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"母の初盆を禁じた義父が、土地の名義を知った日" 第2話

母が残した鍵

瀬先の事務所に着いた、私はまだエプロンの跡が腰に残るような格好をしていた。

「由美さん?」

受付からてきた先は、ボストンバッグを抱えた私を見るなり表を変えた。母が入院していた頃から何度か相談に乗ってもらっていたので、私の庭事もある程度っている。

私は応接に通されると、茶い封筒をテーブルのへ置いた。

「先。母が言っていたが来ました」

瀬先は瞬、黙った。

そして封筒からの登記事項証、母が作成していた遺言関係の類、過の契約資料を枚ずつ取りした。

、義父の会社が資難に陥り、それまでんでいたを放さなければならなくなった。浩司は当然のように私へ言った。

『おの母親からを借りられないか』

私は断った。

けれど事をった母は、「織ちゃんのむ所がなくなったらかわいそうだから」とを購入した。

ただし、母はつだけ条件を付けた。

は私名義にすること。

『由美のがしでもくなるように』

母はそう言った。

当の私は、そのをく考えなかった。

義父母は表向き、「嫁のお母さんには世話になった」とをげた。建物については義父側が資を用し、を無償で使う形で今のを建てた。それ以来、私は代を円も受け取っていない。

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それでも母は満していた。

娘が族ので切にされるなら、それでいいとっていたのだ。

「先」

私はバッグからもう枚、折りたたんだコピーをした。

「今、夫の斎でこれを見つけました」

融資の事審査申込だった。

瀬先の目つきが変わる。

「担保予定産……このですね」

「はい」

「由美さんは何か署名しましたか?」

「何も」

「印鑑証を渡したことは?」

「ありません」

「実印は?」

「昨、別の所へ移しました」

そう答えると、瀬先はさく息を吐いた。

「それは正解でした」

実印はすでに母の遺品と緒に、先の事務所に預けてある。

自宅の桐箱に残したのは、百円ショップで買った認印だった。

夫たちはそれを本物だとっている。

「この段階で融資が成しているわけではありません。ただ、なくともご主かお義父さんが、あなた名義のを利用して資を得ようといていることは分かります」

「私が初盆でを空けるのを、どうしてあんなに嫌がったのか……し分かった気がします」

私が言うと、先は首を横に振った。

「むしろ逆でしょう」

「逆?」

「あなたをから追いしたかった能性があります」

背にたいものがった。

先は申込の端にかれた名を指した。

「美穂。ごじですか?」

「いいえ。ただ、最夫から甘いの匂いがすることが何度かありました」

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夫は休になると、「親父の仕事の始末を伝う」と言ってしていた。夜遅く帰った、私も義母も使わないのりがしたことがある。

問いただすと、「おには関係ない」と鳴られた。

私はそれ以聞かなかった。

いや、聞くことを諦めていたのだ。

瀬先は類をまとめた。

「まず、を担保とする続きについて、所者である由美さんが同していないことを融関側へ正式に伝えましょう。そので、現の使用についても理する必があります」

「からていけと言われました」

「録音は?」

「ありません」

「メッセージなどは?」

「今のところは」

「では、今ご主たちから来る連絡は消さないでください。直接争うのではなく、記録を残してください」

私は頷いた。

その、先と緒に必な類を確認し、今の対応方針を決めた。

事務所をたには夕方になっていた。

ようやく私は実へ向かった。

ほどに揺られ、母がひとりで暮らしていた古い平へ戻る。

玄関をけると、懐かしいと畳の匂いがした。

誰もいないなのに、「お帰り」と言われたような気がした。

仏壇には、母の写真がある。

「お母さん、帰ってきたよ」

線にをつけながら、私は初めて泣きそうになった。

けれど涙は落ちなかった。

代わりに、胸の奥にあったものをつずつ母に話した。

義父から言われたこと。

浩司が私を助けなかったこと。

を担保にしようとしていること。

そして、美穂というらない女の名。

話し終わった頃、スマートフォンが震えた。

浩司だった。

《いつまで張るんだ。の朝帰ってきて親父に謝れ》

私は返信しなかった。

秒ほどして、もう通届いた。

《ごめん、さっきのは由美に送るやつだった。今夜予定通り会える。印鑑の所も分かった。ローンの件はめられる。美穂、く会いたい》

私は画面を見つめたまま、しばらくけなかった。

りより先に、妙な納得があった。

ああ、やっぱり。

そうだったのか。

私は震える指でスクリーンショットを撮った。

そして瀬先へ転送した。

数分、先から話がかかってきた。

「由美さん」

いつも穏やかな声が、しだけかった。

「このメッセージは保してください。状況が段変わりました」

私は母の遺を見た。

写真のの母は、何も言わず笑っていた。

その夜から、私は「帰るための準備」ではなく、「度と戻らないための準備」を始めた。

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