"空っぽの弁当箱" 第9話
表にいた。
《瀬戸内の》
いつかってみたかった。
夫が元気だった頃、
「定したら瀬戸内の島をゆっくり回ろう」
と話していた。
叶わなかった約束だった。
今度は1でもってみたい。
しずつを貯めた。
の終わり。
健が、はる子の選んだ曜に遊びに来た。
今では必ず先に「このは空いてる?」と聞いてくる。
陸も芽も緒だった。
芽がさなノートを持ってきた。
表に丸い字で、
《おばあちゃんのこと》
といてある。
「何これ?」
はる子が笑った。
「のノート、おばあちゃんのページだけ真っだったでしょう」
芽が言った。
「だから、今度は聞いてこうとって」
「そう」
「好きなべ物は?」
はる子はし考えた。
「卵焼きかな。ちょっと甘いの」
芽がく。
《し甘い卵焼き》
「好きなは?」
「コスモス」
《コスモス》
「きたい所は?」
はる子は窓ののカーテンを見た。
「瀬戸内の」
芽が顔をげる。
「旅?」
「そのうちね」
「ったら写真見せて」
「もちろん」
陸もをいた。
「ばあちゃん、俺、今度レギュラーの試ある」
「そうなの?」
以なら、はる子は付を覚え、弁当のことまで考えただろう。
今は違う。
「頑張ってね。終わったら結果聞かせて」
覚えなくても、また聞けばいい。
その距がよかった。
美も、自分の仕事のことを話した。
健も最健康診断で注された話をした。
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はる子は誰の予定もノートへかなかった。
代わりに、互いに話すようになった。
誰か1が族全員を覚えるのではなく、自分のことは自分で話す。
それが、以のにはなかったことだった。
事係をりると告げた夜から、1が過ぎた。
1018。
はる子は59歳になった。
朝、鏡ので髪をえた。
の初めに自分で買ったのブラウスを着る。
誰かに見せるためではない。
今はし、自分のためにきれいにしたかった。
午は図館へった。
勤務が終わる、同僚が声をかけた。
「佐々さん、今お誕でしたよね」
はる子は驚いた。
「覚えてたの?」
「先、申請にいてあったので。おめでとうございます」
「ありがとう」
それだけなのに、胸がしくなった。
午。
はる子は駅のさなカフェへ入った。
窓際の席へ座り、メニューをく。
「ショートケーキをつお願いします」
員が注文をき留める。
はる子はし迷ってから付け加えた。
「今、誕なんです。ろうそく、1本だけつけてもらえますか?」
員が笑った。
「もちろんです」
しばらくして、いクリームのケーキが運ばれてきた。
さなろうそくが本。
「お誕おめでとうございます」
「ありがとうございます」
は、同じ付を族の誰も覚えていなかった。
けれど今は違う。
自分から、
「今、誕なんです」
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と言えた。
誰かが気づいてくれるまで待つ必はなかった。
自分でを選び、自分でケーキを選び、自分の誕を祝う。
はる子はろうそくのを吹き消した。
ショートケーキをべる。
「おいしい」
自然に笑った。
帰りにへ寄り、コスモスを3本買った。
部へ戻り、さな瓶へ飾る。
テーブルには来週の予定表が置いてある。
病院。
図館。
映画。
何も入っていない。
はる子はその空を見つめた。
以なら、空いているがあれば誰かの用事を入れていた。
今は、自分の予定を入れられる。
《コスモスを見にく》
いた。
そして引きしをける。
《瀬戸内の》といた封筒を取りした。
には、しずつ貯めたおと、先週自分で買った11の切符が入っている。
予定表へもうついた。
《1110 瀬戸内のを見る》
その、スマートフォンが鳴った。
芽からのメッセージだった。
《おばあちゃん、お誕おめでとう!》
続いて陸。
《誕おめでとう。試勝った。今度写真見せる》
健。
《母さん、おめでとう。今度都いいにご飯こう》
美。
《お誕おめでとうございます。予定がうにお茶しませんか》
はる子はつずつ読んだ。
すぐ返信はしなかった。
予定表をき、自分の都を確認する。
そのうえで、
《ありがとう。来週の曜なら空いています》
と送った。
族だから、いつでも応じなければならないわけではない。
族だから、自分の予定を諦める必もない。
会いたいに会い、話したいことを話し、嫌なことには嫌と言う。
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