みかん小説
本棚

"5枚で消された妻" 第10話

夫の横顔を見た。

今まで子供へ笑いかけていた顔とは違う。

が消えている。

たい。

い結婚活の度も見たことがないほど、のような顔だった。

その瞬

奈のに、ずっと忘れていたつの記憶が蘇った。

奈が警察署を訪れたのは、健が任を受けた3だった。

相談へ入ってきた彼女は、顔を失っていた。

佐藤が温かいお茶をしたが、コップを持つ両が震えている。

「どうされました?」

奈はしばらく何も言えなかった。

やがてを決したようにいた。

「結婚したばかりの頃なんです」

佐藤は帳をいた。

「引っ越しの荷物を片づけていた、夫の引きしの奥から、古い薬の袋がてきました」

「薬?」

「はい」

普通の病院でもらう袋とは違った。

薬局名もない。

病院名もない。

真っ袋。

そこへきで、薬品名らしい文字がいてあった。

「何の薬か分かりますか?」

「当は分かりませんでした」

「今は?」

奈は唇を噛んだ。

「ニュースで警察がの奥さんのことを調べていると聞いて……急にしたんです」

その袋を見つけた奈は健へ何気なく尋ねた。

「これ何?」

すると健の表変した。

勢いよく袋を奪い取った。

「触るな」

普段の彼からは像できない調だった。

「昔の薬だ」

「誰の?」

「関係ない」

その袋をどこへ持っていったか分からない。

広告

捨てたのか。

隠したのか。

奈は忘れていた。

しかし取り調べから戻った夜に見た夫の目と、あのの目がなった。

「刑事さん」

奈の声が震えた。

「私は、こののことを何もらなかったのかもしれません」

佐藤はすぐに、奈が覚えている薬品名の部を確認した。

完全ではない。

だが再鑑定で検された薬剤と矛盾しなかった。

次に必なのは、19942の取引を記録していた田の証言だった。

は別件で役していた。

佐藤は刑務所へ面会に向かった。

い鉄扉。

質な廊

面会

な仕切りの向こう側に、囚姿の田が現れた。

佐藤が名す。

し考えた元を歪めた。

「ああ」

「覚えているんですか?」

のおっさんだろ」

佐藤はを乗りした。

「19942、何を売った?」

は仕切り越しに佐藤を見た。

「昔の話だぞ」

「覚えている範囲でいい」

「まとまった現を持ってきた」

「何を欲しがった?」

は声をし落とした。

い眠りの薬」

佐藤の指が止まる。

「普通の薬局で買えるものですか?」

「いや」

「何に使うと言っていた?」

「聞かなかった」

は肩をすくめる。

「客が何に使うかなんて、いちいち聞かないよ」

「どれくらい渡した?」

が記憶を辿る。

量については曖昧だった。

しかし薬の種類は、再鑑定で検された成分と致する能性が極めてかった。

広告

佐藤は正式な供述調を作成した。

が署名する。

これで19942の謎の取引が、単なる銭のやり取りではなくなった。

は妻が婚調を申してた期に、い薬を違法にに入れていた。

同じ頃、妻へ5000万円の命保険をかけている。

2か

妻をホテルへ呼びす。

血液から、その薬の成分が検される。

佐藤の机のに置かれたファイルは、今や分く膨らんでいた。

最初は5枚。

それが何枚にもなり、やがて冊のきな事件記録へ変わっていった。

司も、もう再捜査に反対しなかった。

「逮捕までけるか」

「本の自がなくても戦えるところまでは来ています」

佐藤は答えた。

「でも最に、本へ全部ぶつけたい」

は再び警察署へ呼ばれた。

3回目の取り調べ。

今度は弁護士が同席した。

回と同じように背筋を伸ばして座っていた。

「また同じ話ですか」

し違います」

佐藤はファイルをいた。

最初にしたのは、田の供述調だった。

へ滑らせる。

「19942。あなたにい薬を売ったと証言しています」

はゆっくり目を通した。

を持つ指が、わずかに震えた。

「嘘です」

「なぜ田が、あなたの名っている?」

りません」

「帳簿にも残っています」

「だから何ですか」

次。

渡辺の証言。

4頃に男が先にホテルへ来た。

を取った。

その、美幸が同じ部へ入った。

「12の記憶です」

は言った。

「証言として信用できない」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: