みかん小説
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"置き去り後27分" 第1話

テールランプの消えた

真っ暗な国の脇、型トラックが巻きげるたい突のに、私はきりでち尽くしていた。 初の夜気は容赦なく肌を刺し、のウールコートの隙から体温を容赦なく奪いっていく。アスファルトの肩には砕けた砂利が散乱し、灯は数百メートル先で々しくオレンジのを滅させているだけだった。

線の先、乱暴なエンジン音を轟かせながら急加速していく黒いセダン。 その赤いテールランプが、の奥へと吸い込まれ、やがて完全に界から消えるまで、私は叫び声をげることも、涙を流すこともしなかった。

結婚して。 夫の健事(けんじ・歳)は、私を無理やりへ引きずりろしたわけではない。 が急ブレーキを踏み鳴らし、砂利を噛んで非常待避所にまった直、運転席の夫は方を睨みつけたまま、憎悪を押し殺したい声で言い放ったのだ。

「そんなにの言うことが聞けないなら、自分で歩いて帰ればいいだろ。……りろ」

その言葉に含まれていたのは、りだけではなかった。 確な「計算」だった。 民も灯もない夜の国、気温数度の寒空のに放りされれば、妻である私が恐怖に震えがり、泣き崩れて慈を乞うはずだという、汚い確信。

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『ごめんなさい、私が悪かったわ。座の通帳は全部渡すから、お願いだからに乗せて』――そう言ってすがりつけば、夫は満げにを鳴らし、勝者としてドアをけてやっただろう。

だからこそ、私は泣かなかった。 取り乱すことも、夫の腕を掴んで許しを請うこともしなかった。

「……分かったわ」

部座席に置いてあった自分の通勤バッグとコートを抱え、助席のドアを静かにけた。 気が内へ崩れ込んだ瞬、夫はギョッとしたように目を丸くし、こちらを凝した。私が本当にりるなど、にもっていなかったのだ。 だが、度振りげた拳を引っ込めるプライドを持ちわせていなかった夫は、私がドアを閉めた刹、当てつけのようにタイヤを空転させてりった。

「帰らない」

ざかるに向かって、私は声にして呟いた。 それは、もう度とあのに戻らないというではなかった。 恐怖に屈して夫に話をかけ、「迎えに来てほしい」と懇願することなど絶対にしないという、私の魂の境界線だった。

私は医療法で経理事務として働く歳、佐藤美(さとう・みわ)。 数字の狂いを円たりとも許さず、帳簿の性と向きってきた私のにおいて、この夜の来事は、かけて積みげられてきた夫婦関係の「致命な飾」

をのに晒す引きに過ぎなかった。

バッグからスマートフォンを取りし、画面のかりを頼りに図アプリをく。 ここから旧の脇へ折れ、へ約百メートル。営業のファミリーレストランが件、ポツンとかりを灯しているはずだった。 百メートルなら、歩けない距ではない。

コートのボタンを番まで留め、私はを向いて歩きした。 この、待避スペースの奥、型コンテナトラックの運転席で、の男が静かに私の背を見つめていたことなど、る由もなかった。

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