"北アルプスの0.5秒" 第4話
当はドライブレコーダーも今ほど普及していなかった。
本はの供述をき留めた。
それ以く疑わなかった。
この判断が、事件を15迷宮へ閉じ込めるきな理由になる。
事件から1週が過ぎた。
桜のクレジットカードは度も使われていない。
座から現が引きされた形跡もない。
携帯話の波も途絶えたままだった。
警察内部では、の能性はほとんどないと考えられるようになっていた。
桜の母親は毎のように警察署へを運んだ。
「娘を返してください」
70歳になる母は、疲れ切った顔で捜査員へ訴えた。
「坂本を捕まえてください。あの男がやったんでしょう」
族のりはにに激しくなった。
報陣のでも、
「があれば何をしても許されるんですか」
と涙ながらに訴えた。
世論も警察を急かした。
本は逮捕状請求を決断した。
直接な物証はない。
遺体もない。
しかし状況証拠は坂本へ集している。
112。
裁判所では逮捕状の審査がわれた。
傍聴席には桜の族や報関係者が詰めかけていた。
坂本は憔悴していた。
事件とは別のように頬が落ちている。
検察側は脅迫発言と目撃証言をした。
だが坂本の弁護士は貫して物証を主張した。
「被害者がしたという直接証拠さえありません」
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「両からもからも被害者に結びつく痕跡はていない」
「依頼がな発言をしたことと、殺を実したことは別問題です」
審査の末、逮捕状は認められなかった。
桜の母はそので泣き崩れた。
「どうして……」
では記者たちが斉に坂本を囲んだ。
「伊藤さんを殺していませんか!」
「桜さんはどこですか!」
「族へ何か言うことは!」
坂本は無言でへ乗った。
だが自宅へ戻るでも、民から罵声を浴びせられた。
「殺し!」
「桜を返せ!」
投げつけられた卵が体に当たった。
で窓ガラスが割れた。
坂本はへ閉じこもった。
会社にもなくなった。
登会の会職も辞任した。
その頃。
警察が見落としていたな来事が、密かにんでいた。
幹事の鈴次郎は事件当の午、奇妙な景を見ていた。
休憩所からしれた所。
桜と坂本が森へ入ってしばらくしただった。
鈴が準備のため周囲を歩いていると、々の向こうから1の男が現れた。
健だった。
鈴はを止めた。
「さん?」
は登を着ていた。
ズボンには。
呼吸も乱れている。
「どうしたんですか、その格好」
は瞬だけ驚いた顔をした。
「ちょっと……社たちを探してきたんです」
「駐に戻ってたんじゃ?」
「気になりましてね」
それ以話すことなく、はにれていった。
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鈴は違を覚えた。
しかし事件直の混乱のでは、それが何をするのか分からなかった。
3。
から話があった。
「鈴さん、し会えませんか」
2は町れの喫茶で会った。
は何度も周囲を気にしていた。
「鈴さん」
「はい」
「あの、私が森から戻ったところを見ましたよね」
鈴の胸がざわついた。
「見ましたけど」
はさな封筒をテーブルへ置いた。
「これは?」
「頃のお礼です」
鈴がけると、現が入っていた。
50万円。
「何ですか、これ」
「社から、仕事はで待っていろと言われていたんです」
は声を落とした。
「でも勝にへ入った。それがられれば職務怠で辞めさせられるかもしれない」
「だから?」
「私がへ登ったことは、警察には言わないでほしいんです」
鈴は封筒を見つめた。
50万円。
決してさな額ではない。
「何か事件に関係あるんですか」
「ありませんよ」
はすぐ答えた。
「社と桜さんを探しただけです」
鈴は迷った末、そのを受け取った。
の説を信じたわけではない。
だが自分まで事件へ巻き込まれるのが怖かった。
それ以、警察から事を聞かれてもを閉ざした。
「あの、何か変わったことはありませんでしたか」
刑事に尋ねられたも、
「よく覚えていません」
と答えた。
その沈黙が、15まで彼を苦しめることになる。
事件から1か。
桜の母親は臓発作で倒れた。
娘の方が分からないまま集治療へ運ばれ、い入院活に入った。
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