みかん小説
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"50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿" 第4話

暴かれた段ボールと義母の告

旬の午。里にも遅いが訪れ、肌は桜の淡いピンクと緑の鮮やかなモザイク模様に染まっていた。

朝からので農作業も林業も休みとなり、男は居で静かにテレビの相撲継を眺めていた。私はこの隙にと、階の自で物の類を片付け、物を引っ張りす作業をしていた。

押し入れの奥から引きずりしたのは、あの実から持ち込んだ番きな段ボール箱だった。

ガムテープを剥がし、部に詰めてあった防寒着を取りしていく。そして、その底に隠されていた、あの本たちと対面した。

『全国主学 入試問題正解』の背表。の休みに、汗を滲ませながらき込みをしたノート。マーカーの引かれた『英単語ターゲット1900』。

私は作業のを止め、畳のに座り込んだまま、吸い寄せられるように本史の参考をに取った。ページをめくると、懐かしいインクの匂いと、放課の図の夕暮れの景が、鮮烈な痛みを伴って胸に蘇ってきた。

——あんなに勉したのに。あんなに、子供たちに歴史や言葉を教えたかったのに。

指先が、自分の震える跡をなぞる。いものが込みげ、界が歪んだ。

「千さん、漏りの点検用のタオル、どこにあったからな……」

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トントン、と襖がく音と同に、ふみ子さんの穏やかな声が響いた。

「っ……!」

私は全の血が凍りつくのをじ、反射に参考を背に隠そうとした。しかし、あまりの揺に元が狂い、分い赤本が畳のにバサリと音をてて落ちた。かれたページには、赤インクできく丸をつけられた英文解釈の講義ノートが挟まれていた。

「あ……お義母さん、あの、これは……!」

声がずり、顔から急速に血の気が引いていくのが分かった。

終わった、とった。

農に嫁いできたでありながら、隠れて学受験の参考を持ち込み、あまつさえ昼がりにそれを眺めて傷に浸っていたのだ。父が言った通り、「女のくせに」「嫁のくせに」と激され、本を取りげられてにくべられるに違いない。

ふみ子さんは驚いたように目を丸くし、に置かれた靴を脱ぐと、静かに部へがってきた。

そして、私の元に散らばった本と、段ボールの底に並んだ辞のを、まじまじと見つめた。

「お義母さん、ごめんなさい! すぐに捨てます! 次の古回収のに全部しますから! 本当に、もう度ときませんから……!」

私はに両をつき、実で父に対してそうしていたように、条件反射で必にをげた。許しを請う言葉が、喉から勝に溢れて止まらない。

だが、からってきたのは、鳴り声ではなかった。

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擦れの音がして、ふみ子さんが私の隣にそっとしゃがみ込んだ。そして、畳のに落ちていた英語の問題集を、節くれだった両で壊れ物を扱うように持ちげたのだ。

「……これ、全部千さんが勉した本かい?」

く、ひどく静かな声だった。

「……はい。でも、昔のことです。もう必ありませんから」

「どうして捨てるんだい?」

「だって……私、もう結婚して、こののお嫁に来たんですから。こんな勉、何の役にもちません」

畳の目を睨みつけながら答える私ので、ふみ子さんがパラパラとページをめくる乾いた音が響いた。何千回と引かれたアンダーライン、余にびっしりとき込まれた単語の。

い沈黙の、ふみ子さんが静かにをいた。

「千さん。……学、きたかったのかい?」

その真っ直ぐな問いかけに、私の息が止まった。

父には「女が学へってどうする」と蹴され、母は目を伏せ、親戚が「嫁にくのが番だ」と嘲笑った。歳の私の本を、正面から尋ねてくれたなど、私のにただのもしなかった。

「……先に、なりたかったんです」

せきを切ったように、震える声が漏れした。

「子供たちに、勉を教える仕事がしたかった。でも……実がおに困っていて、万円の結納で、私をここへ……。だから、もう諦めました。諦めたんです」

涙がボロボロと畳のに落ちて、黒い染みを作っていく。

ふみ子さんは何も言わず、ただ私の背に温かいのひらを当て、ゆっくりと撫でてくれた。

そして、懐からぬぐいを取りして私の涙を拭うと、信じられない言葉をにしたのだ。

「じゃあ、受ければいいじゃないか」

「え……?」

私は涙に濡れた顔をねげた。

ふみ子さんは穏やかに目を細め、まるで「の朝ごはんは何にしようか」とでも言うような平然とした調で、もう度繰り返した。

「学にきたいんだろう? だったら、試験を受ければいいじゃないかい」

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