"風呂を禁じた義母と、家を出た嫁の反撃" 第4話
現実の妻とは向きわず、ネットの仮空でだけ「優しいおじさん」を演じる夫。 (私はいったい、何のためにここで踏ん張っているの……?) 絶望の底が、元から音をてて抜けていく覚だった。
数。 松恵が「ちょっとお友達とお茶会にってくるわ」と嫌でした平の午、由は休暇を取って、松恵が占拠している客の掃除に入った。 部の隅に埃が溜まり、異様な臭気が漂っていたため、どうしても放置できなかったからだ。
部を埋め尽くす、あの箱以の巨なダンボール箱。 掃除をかけるため、由は最段の箱を両で抱え、へろそうとした。 その――経劣化で粘着力の落ちていたガムテープが、バリッと音をてて剥がれた。
箱の隙から、崩のようにへ滑り落ちてきたもの。 それを見た瞬、由の呼吸が完全に止まった。
(……な、に……これ……?)
面に散らばったのは、類や用品などではなかった。 ギラギラとした極彩の文字が躍る、分い冊子の束と、怪しげなDVDのケース。
『わずか分の作業で、確実に収百万円! の富裕層錬術』 『元ゼロから億万者へ! 次世代自売買システムの全貌』 『【極秘会員限定】誰でも億の資産を築ける、奇跡のドリームネットビジネス』
すべて、典型な悪質報商材、そしてマルチまがいの詐欺マニュアルだった。
広告
の箱の隙を覗き込む。 全部だ。客を井まで埋め尽くしている箱以のダンボールのは、すべてこの怪しげな報商材の庫のだったのだ。
背筋に、氷を流し込まれたような戦慄がった。 松恵の収入に見わない派なブランドバッグ。 「実をに貸すことになった」という自然極まりない言い訳。 そして――この異常な量の詐欺商材。
(まさか……お母さんは、この詐欺グループの……!?)
その、廊の奥から、ギシ……と板がきしむ音がした。 正斗の部のドアではない。 玄関の鍵がき、誰かが戻ってきた音だった。
由は咄嗟に冊子を箱のへ押し戻し、テープを貼り直した。 臓が鐘のように打つ。 このに持ち込まれたのは、ただのワガママな義母ではない。 庭を根底から破滅させかねない、巨な犯罪の種そのものだったのだ。
そして――物語は、冒のあの夜へと繋がる。
午分。 残業を終え、疲れ果てて帰宅した由のにち塞がった松恵。 湯の湯を抜き、たいタイルので嘲笑う老婆。
「毎帰りが遅いくせに、のこともまともにできないなんてけないわね。私に迷惑をかけている自覚はあるの?」
由の沈黙を「屈」と受け取った松恵は、勝ち誇ったように顎をしゃくりげ、決定な言を吐き捨てた。
広告
「文句があるならねぇ――しっかり稼いでから言いなさいよ!!」
その瞬だった。 由の蓋ので、張り詰めていた鋼の糸が、プツンと乾いた音をてて千切れた。
夫の再起を信じて耐えてきた。 理尽な暴言をみ込み、計のすべてを支えてきた々。 押し付けられた甥の世話。 そのすべての献を踏みにじり、「稼いでから言え」と宣ったこの女。 誰ので飯をい、誰ので気を使い、誰のに居座っているのか。
由はゆっくりと顔をげた。 その瞳から、迷いも、怯えも、けの欠片も完全に消えっていた。
「……わかりました」
由の声は、驚くほど静かで、氷点のようにたかった。
「では今は――すべて、夫に払わせますね」
松恵の顔から嘲笑が消え、ポカンとがいた。 「……は? 何言って……」
だが、由はもう義母の言葉を聞いていなかった。 踵を返し、自のクローゼットへ向かう由の脳裏には、すでに徹な反撃の青写真が完璧に描かれていた。 しかし、このの由はまだらなかった。 この夜、彼女がをびした直、松恵の部のあのダンボール箱を巡り、警察とヤクザが入り乱れる未曾の事件が幕をけようとしていることを――。
「ちょっと! 何を言ってるのよ、由さん! 正斗に払わせるって、あの子は今無職なのよ!?」
