"5枚で消された妻" 第3話
バブル経済が崩壊し、建設業界にも刻な響が始めた。
方の現も次々と縮した。
健の取引先が倒産し、売掛が回収できないことがなった。
最初は数百万円。
その穴を別の借入で埋める。
さらに別の支払いが来る。
からの融資も次第に厳しくなった。
健は消費者融や、正規ではない利の借入先にもをした。
借を返すために、しい借をする。
その悪循環が始まると、庭の空気はさらに悪化した。
帰宅も規則になった。
真夜に帰り、煙と酒の匂いを漂わせるが増えた。
「夕飯は?」
美幸が尋ねる。
「いらない」
「何かべたの?」
「うるさい」
以なら言わなかった言葉が、当たりのようにからるようになった。
ある夜。
美幸は仕事関係の類を理している、引きしの奥に押し込まれていたの束を見つけた。
数枚の借用だった。
会社の帳簿には記載されていない。
健個名義。
額を計すると、美幸が像していた範囲をはるかに超えていた。
さらに目を疑ったのは、利率だった。
「……何、これ」
指が震えた。
健が帰宅すると、美幸は借用を机のへ置いた。
「これ、どういうこと?」
健のが止まる。
「勝にのものを見るな」
「そんな話じゃないでしょう。これだけ借があるのに、どうして黙ってたの?」
「俺の仕事のことだ」
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「私だって帳簿を伝ってるのよ」
「おに何が分かる」
その瞬、美幸の目ので、夫の向きの穏やかな顔が完全に消えた。
い声。
たい線。
自分だけが正しいと信じ切った態度。
そのを境に、の関係は決定に壊れた。
しかし美幸は、すぐには婚を選べなかった。
結婚活を失敗だったと認める怖さ。
周囲へ説する苦しさ。
できていけるのかという。
そして何より、健が自分に何をするか分からないという恐怖があった。
それから2く、美幸は耐えた。
折、目を腫らして実へ来ることがあった。
よし子が配して聞いても、美幸は必ず同じように答えた。
「丈夫」
その言だけだった。
しかし、19942。
の残る寒い朝。
美幸はついに、で内の弁護士事務所へ向かった。
その、い結婚活を終わらせるための最初の歩を踏みした。
そして奇しくも同じ頃、夫の健もまた、れずある準備を始めていた。
佐々弁護士の事務所は、古い雑居ビルの3階にあった。
窓のには鉛の空が広がり、根の隅に残ったがゆっくり溶けていた。
美幸は応接のソファに座り、両を膝のでく握っていた。
「婚調をお願いしたいんです」
声はさかった。
佐々が婚の理由を尋ねても、美幸はくを語ろうとしなかった。
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「もう、緒には暮らせません」
「暴力はありますか?」
美幸は瞬だけ線をげた。
そして首を横に振った。
「殴られたりは……していません」
「では、借でしょうか」
沈黙。
その沈黙自体が、い活のさを物語っていた。
「ご主が作った借については、名義や使途を確認する必があります。婚したからといって、すべてあなたが負担するとは限りません」
佐々はできるだけ穏やかな声で説した。
美幸は何度もさく頷いた。
類の説がむ、ほとんど泣かなかった。
ただ度だけ。
「これで、本当に終わらせられるんでしょうか」
そう尋ねた、目から涙がこぼれた。
声はさない。
慌ててハンカチを取りし、顔を伏せた。
い押し殺してきたが、ほんのしだけ表へた瞬だった。
2末。
庭裁判所から婚調の通が健へ届いた。
美幸は、健が鳴り込んでくるのではないかと怯えていた。
ところが健は、なほど静かだった。
取引先の加藤という男性は、その頃、健から婚について聞かされたことをに証言している。
「どうせ終わった関係だから」
健は煙を吸いながら、そう言った。
「ただ、理することがある。しが必なんだ」
加藤は、その「理」という言葉が妙にに残った。
健は2度、同じ言葉を繰り返したからだ。
その頃から、美幸は夫のにい恐怖をじるようになった。
夜、アパートのにがまっている。
エンジンは切られている。
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