"午前3時の離婚届" 第2話
写真にはい文章が添えられていた。
『番っている、何も聞かずそばにいてくれるがいることに謝』
私はい、画面を見ていた。
涙はなかった。
むしろ、妙に静かだった。
最にもう度だけ俊介へ話をかけた。
『源が入っていないため――』
械音声を最まで聞かず、切った。
そしてクローゼットをけた。
番きなスーツケースをへろす。
結婚から自分のものだった。
分証。
母が残した帳。
仕事をしていた頃のノートパソコン。
俊介が買ったブランドバッグも、宝も、名義のの鍵も、そのまま置いた。
驚くほどく荷造りは終わった。
何度もので、この面を練習していたのだろう。
最にクローゼットの最段から、3度も着ていなかった真っ赤なワンピースを取りした。
膝がし見える。
肩の線もはっきりる。
義母が見れば、きっと顔をしかめる。
私は黒い髪をい位置でつに結び、そのワンピースへ着替えた。
鏡のに。
忘れかけていた女がいた。
午658分。
スーツケースを引き、階へりた。
そして、毎朝お茶を運んでいた義母の部ので、初めて空ののままドアを叩いた。
「どなた?」
「私です」
しばらくして、シルクのパジャマ姿の文子がてきた。
私を見るなり、眉にい皺を寄せた。
「朝から何て格好なの。
広告
の嫁が真っ赤ななんか着て、どこへくつもり?」
以の私なら、反射に謝っていた。
けれど、そのは違った。
「奥様、お話があります」
文子の顔が固まった。
「……今、何て呼んだの?」
「奥様です」
私は静かに答えた。
「今からもう、あなたの嫁としてきるつもりはありませんから」
スーツケースを見た文子の目が、ようやくきくいた。
文子は私を自へ入れた。
「また俊介と喧嘩したの?」
番、ため息をつく。
「あなたももう27歳でしょう。夫が晩帰ってこなかったくらいで荷物をまとめるなんて、子どもじゃあるまいし」
私は瞬だけ彼女を見た。
まだ何も説していない。
それなのに、晩帰らなかったとっている。
つまり、俊介がなのは族にとって定ではなかった。
「晩帰ってこなかったから婚するわけではありません」
私はハンドバッグから封筒をし、テーブルへ置いた。
「3、で結婚活を続けることに疲れたんです」
文子は封筒を見た。
婚届。
私の署名はすでに済ませてあった。
「何が欲しいの?」
最初にてきた言葉がそれだった。
私は笑いそうになった。
「さすが奥様です。私のことをよくごじですね」
「回しな言い方はやめて」
「3、結婚する直に私へ3000万円を提示しましたよね。俊介さんと別れるなら払うと」
文子の表がしくなった。
広告
忘れられるはずがない。
婚約発表の、彼女は私をホテルのラウンジへ呼びした。
『あなたと俊介では世界が違うの』
そう言って、3000万円の切を置いた。
私は受け取らなかった。
をで測られたことが悔しくて、ホテルの化粧で泣いた。
それでも俊介には何も言わなかった。
母親と揉めさせたくなかったから。
「今さら、その話を持ちしてどうするの?」
「考えが変わりました」
私は文子の向かいへ座った。
「この3でグループの企業価値はきくがりました。俊介さんも副社ではなく代表取締役になった。当の3000万円では、しすぎるといまして」
文子の目が細くなった。
「いくら?」
「1億2000万円」
部が静まり返った。
文子は私の顔をじっと見た。
「……もう度言って」
「1億2000万円です」
私は続けた。
「振り込んでいただければ、共財産について切請求しません。結婚に増えた資産、株式、、産、どれもりません。俊介さんが婚届に署名すれば、それで終わりです」
「ぬほど俊介をしてるって言って結婚したくせに」
文子はで笑った。
「たった晩で1億2000万円に変わるのね」
私は膝ので指を握った。
「額をつけたのは私じゃありません」
文子の顔を見る。
「最初に私と俊介さんの関係に値段をつけたのは、奥様です」
文子のが閉じた。
私は本当にが欲しかったわけではない。
むしろ、彼女がどんな顔で払うのかを見たかった。
3に受け取らなかった女が。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
風呂を禁じた義母と、家を出た嫁の反撃
由香は出版社で働きながら、無職になった夫・正斗を支え、家計も家庭も一人で背負っていた。 しかし、義母・松恵が突然同居を始めると状況は一変する。家事や生活費を押し付けられ、深夜帰宅した由香に対して「文句があるなら稼いでから言え」と言い放つ義母。 限界を迎えた由香は、静かに決断する。 「では今後は、すべて夫に払わせますね」 その一言を境に、崩れかけていた家族の関係が動き始める。 さらに、義母が持ち込んだ大量の段ボールの中から発見された怪しい情報商材。そして隠されていた家族の秘密。 由香が離れたことで、夫は初めて自分が逃げ続けていた現実と向き合うことになる。 奪われた時間、壊された信頼、そして明らかになる義母の本当の目的――。 一人で耐え続けた妻が、自分の人生を取り戻すために選んだ静かな反撃が始まる。怒り|嫁姑|夫婦|修羅場2.2万字5 480 -
