みかん小説
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"灯油札の密告" 第1話

20051118午37分。野県のあいにあるは、の底へ沈んだような静けさに包まれていた。、炭の煙突から吐きされていた黒い煙もとうに消え、古い造の根には数のがく残っている。を抜けるが軒の薪をかすかに揺らしていたが、その乾いた音にを澄ます者など、このには誰もいなかった。

で最初に異変へ気づいたのは、藤から軒れた所に暮らす72歳の文子だった。夜に喉の渇きで目を覚まし、え切った台所へ向かった、障子の向こうが妙に赤くるいことに気づいたのである。最初は朝から誰かが炭焼き窯へを入れたのだとったが、ががっている方向は窯ではなく、のだった。

玄関をけた瞬、文子はを覆った。古い材が焼ける匂いに混じり、灯油に似た刺激臭がたい空気のを流れてきた。目をげると、藤のの根から赤い炎が吹きがり、軒に積んであった用の薪へ次々と燃え移っていた。

「事だよ! 藤さんのが燃えてる!」

文子の叫びで、眠っていたが斉に目を覚ました。寝巻きのから防寒着を羽織った男たちがへびし、ある者は消器を、ある者はバケツをにった。藤には42歳の、その妻で39歳の由里、そして学1になったばかりの7歳の息子・湊が暮らしていたため、誰もががにいるとっていた。

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の青・修司が真っ先に玄関へ駆け寄った。ところが引き戸へをかけても、扉はわずかにもかなかった。別の男が加わり、で力を込めて引いても同じだったため、炎のかりを頼りに取っの周囲を確かめたは、息を呑んだ。

太い鉄製の鎖が取っと柱へ何にも巻きつけられ、その先には型の京錠が掛けられていた。古いではあったが、藤の者が普段このような鍵の掛け方をしていないことは所の誰もがっていた。災からを守るための施錠ではなく、にいる者がへられないようにするための細だと気づいた瞬、集まったたちの表が変わった。

「斧を持ってこい。鎖を切るぞ!」

は自宅から薪割り用の斧を持ってこさせ、何度も京錠へ振りろした。しかし災のでづいていられるはく、属はきな音をてるだけで簡単には壊れなかった。別の男たちは裏へ回ったが、普段ほとんど使われていない勝も側から太い横で塞がれ、その両端をい釘で固定されていた。

誰かが、つしかないを事に塞いでいた。

その事実が分かった直、のからいものが倒れるような音が響いた。燃える梁が崩れたのかもしれないと誰もがったが、続いて炎の爆ぜる音の隙から、幼い声が聞こえた。

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「お母さん……!」

は玄関へ顔を寄せ、「湊! 聞こえるか! 窓かられろ!」と叫んだ。だが返事はなく、代わりに根の部からのが量にいがったため、周囲の男たちはを引にろへ引き戻した。

その、の裏からの男がってきた。46歳の斎藤正だった。藤から軒れたにみ、若い頃は自転修理を営んでいたが、を畳んでからは定職がなく、が勤める炭で折雇い仕事を回してもらっていた。

斎藤はのジャンパーを寝巻きのへ羽織り、にだけスリッパを履いた格好な姿だった。燃えがる藤を見るなり顔を歪め、「! 由里さん! 湊!」と叫びながら炎へ向かって駆けしたため、が慌てて両腕をつかんだ。

「せ! 俺がく! あのにはいるんだぞ!」

「無理だ、正! 今入ったらおまでぬ!」

斎藤は面へ膝をつき、両でを抱えた。がに困った斎藤へ米や灯油を分け、仕事を紹介していたことをがっていたため、その取り乱し方を疑う者はいなかった。むしろ、誰よりも世話になった友だからこそ、彼はこれほど苦しんでいるのだと誰もが考えた。

午324分、消防がへ到着した。隊員たちは隣への延焼を防ぎながら方向から放を始めたものの、乾燥した古い材に加えて薪や炭まで置かれていた藤の勢はく、簡単には鎮まらなかった。

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