みかん小説
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"置き去り後27分" 第5話

引きしから消えた通帳

「あんな言い方って何よ。私は当たりの権利を主張しただけよ」 台所で器を洗いながら、私は背越しに答えた。

「母さんはただ、おの負担を減らしてやろうと親切で言ってくれたんだろ! 通帳を預けるくらい、何がそんなに嫌なんだよ! 母さんがおのを盗むとでもってんのか!?」

「盗むかどうかの問題じゃないわ。それは私の座よ。私の労働の対価よ」

「おの、おのって……族なんだから誰が管理したって同じだろうが! 俺だって独代は料袋ごと母さんに預けて遣いをもらってたんだ! 母さんはおの管理のプロなんだよ! しは母さんをててさせてやろうっていう殊勝な気持ちはないのか!?」

健事の目は血り、唾をばしていた。 この男にとって、母親の支配を受け入れることは「族の証」であり、それに抗う妻は「秩序を乱す反逆者」にしか見えないのだ。 議論は平線だった。夫は私の言葉を「単なる儘」として切り捨て、私は夫の精神未熟さに絶望していた。

翌週の曜の昼休み。 私は職のくにあるメガバンクのATMにち寄った。 械のタッチパネルを操作し、与座の暗証番号の変更続きをう。 これまで使っていた番号は、夫の誕と結婚記を組みわせた数字だった。

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万がの事故の際、夫が引きせるようにという信頼の証だったが、それを自分しかり得ない完全にランダムな桁へとき換えた。

さらにそのの夕方、帰宅した私は、リビングのテレビ台の引きしをけた。 そこには、夫婦の共同座の通帳と並んで、私の与座の通帳、キャッシュカード、そして印が綺麗に保管されていた。 私はそれらを引きしの奥から取りし、自分の通勤バッグのファスナー付き内ポケットの奥底へと移した。 これで、私の留守に誰かが勝に持ちすことはできない。

だが、曜の夜、帰宅した夫のからた言葉は、私の防策を嘲笑うかのようなものだった。

「美、実の積みての件、俺から母さんにうまく話をつけておいたからさ」 夕の席で、健事は得満面な笑みを浮かべてビールを煽った。

「……話をつけたって、どういうこと?」

「毎におが通帳とカードを母さんの実に持参して、母さんがそので万円を引きして積みて座に移す。残りのはそので母さんからおに渡す。これなら通帳を預けっぱなしにするわけじゃないから、おもだろ? 今週の曜の夜、実で飯いながら通帳を母さんに渡す約束になってるから、ちゃんと準備しておけよ」

「……は?」 私は箸を止めた。

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「私、通帳を渡すなんて言も承していないわよ。どうして私抜きで勝に段取りを決めてるの?」

「はあ!? せっかく俺がに入って折衷案を作ってやったのに、まだゴネる気かよ! 曜の夜、絶対に持ってこいよ。母さんもそのつもりで待ってるんだからな!」

夫はそう言い捨てると、自へと引きこもった。 私の沈黙を、夫は「観した同」だと都よく解釈していた。

そして、運命の曜の夜がやってきた。 実での夕の席。 やかな団欒を装いながら、事が終わりにづいた、富子が湯呑みを置いて私に向き直った。

「それで、美さん。通帳とカード、持ってきてくれたわよね?」

私はく、静かに息を吸い込み、バッグのから何も取りさずに答えた。

「持ってきていません。何度もお伝えしていますが、私の与座を渡すことは、絶対にありません」

富子の顔が引き攣り、夫の健事が子を蹴ててちがった。 「美ッ!! お、母さんので俺に恥をかかせる気か!!」 号と罵声がび交う修羅と化した卓。私は切の妥協を拒絶し、そのまま実をにした。

そして――夜の国。 り狂った夫の運転するが、待避スペースに急し、あの言葉が吐きされたのだ。 『りろ。自分で歩いて帰れ』。

しかし、暗い脇をファミリーレストランへ向かって歩いていた私は、まだらなかった。

夫が私を置きりにしたあの待避スペースのので、夫自が放った「ある決定な言葉」が、見らぬトラックの記録装置に克に刻み込まれていたことを。 そしてその記録が、翌朝、夫が必に繕おうとする嘘のすべてをっ端微に砕することになるという真実を――。

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