背から追いかけてくる松恵の喚き声を、由は自のドアをピシャリと閉めることで完全に遮断した。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
凍える孫と消えた家
年末、麻子が息子夫婦の家を訪ねると、十四歳の孫・音実が靴も履かず、凍える庭に置き去りにされていた。父親たちは義姉を連れて海外旅行へ出たという。ところが空港から逃げ帰った義姉・杏奈の告白により、二人の少女が受けていた仕打ちと、音実に掛けられた一億五千万円の生命保険が明らかになる。 これは単なる育児放棄ではなかった。実の娘の命まで金に換えようとした息子に対し、土地も家も握る麻子は静かに反撃を開始する。三週間後、旅行から戻った夫婦を待っていたのは、豪邸が跡形もなく消えた更地と、彼らの人生を根底から崩すさらに大きな罠だった――。祖父母と孫|絶縁|親子関係|修羅場2.5万字5 407 -
完結第14話
1000万円のハワイ旅行を贈ったら、私だけ家族から外されました
亡き夫との夢を叶えるため、息子一家と両家の親が参加するハワイ旅行に一千百二十万円を支払った静江。ところが出発直前、息子の健太から「行くのは妻の両親だけ。もう連絡しないでほしい」と告げられる。六年間続けてきた住宅ローン援助や孫の送迎まで当然のように扱われていた静江は、息子の希望どおり、すべての支援を打ち切った。 息子夫婦がハワイを満喫している間、静江のもとに旅行代理店から精算書が届く。そこには、健太が二か月前から母を旅行者名簿から外し、「重度の認知症と末期癌の疑いがある」と虚偽の申告をしていた記録が残されていた。 さらに義弟からの電話で、健太が静江を判断能力のない高齢者に仕立て、成年後見人として財産管理権を握ろうとしていることが判明する。狙われていたのは、資産価値八千万円の自宅と三千万円の老後資金。しかも計画には、嫁とその父親、虚偽の診断書を作った医療関係者まで関与している疑いがあった。 静江は弁護士と任意後見契約を結び、正常な認知機能を証明する診断書と旅行代理店の通話記録を確保する。そして帰国した息子夫婦を待っていたのは、止められた送金、返送された孫の荷物、そしてホテルのテーブルに並べられた逃げ場のない証拠だった。家族旅行から排除した母が、自分たちの計画をどこまで知っているのか――二人がそれを理解した時、作り上げた“幸せな家族”の姿が崩れ始める。嫁姑|親不孝|親子関係2.2万字5 495 -
完結第12話
兄の結婚式に、実の妹の席だけありませんでした
理沙は、兄・幸介の結婚式に呼ばれなかった。 母から告げられた理由は「本当に親しい人だけの小さな式」。しかし式当日、偶然届いた親戚からの連絡で、実際には七十人規模の披露宴が開かれ、自分だけが意図的に外されていたことを知る。 家族のために青春を捧げ、兄を支えてきた過去。だが、母と兄は理沙の離婚歴や仕事を理由に「相手の家に見せられない存在」として扱っていた。 傷つきながらも北海道で一人過ごした理沙は、帰宅後、兄から真実を聞かされる。しかし兄の説明は、母の言葉を繰り返すだけの言い訳だった。 なぜ自分だけが家族から消されたのか。 そんな中、兄の妻となったゆかから突然連絡が届く。 「どうしても直接お話ししたいことがあります」 そこで明かされるのは、母と兄が隠していた、結婚式欠席の裏にあるもう一つの真実だった。兄弟姉妹|親子関係|修羅場1.8万字5 123 -
完結第16話
貧乏嫁と見下されていた私、義姉の結婚式で本当の名前を呼ばれました
