みかん小説
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"50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿" 第2話

段ボール箱の底の抵抗

に入ると、実の庭の片隅にある梅の蕾がほころび始めていたが、私の胸のには真のままのたいが吹き荒れていた。

の卒業式は、誰とも言葉を交わすことなく終わった。友たちが学や就職の話題で未来を語りう輪から抜けし、私は、逃げるようにへと戻った。居には、婚礼装を貸しす業者から届けられた簡素な無垢の箱が置かれており、それが私のに装束のように見えて仕方がなかった。

自の畳半で、私は嫁入り具の荷造りをめていた。

類、着、所のスーパーで売りされていたプラスチックの装ケース。持っていくべき活用品を詰めていくで、私のは、押し入れの袋の奥くに隠してあった束の物に伸びた。

表が擦り切れ、背表にセロハンテープが何にも貼られた、旺文社の英辞典。角が丸くなるまでめくり返した川版の『詳説本史』の教科。そして、模試でA判定を取るために血のにじむようないで解きめた、国学教育学部の過問題集——いわゆる「赤本」だった。

「お姉ちゃん、くにっちゃうの?」

襖がそっとき、ランドセルを背負った妹の麻紀が入ってきた。まだ幼い妹の丸い瞳には、の事など何も分からない無邪気さと、好きな姉が消えてしまうことへの漠然とした寂しさが揺れていた。

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「うん……ちょっといところだけどね。形のおの方よ」

私は無理に角を吊りげ、麻紀のたい頬を両で包んだ。

「麻紀、しっかりご飯をべるのよ。お父さんの嫌を損ねないように、お母さんのお伝いもちゃんとするのよ」

「うん……。でも、お姉ちゃん、なんで泣いてるの?」

「泣いてないよ。目にゴミが入っただけ」

私は涙をの甲で乱暴に拭うと、麻紀を居へかせた。

そして、部に残された私は、元に残された参考をじっと見つめた。

嫁ぎ先は、の奥の農だという。朝から晩までにまみれて畑を耕し、族の飯を炊き、姑の言いつけに従って黙々と働く々が待っている。そこに、学の赤本や英語の辞など、片の必性もない。持ってったところで、義父母に見つかれば「嫁のくせに気な本を持ち込みおって」と罵倒され、呂釜の焚き付けにされるのが関のだろう。

捨ててしまおうか。ゴミ袋に放り込んで、度と文字など見ない活を受け入れようか。

——いやだ。

私の指先が、激しく震えた。

この本を捨てることは、私が私であることを完全に殺してしまうことと同じだった。父に万円で売り渡され、見らぬへと追いやられるとしても、私が学びをし、識に焦がれたという魂の痕跡まで、あの男に差しす筋いはない。

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私は番きな段ボール箱の底に、聞を何にも敷き詰めた。そのに、赤本、英辞典、き込みで真っ黒になったノートの数々を、隙なくきっちりと並べて敷き詰めた。

さらにそのから、のセーターや防寒着、タオル、エプロンを何にもね、側からは完全にただの類にしか見えないように厳に偽装した。

それは、私という歳の女が、理尽な運命と父の横暴に対して仕掛けた、唯の、そしてあまりにもか細い「秘密の抵抗」だった。

結婚式は、町内の寂れた神社の社務所で、両の内だけで簡素にわれた。

度の盃を交わす、私は隣に座る夫・博の顔を度も見げることができなかった。濃紺のっぽいスーツにを包んだ歳の青は、終始居悪そうに肩をすくめ、線をに落としていた。

式の、父は神社ので、に乗り込もうとする博に向かって、偉そうに胸を張って言い放った。

「博さん、こいつはし頑固なところがあるが、体だけは丈夫だ。慮はいらんから、の仕事でも畑でも、馬馬のようにこき使ってやってくれ」

母は目を赤くしてハンカチを握りしめ、麻紀は父のに隠れてを振っていた。

私はの助席に乗り込み、度もろを振り返らなかった。バックミラー越しにさくなっていく実の町並みを見つめながら、私ので、族という名の絆がプツリと音をててちぎれ、たいとなって沈んでいくのをじていた。

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