完結第14話
1000万円のハワイ旅行を贈ったら、私だけ家族から外されました
亡き夫との夢を叶えるため、息子一家と両家の親が参加するハワイ旅行に一千百二十万円を支払った静江。ところが出発直前、息子の健太から「行くのは妻の両親だけ。もう連絡しないでほしい」と告げられる。六年間続けてきた住宅ローン援助や孫の送迎まで当然のように扱われていた静江は、息子の希望どおり、すべての支援を打ち切った。 息子夫婦がハワイを満喫している間、静江のもとに旅行代理店から精算書が届く。そこには、健太が二か月前から母を旅行者名簿から外し、「重度の認知症と末期癌の疑いがある」と虚偽の申告をしていた記録が残されていた。 さらに義弟からの電話で、健太が静江を判断能力のない高齢者に仕立て、成年後見人として財産管理権を握ろうとしていることが判明する。狙われていたのは、資産価値八千万円の自宅と三千万円の老後資金。しかも計画には、嫁とその父親、虚偽の診断書を作った医療関係者まで関与している疑いがあった。 静江は弁護士と任意後見契約を結び、正常な認知機能を証明する診断書と旅行代理店の通話記録を確保する。そして帰国した息子夫婦を待っていたのは、止められた送金、返送された孫の荷物、そしてホテルのテーブルに並べられた逃げ場のない証拠だった。家族旅行から排除した母が、自分たちの計画をどこまで知っているのか――二人がそれを理解した時、作り上げた“幸せな家族”の姿が崩れ始める。嫁姑|親不孝|親子関係2.2万字5 745 -
完結第17話
夫と実母に裏切られたので、静かに二人との縁を切りました
夫の不倫を知った香織に、実母・静が突きつけたのは慰めではなく、「あなたが離婚すれば丸く収まる」という残酷な言葉だった。母は、自分が暮らすマンションの家賃を今後も払うという夫の約束と引き換えに、娘を切り捨てたのだ。 十七年間信じた夫と、長年支えてきた母。二人の密約を知った香織は、その場で離婚届に判を押し、母とも絶縁する。そして自分名義だった母の部屋を解約し、家族を支えてきた金と信用を静かに引き揚げていく。 ところが七日後、元夫の代理人弁護士から一本の電話が入る。夫は香織の同意を偽り、離婚後も彼女に契約責任を背負わせようとしていたばかりか、亡き父から相続した預金にまで手を伸ばしていたという。 消えた三百万円、不倫相手と設立された会社、そして母がどうしても香織名義の部屋を手放せなかった理由。裏切った二人が守ろうとしていた秘密を調べるうち、香織は、夫と母さえ互いの本当の目的を知らないまま手を組んでいたことに気づく。 娘を犠牲にすれば、すべて丸く収まるはずだった――。しかし香織が契約と通帳を一つずつ整理し始めた瞬間、その歪んだ同盟は内側から崩れ始める。嫁姑|夫婦2.6万字5 1136 -
完結第13話
30万円を止めた日
手術当日、夫から届いたのは見舞いの言葉ではなかった。 「病院へ行ったところで治るわけじゃないだろ」 その直後、私名義の家族カードで高級温泉旅館の二十一万円が決済された。夫は義母との旅行を楽しみ、SNSには《嫁が入院して自由になった》と投稿していた。 六十日間の入院中、夫も義母も一度も見舞いには来なかった。ところが夫は私の会社へ押しかけ、私名義のマンションを勝手に売却査定へ出していた。 さらに調べると、五年間送り続けた義母への月三十万円は、生活費ではなく投資用マンションの購入資金に流れていた。総額は二千百万円。 退院した朝、ようやく夫から電話が来た。 「母さんに毎月渡してた三十万円、なんで止めたんだ?」 私はその一言を聞き、夫婦として残っていた最後の線を静かに切ることにした。嫁姑|夫婦|介護|修羅場1.9万字5 1024 -
完結第15話
離婚した元夫は、私の再婚相手を知らない
離婚が成立した直後、警察官の元夫は私を見下して笑った。 「四十の女医なんか、誰も拾わない。せいぜい他の男を探せばいい」 私はその言葉どおり、裁判所の外で待っていた黒塗りの車へ乗り込んだ。後部座席にいたのは、かつて私が十四時間の手術で命を救った男性――そして元夫が勤める県警の頂点に立つ警察本部長だった。 その翌日、元夫の若い恋人から届いた一枚の写真に、不自然な公費精算の印が写り込んでいた。さらに若手刑事が現れ、二千万円を超える捜査費横領と、県警内部の隠蔽を告発する。 ところが、その夜。緊急手術を要する重傷者が病院へ運び込まれた。 血まみれでストレッチャーに横たわっていたのは、つい数時間前まで私を嘲笑していた、元夫の恋人だった。夫婦|真実|裡の顔|修羅場|不倫2.2万字5 509 -
