"兄を笑った銀行一家へ、300億円の解約通知" 第5話
古い封筒の宛先
曜の午、会議へ入る直に宇野が振込結果を見せた。最初の100億円が、移管先のに着していた。残る資と各種決済は、支払を確認しながら順に切り替えていく。
「先方から条件の再提示が来ています。まだお受けしておりません」
「予定どおりめてください」
私は画面を確認してから、兄を振り返った。兄は午の休みを取り、仕事用の鞄を持って来ていた。宇野が子を引くと、し戸惑いながら礼を言った。
向かいには修と克彦、そして正子が座っていた。成沢は先方の取りまとめ役として挨拶し、私たちの承を得て記録を取り始めた。個の婚約の話と、法取引の話を順に確認するだと説した。
「先は、配慮を欠くことがあった」
修は私に向かってをげた。兄の方には、まだ体を向けていなかった。
「何についてのお話でしょうか」
「お兄様のお気持ちを傷つけたことだ。私たちも、しやり方を違えた」
兄は机の縁に置いていたを引いた。正子がそれを見て、すぐにを乗りした。
「琢磨さん、絵里も落ち込んでおりますの。あの子の気持ちを考えれば、もう度お話しいになった方が」
「絵里さんから、そう頼まれたんですか」
正子の言葉が途切れた。
「本とは、あのから話せていません。俺が何を考えているかも聞かないで、先に決めないでください」
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兄の声はきくなかった。膝のでは指を組んでいたが、正子から目を逸らさずに言い終えた。私は隣で、そのがほどけるのを待った。
克彦が類を私のへ滑らせた。
「法のお取引については、本部に専任の担当を置きます。との送も、専部署で優先に対応します。預利もこちらで」
宇野は類を受け取ったが、かなかった。
「そのご相談は、以から何度か差しげております。今回は条件交渉ではなく、移管に伴う確認です」
克彦は私を見た。私は宇野の言葉を引き取り、準備をめていたこと、今すでに最初の送が完したことを伝えた。
「100億、もうしたのか」
修が机にをついた。兄を見るとは違う、はっきりした驚きだった。
「はい。残りも計画に沿って移します」
「待ってくれ。せっかく族になるはずだったんだ。婚礼の件が収まれば、取引の方も考え直せるだろう」
私は持参した鞄を子の横へ置いた。りに任せて答えると、兄がまた自分のせいにする。修の言葉を度み込んでから、声をえた。
「兄の結婚と引き換えに預を戻す、という話はいたしません」
成沢が修へ向き直り、その点は分けて話す必があると告げた。修は子の背に体を戻したが、類の角を指で押さえ続けていた。
「それなら、なぜだ。君の会社なら、もっときなと取引できただろう。
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なぜ、うちに300億も残していた」
兄が私を見た。その問いだけは、兄も答えをらなかった。
私は鞄から茶い封筒をした。角が擦れ、を留めた跡がくなっている。先週、会社の創業10周の資料を集めるため、兄から借りていたものだ。昨夜、成沢の言葉を伝えて、今持っていく承をもらった。
「10、株式会社ミレイは、そちらのから初めて1000万円を借りました」
成沢が静かに頷いた。兄は封筒を見て、し困ったような顔をした。
「美玲、それはもう終わった話だろ」
「うん。おは3で返した。7に、全部終わってる」
私は封筒を机の央に置いた。
「でも、私がそのもお取引を続けてきた理由は、ここに残っています」
修は封筒と兄の顔を交互に見た。正子は何か言いかけたが、成沢がを乗りしたのでを閉じた。
「成沢さん。当、この類を担当されたのは、あなたでしたね」
「はい。私です」
私は封筒のをいた。内側には、折り目のついたがなっていた。
「では、2枚目にある兄の名を、こちらの皆さんにも確認していただけますか」
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