"消えた交換手と鳴らなかった電話" 第11話
正しい恐れだったかは分からない。恐れをねるうち、らせる段がつずつ消えたことは分かる。
幸は、宿の玄関で澄子が言ったい言葉を覚えていた。「わたしが子どもたちの代わりに決められるのは、今だけ」。危険が迫るに逃げる選択は必でも、そのまま子どもの将来まで決めてよいわけではない。澄子はでは分かっていた。それだけに、翌以も戻れなかった事実を枝は軽く扱えなかった。
枝は発刻を掛かりに、澄子が荷物を預けた駅の周囲を歩いた。駅の堂は改装されていたが、以働く主が、にさな子どもの袋を持った女性のことを覚えていた。い、自分の物でもない袋を膝のに置き、杯のうどんがめてもべ始めなかったという。枝は、母が良太の袋を持っていたことに気づいた。歳の弟は失踪、片方だけ見つからないと言っていた。
主はその女性がどの列に乗ったかまでは見ていない。袋を持っていたから澄子だとも断定できない。枝は写真を見せ、主が同じ顔だと言うのを待ってから記録した。調査がむにつれ、自分が欲しい返事への記憶を誘導するのが怖くなった。
幸ので、その袋のもう片方が見つかった。澄子は庄の宿で良太の袋を繕い、片方を荷物へ、もう片方を使い終えた糸と緒に幸へ渡した。
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幸は事をらず、かい物だからと元に残していた。さな袋は母が帰る気持ちの証拠にはならない。それでも、をたも子どもの寒さを像していたことだけは伝わった。
幸は枝を駅まで送りながら、袋を返すか尋ねた。枝は良太自に決めさせると言い、袋へ入れた。弟が受け取らなければ、それも無理に変えない。のために何かを預かるとき、相が本当にそれを必としているか、枝は今までより慎になっていた。
原簿と与袋が揃うと、役も内部調査の準備を始めた。ただし担当者は、澄子がきているのか確認できない限り、彼女が集めた通話メモをどのように扱うか決められないと言った。話交換の仕事には利用者の秘密が伴う。澄子が記録したのは苦のと接続先だけで、会話内容は原則としてかれていないことを、枝は頁ずつ確認した。
母の勤務簿の欄には、細い鉛で《断られたへ折り返した》と記されたがあった。枝は苦を言った側のへずつ同を取り、本が覚えている範囲だけを記録した。町の調査へ渡す資料は、母が聞いた秘密を暴くものではなく、当事者自が語りたい事実の束にしたかった。
その過程で、最まで話したくないというもいた。
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片桐から便宜を受けていたと疑われるのが嫌だったのだ。枝は理由を問わず、名を台帳からした。全員の証言が揃わなければ真実にならないと焦る気持ちはあったが、族の同なく母が失踪を選んだことへの痛みをえば、誰かの選択をきする気になれなかった。
良太も度、集落のを訪ね歩いた。弟は仕事で営業をしており、に話を聞くのは姉よりだった。だが母の名を名乗るたび調がくなる。帰りに「ここまで調べても、母さんが帰らなかった理由はないんだな」と言った。枝も分かっていた。灯油の正を解くことはできても、母が息子の誕を回過ごさずにいた理由は、母に直接聞くしかない。
列の刻からき先を探すのは難しかった。昭49の刻表で調べると、その列は庄をて、田方面へ向かっている。枝は駅の記録だけを頼りに母を捜すことは諦め、当、肺炎で宿をられなかった野幸という女性について調べた。
佳代は、幸は澄子の宿泊にはすでに退院していたと教えた。元記者の帳にある《入院》は、訪問したとき宿のが追跡を避けるために答えた嘘だった。佳代の母は、片桐が再び来れば澄子を連れてくと恐れ、の女性を同じのように話したのである。
幸の所は、当の仕ての記録から分かった。
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