"消えた交換手と鳴らなかった電話" 第3話
それでも捨てられなかった」
登美から直接そう言われた枝は、謝だけを返せなかった。誰もが証拠を守ったと言いながら、会いに来ることはしなかった。母の失踪をるが町には何もいたのに、誰も娘がどんなふうに母を待ったか確かめなかった。
局の裏を歩くと、古いの柱が本だけ残っていた。配線はしいものに替わっていても、碍子の跡が幹に付いている。枝はその柱を写真に撮り、京で暮らす良太へ送った。弟は《覚えている。が積もると、ここだけ先にくなった》と返した。母の捜索を伝うとはまだいていないが、弟も同じ町の記憶を持っていた。
勤務簿を持ち帰った枝は、当の交換局で配線係をしていた戸田文男を訪ねた。戸田は隣町の器を息子に譲り、庭で囲いの縄を結んでいた。最初は古い記録になどないと言ったが、《接続能》の赤字を見せると、縄を膝へ置いて台帳をいた。
「この印は、交換が呼びしても相がなかったじゃない。線そのものが落ちていたという印だよ。局から佐藤さんのまでので、誰かが切ったか、故障したか」
の嵐で線が断線することは珍しくない。ただし佐藤がむ町の部では、の響を受ける区がい。戸田が残していた修理誌には、翌朝、佐藤の引き込み線を取り替えたと記載があった。
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理由は《刃物による被覆損傷》だった。
母がへ連絡しようとしたのなら、誰かがそれを妨げたのか。枝は署名のある作業員を探したが、すでにくなっていた。代わりに戸田は、その、切れた線の先端を持ち込んだ物を覚えていると言った。修理を急いでほしいと頼んだのは、父の清だった。
枝は町へ戻った。清は数に保線の仕事を退き、古いで暮らしをしている。台所には、母が使っていたアルミ鍋がまだ掛かっていた。枝が線の話をすると、父はのみで切れたとい、自分で傷んだ部分を切り落としたのだと答えた。
「刃物の傷だったと誌にある」
「俺が切った傷だろう。朝、調べやすいようにした」
説に無理はなかった。清は保線の仕事で具を扱い、話線を破断箇所から切り分けることもできた。しかし枝は、母の失踪をらされた朝、父が交換局より先に話の故障を発見していた理由を尋ねた。夜勤から帰宅した父は、で誰かへ話をかけたのだという。
「誰に?」
清は答えず、夕飯の米を研ぎ始めた。いつもなら黙って帰る枝は、その初めて、答えが聞けるまでに残ると言った。父はを止め、「おの母さんは俺たちを捨てた。それ以のことはらない」と言った。
翌朝、枝は母の元同僚、岩崎登美を訪ねた。
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登美は当の通話メモを部元に残していた。交換局の公記録ではなく、忙しい夜にどの呼びしを先に扱うかいたさな切れである。母が消えた夜の分には、役階から佐藤へ度つなごうとして、最に《切れている。局へ》とある。
「澄子さんは仕事に自宅へ話しなかった。に子どもだけのときでもよ。だから私も覚えてる」
登美は、もうつ話した。澄子はその夜、役の話へかけ直すに、交換局の玄関へ来た男と論していた。相は子をくかぶり、顔がよく見えなかったという。しかしのついた靴には、線の砂利を踏む保線員の滑り止めが付いていた。
枝は父の靴をいした。帰り、胸の内で、母を捨てたのは誰だったのかという問いが初めて形を持った。
相を決めつけずに調べようと、枝は母の失踪届を作った警察官の名を探した。すでに退職していた警察官は、当の捜査メモを個で持っていないと断ったが、澄子がに戻る様子をの子どもに見せずに済ませたいと清が話したことを覚えていた。清は、妻がほかの男とた能性を先ににしたという。警察官はその言葉を夫なりの推測として扱い、町の噂を確かめにった。
失踪直の話の相は、男ではなかった。
交換局が残していた発信先覧で、町の女性相談員へつないだ記録が件見つかった。
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