完結第17話
娘の席を愛人に譲った夫の末路
夫・敬吾が愛人を優先し、6歳の娘・陽菜を飛行機の後方席へ一人で追いやろうとした瞬間、さゆりは離婚を決意する。実は彼女こそ、敬吾の出世を陰で支えてきた一流の法務コンサルタントだった。 さゆりは娘とプライベートジェットで北海道へ向かいながら、夫の不正経費と愛人関係を会社へ告発。敬吾は部長職を失い、北陸の倉庫へ左遷され、慰謝料と養育費の支払いも背負う。 その後、さゆりは自分の名で事務所を開き、娘との生活を再建する。一年後、母娘はあえて普通席の35列目に並んで座り、誰にも奪われない二人だけの旅へ出発した。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 2949 -
完結第16話
貧乏嫁と見下されていた私、義姉の結婚式で本当の名前を呼ばれました
義姉の結婚式に出席した千鶴は、義母と義妹から「貧乏な内職嫁は一族の恥」と親族写真から外され、式場を追い出されそうになる。六年間、服の縫製で小遣いを稼ぐだけの女だと見下されてきた千鶴は、反論せず静かに控室を去ろうとした。 だが、純白のドレスをまとった花嫁が彼女を呼び止め、その正体を明かした瞬間、義家族の顔色が一変する。千鶴は世界的ブランドの創業者であり、経営難に陥った義父の縫製工場が命運を託す、一億円超の契約を審査する人物だった。初めて彼女の名前を呼んだ義父に、千鶴が下した判断とは――。兄弟姉妹|嫁姑|修羅場2.4万字5 449 -
完結第11話
両親を亡くした私が旅行から帰ると、実家が消えていた
両親を相次いで亡くした美穂に、夫・雅也が突然、一週間の温泉旅行を贈った。初めて見せた思いやりを信じて家を空けた美穂だったが、帰宅すると、思い出の詰まった実家は跡形もなく解体されていた。 雅也は土地を売り、その金で義実家を二世帯住宅にするつもりだった。しかし美穂が遺産を相続したというのは、三人の勝手な思い込みだった。名義変更前の家を無断で壊し、所有者の承諾書まで偽造した疑いが浮上する中、美穂は両親の思い出を奪った夫と義両親への反撃を始める。因果応報|嫁姑|夫婦|金銭問題1.7万字5 890 -
完結第10話
「飯抜き」と言われたので、夫との生活を全部やめました
「俺の命令に従わないなら、今日からお前は飯抜きだ!」 会社を勝手に辞め、半年間も妻の収入で暮らしていた夫・裕介は、義両親の前でそう宣言した。 しかも彼が求めたのは、妻・綾野が仕事を辞め、元気な義父の“介護”を始めること。 食卓に並ぶ料理も、家賃も、夫の税金さえ払っているのは綾野だった。 それでも義両親は「夫に従えない嫁に飯を食う資格はない」と言い放つ。 その夜、綾野は一人で家を出た。 そして生活費の送金を止め、夫の家族カードを凍結し、すべての支払いから自分の名義を外していった。 一か月後、電気も水道も止まった部屋から、裕介の怒鳴り声が届く。 『無職の俺を見捨てる気か! 今すぐ金を振り込め!』 だが綾野は、すでに一冊の調査報告書を手にしていた。 夫が彼女を退職させ、義実家へ閉じ込めようとしたのは、親の介護のためではなかった。 報告書の最初のページに記されていたのは、裕介がどうしても妻に知られたくなかった、ある「金」と「女」の存在だった――。人生逆転|嫁姑|夫婦|介護1.5万字5 756 -
完結第16話
大晦日、義実家の60億円計画を知った
大晦日の夜、義実家の二階から母とビデオ通話をしていると、突然その表情が凍りついた。 「南、声を出さないで。お父さんが裏口まで迎えに行くから」 直後、私は義父の書斎から漏れる夫の声を聞いた。二人は私の実印を盗み、私が代表を務める資産管理会社の権限を書き換え、約六十億円の預金を破綻寸前のリゾート事業へ流そうとしていた。 私は結婚指輪も荷物も置いたまま裏口から脱出し、その夜のうちに全口座を凍結。二十三億円の普通預金と三十五億円の定期預金を、夫の手が届かない別銀行へ移す手続きを終えた。 これで資産は守れたはずだった。 ところが銀行担当者は、夫が持参すると告げていた書類の中に、父の署名入り《債務保証承諾書》があったと明かす。その印鑑証明書は偽物ではなく、三か月前に正規発行された本物だった。 夫はいつ、父の印鑑証明を手に入れたのか。そして十三年間の結婚生活の裏で、どこまで周到に黒川家を破滅させる準備を進めていたのか。嫁姑|夫婦|真相|修羅場2.4万字5 608