。その兄が43歳になって初めて、自分の結婚を楽しそうに話したのだ。
私は隣の子を引き、兄と同じさに座った。
「お兄ちゃんが恥じることは、何もないよ」
「でも、向こうには向こうの」
「この画を撮って送る理由にはならない」
兄の指先が、い膝ので止まった。そこで初めて私の顔を見たので、目を逸らさずに続けた。
「好きなのためでも、こんな扱いを受け入れなくていい」
広告
兄はしばらく黙っていた。壁の計がみ、廊から聞こえる話し声がざかった。やがて、机に広げていた当の表を折り畳んだ。
「そうだな。もう、始まるのを待たなくていいんだな」
そのを財布に戻すつきが、朝から待ち続けたを終わらせるように見えた。
「画、私にも送ってくれる? 誰に何をされたのか、消えないようにしておきたい」
兄は頷いた。届いたファイルを保してから、私はスマートフォンを伏せた。今は先に着替えて、この部をよう。そう言いかけた、いノックので扉がいた。
黒留袖の女性が入ってきた。画ので拍をしていた正子だった。ろにはモーニング姿の夫と、濃紺のスーツを着た息子がいる。
正子は兄の赤い目を見ても、を止めなかった。
「まだお着替えになっていないのね。そのタキシード、こちらで用したものですから、忘れずにお返しくださいな」
兄は反射にとうとした。私はその腕に触れ、子に座ったままでいてもらった。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
3年ぶりの帰省、弟嫁がゴミ箱を漁っていた理由
32歳の玲奈は、3年ぶりに実家へ帰り、弟の妻・南が別人のように痩せていることに驚く。夕食の席でも南の前には料理がなく、家族は誰も気に留めない。その深夜、台所で物音を聞いた玲奈は、ゴミ箱を漁る南の姿を目撃する。「食べられるものを探していました」――その言葉をきっかけに、母と弟が南に強いていた異常な暮らしが明らかになっていく。さらに、南が隠し持っていた手帳には、翌朝に迫る恐ろしい約束が記されていた。玲奈は弟嫁を守るため、信じていた家族と向き合う決意をする。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|修羅場2.4万字5 37 -
完結第11話
新婚初夜の裏切り
結婚式を終えた夜、美香はホテルの浴室から、夫の健太が自分のバッグを探る姿を目撃する。持ち去られたのは、父から贈られた1億円の預金口座のキャッシュカードだった。翌朝、健太は「弟の用事がある」と言ってホテルを出ていく。以前から義母と義弟は、8800万円の新居を欲しがっていた。まさか、私のお金で家を買うつもりなの? 夫を問い詰めず、黙って様子を見る美香。やがて不動産会社から、思いもよらない電話がかかってくる。結婚初日に露わになる夫の本性と、美香が密かに用意していた対抗策とは。兄弟姉妹|夫婦|ATM扱い|金銭問題1.8万字5 38 -
完結第16話
二人きりのはずだった旅行
結婚以来、義母のわがままと、それを当然のように受け入れる夫・俊也に振り回されてきた由香。二人きりの結婚記念日旅行まで義母に台無しにされた翌年、夫は「今度こそ二人だけで行こう」と約束する。ところが出発当日、玄関には大きな旅行鞄を抱えた義母の姿が。「家族なんだからいいだろ」と開き直る夫に、由香は思い切った行動に出る。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題3.0万字5 743 -
完結第20話
娘の披露宴に新郎側が全員欠席――清掃員の夫が動いた
一人娘の紗良が待ち望んだ結婚式。しかし披露宴当日、新郎側の42席はすべて空席だった。ようやくかかってきた婚約者からの電話には、「結婚なんて冗談だ」という声と、清掃員の父を見下す家族の笑い声。泣き崩れる娘を抱きしめる母・千尋の隣で、いつも穏やかな夫・涼一が静かに言った。「あの一族は、もう切る」。翌朝から、新郎一家の電話が鳴りやまなくなる。三十一年間、黙々と床を磨いてきた夫には、家族さえ知らない一面があった。あの一言には、いったいどんな意味が隠されていたのか。因果応報|人生逆転|夫婦|第二の人生2.7万字5 1253 -
完結第18話
夜勤明けに鍵を替えられた私
看護師長として働く千歳は、後輩に昇進で追い抜かれ、仕事を休みがちになった夫・徹を支えようとしていた。ところが徹は次第に横柄になり、家事を押しつけ、「妻なら夫に従え」と言い始める。そんなある朝、夜勤を終えて帰宅した千歳は、玄関の鍵が替えられていることに気づく。「ダメ嫁への躾だ。謝れば入れてやる」と笑う夫に、千歳は「あっそ。さようなら」とだけ告げて立ち去った。妻が本気で戻らないと知った徹は、どんな行動に出るのか。自分の人生を取り戻そうとする女性の再出発を描く物語。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.6万字5 99 -
完結第10話
もやしと消えた仕送り
フリーランスのデザイナーとして働く里見は、一人暮らしの母・春江に毎月10万円を仕送りしているつもりだった。ところが、久しぶりに訪ねた実家で目にしたのは、冷やご飯ともやしだけの寂しい食卓。母は仕送りなど一度も受け取っていないと言う。家計を任せていたのは、優しく頼りになる夫の久し。疑念を抱いた里見が夫のスマホを確かめると、そこには信じがたい送金記録と、妻をあざ笑うメッセージが残されていた。さらに、夫が隠していた給与明細にも不可解な数字が……。信じていた家族の裏切りを知った里見の反撃が始まる。裏切られた|嫁姑|親子関係|金銭問題1.5万字5 67 -
完結第20話
夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転
夫・達也の専務昇進を喜んだ美桜。ところが父に報告すると、返ってきたのは祝福ではなく、「財産をすべて母さんの名義に移しなさい」という不可解な指示だった。昇進を境に夫は横柄になり、義母まで豪邸と通帳を自分たちのもののように扱い始める。さらに、高額な宝石の領収書や会社の不審な資金移動が見つかり、美桜は夫の裏の顔を知っていく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.5万字5 99 -
完結第15話
年収三千万円の嘘
41歳の内科医・相沢まりなは、家事と育児を任せていた専業主夫の康太が、息子のサッカークラブの保護者・美沙と親密な関係になっていたことを知る。しかも二人は、子どもたちを置き去りにして密会を重ねていた。息子を守るため離婚を決意したまりなのもとに、ある日、美沙から再婚式の招待状が届く。驚いたことに、康太は自分を「年収3000万円の医師」だと偽っていた。元妻を見下し、披露宴で祝辞まで読ませようとする美沙。招待を受けたまりなは、いったい何を語るのか。夫婦|第二の人生|不倫2.6万字5 1160 -
完結第10話
母の農地を狙う夫と離婚――元義母が見た光景
母が女手一つで守ってきた農地を、会社の借金の担保に使いたい。夫・明の身勝手な申し出を拒んだ奈津美は、義母からも実家を見下され、ついに離婚を決意する。故郷へ戻った彼女は、農作業のためにビニールハウスの隣に仮住まいを設けるが、噂はいつしか「家もなく、ハウスで寝泊まりしている」と広まってしまう。元嫁の転落を喜ぶ義母は、その惨めな姿を見ようとわざわざ訪ねてくる。しかしその頃、奈津美は農家仲間と新たな挑戦を始めていた。再会の日、元夫と義母が目にした光景とは――。因果応報|人生逆転|夫婦|相続|親子関係|金銭問題1.3万字5 403