"雨の夜の招待状" 第1話
夜のの音が、窓ので静かに続いていました。
私はリビングの灯りをし落とし、夫の類カバンをテーブルのに置きました。カバンの止めをすと、かちりとさな音がしました。その音はいつもと同じはずなのに、その夜だけは妙にきく聞こえました。
の3、夫は結婚式を挙げました。
招待客は80。友、同僚、親戚。所は京都の祇園畑。予約を取るだけでも半待つような宿です。そこには、夫のるほとんどのが集まっていました。
ただ1だけ、そこにいなかったがいます。
夫の妻です。
つまり、私です。
私がその結婚式のことをったのは、式の3ヶでした。夫から聞かされたわけではありません。その夜、夫の類カバンに入っていたさなライトの池を替えようとしただけでした。
夫は昔からよく忘れるでした。
36の結婚活ので、池の交換も、保険の更も、保護者会の程も、夫の母の誕も、覚えていたのはいつも私でした。夫が会社の予定を忘れないように、私はカレンダーに印をつけました。薬をみ忘れないように、には必ず声をかけました。
私は全部覚えていました。
方で、夫は忘れていたのです。
毎になると、妻がまだ自分のカバンのライトの池を替えていることを。
カバンの真んのポケットをけた、指先にみのあるが触れました。
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取りすと、クリームの質なでした。の文字が、の夜の灯りを受けて静かにりました。
林正雄 and 藤はるか
付は315。
所は京都、祇園畑。
私は暗い居の真んで、その招待状をにしたままっていました。計の針がむ音と、窓に当たるの音だけが聞こえました。
は震えませんでした。
息も乱れませんでした。
ただ、胸の奥で、いをかけて積みねてきた何かが、静かに終わったのをじました。
私はスマートフォンを取りし、招待状の表と裏を両方写真に撮りました。それから招待状を元の所に戻し、カバンの留めを閉めました。
かちり。
その音が、今度は何かの始まりのように響きました。
私は台所へき、お茶を入れました。湯気がちがり、茶碗をテーブルに置くさな音だけが夜の部に残りました。
その夜、私は1で23までお茶をんでいました。
泣きませんでした。
鳴りませんでした。
正雄を起こすことも、誰かに話をすることもしませんでした。
36。
私はそのを、数でも数でも数えません。
事の回数で数えます。
およそ1万3000回の事。夫が遅く帰ると言っても、鍋のに温かい分を残しておいた夜。接待でんで帰る夫を、眠れずに待った夜。夫が病気の、朝5からお粥を作った朝。
1万3000回の事。
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その対価が、の文字で印刷された1枚の結婚招待状でした。
けれど私は泣きませんでした。
もう、自分が何をするべきか分かっていたからです。
翌朝、正雄はいつものようにゴルフへかけました。
玄関で靴を履きながら、「昼はでべる」とだけ言いました。私はいつもと同じように「気をつけて」と答えました。夫は私の顔を見ませんでした。見ていたとしても、何も気づかなかったでしょう。
玄関の扉が閉まる音を確認してから、私はしばらく廊にっていました。
それからリビングに戻り、昨撮った招待状の写真をもう度見ました。
付、所、名。
どれも消えていませんでした。
私は祇園畑へ話をかけました。
受話器の向こうで、受付の女性がきちんとした声で名乗りました。
「祇園畑でございます。どのようなご用件でしょうか」
私は姿勢を正し、静かに言いました。
「315の宴席の予約について確認したいのですが。林正雄の名義です」
受付の女性はし待つように言い、をめくる音が聞こえました。
「はい、ございます。80名様、葵のでございます。何かご変更でしょうか」
私は息をえました。
「予約に使われたクレジットカードは、私たち夫婦の共同カードで違いありませんか」
話の向こうで、ほんのし沈黙がありました。
その沈黙で、私は分でした。
やがて受付の女性は、声をし落として答えました。
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