義姉の結婚式に出席した千鶴は、義母と義妹から「貧乏な内職嫁は一族の恥」と親族写真から外され、式場を追い出されそうになる。六年間、服の縫製で小遣いを稼ぐだけの女だと見下されてきた千鶴は、反論せず静かに控室を去ろうとした。 だが、純白のドレスをまとった花嫁が彼女を呼び止め、その正体を明かした瞬間、義家族の顔色が一変する。千鶴は世界的ブランドの創業者であり、経営難に陥った義父の縫製工場が命運を託す、一億円超の契約を審査する人物だった。初めて彼女の名前を呼んだ義父に、千鶴が下した判断とは――。兄弟姉妹|嫁姑|修羅場2.4万字5 298 -
完結第13話
妹に夫を譲れと言われた結婚式の翌朝
同窓会で再会した幼馴染の秋と結婚したありさ。だが、昔から姉を敵視する妹・百合は「秋は本当は私と両思いだった」と言い張り、父まで巻き込んで二人の結婚を妨害し始める。 そして結婚式の翌朝、百合は突然「秋の子を妊娠した」と告白。父はありさに離婚して夫を妹へ譲れと迫る。ところが妊娠時期を聞いた瞬間、ありさと秋は揃って大爆笑した。その二か月前、秋には百合の主張を根底から覆す、決定的な医療記録が残っていたのだ――。兄弟姉妹|夫婦|真相2.0万字5 691 -
完結第12話
万引きを疑われた私に、警備員が「六万円で見逃す」と言ったので父に電話した
ロンドンから帰国した紗季は、父が経営するショッピングモールを客として訪れた。ところが突然、身に覚えのない万引きを疑われ、警備室へ連行される。鞄から出てきたのは、見たこともないネックレス。さらに警備員は「六万円払えば見逃してやる」と、用意済みの自白書を突きつけてきた。 だが彼らは知らなかった。紗季が次期経営幹部として帰国した、社長の娘であることを。そして父への一本の電話をきっかけに、隠しカメラの映像、消された記録、何十人もの被害者が浮かび上がる。これは警備員の小遣い稼ぎではない。モールそのものを奪うため、会社の中枢で仕組まれた巨大な罠だった――。真実|金銭問題|修羅場2.1万字5 329 -
完結第11話
両親を亡くした私が旅行から帰ると、実家が消えていた
両親を相次いで亡くした美穂に、夫・雅也が突然、一週間の温泉旅行を贈った。初めて見せた思いやりを信じて家を空けた美穂だったが、帰宅すると、思い出の詰まった実家は跡形もなく解体されていた。 雅也は土地を売り、その金で義実家を二世帯住宅にするつもりだった。しかし美穂が遺産を相続したというのは、三人の勝手な思い込みだった。名義変更前の家を無断で壊し、所有者の承諾書まで偽造した疑いが浮上する中、美穂は両親の思い出を奪った夫と義両親への反撃を始める。因果応報|嫁姑|夫婦|金銭問題1.7万字5 599 -
完結第12話
浄水器の異物から、夫の秘密が暴かれた
八か月前から原因不明の頭痛と吐き気に悩まされている美央。病院を巡っても異常は見つからず、夫・公平と義母・悦子は、仕事を辞めて療養するよう優しく勧めていた。父から相続した自宅と賃貸ビルの管理も夫に任せればいい――二人の気遣いを信じ、美央は自分の心が弱いせいだと思い始めていた。 ところがある日、交換したばかりの浄水器が異常を知らせる。点検に訪れた作業員が内部を開けると、正規のカートリッジは別物とすり替えられ、飲料用ではない物質が詰め込まれていた。さらに玄関の開錠記録と防犯映像から、美央の出張中に工具袋を持った義母が二時間近く家へ入っていたことが判明する。 安全な場所へ避難した途端、八か月続いた症状は急速に消えていった。分析で検出されたのは、長期間摂取すれば臓器に障害を残す危険のある特殊な工業薬品。その入手記録には、妻を心配し続けていたはずの公平の署名が残されていた。 多額の借金を抱えた公平は、美央の判断力を奪い、父の遺したビルを処分するための委任状まで準備していた。しかし押収された端末を調べると、計画は財産だけでは終わっていなかった。生命保険の受取人変更まで相談していた相手は、美央が体調不良について最も信頼し、何度も助けを求めていた人物だった。夫婦|真実|真相|修羅場1.8万字5 281