"白木蓮の偽証" 第2話
黒瀬は聞を机に置くと、何の指示も受けていないのにちがった。
今度こそ、自分が見落としたものを見なければならない。
そうった。
10、科学捜査研究所から正式な鑑定結果がた。骨は172cmの成男性で、齢は30代半から半ば。京の歯科医院に残っていたカルテとの致に加え、優が勤務していた法律事務所の私物から得られたDNAとも致した。
藤代優だった。
さらに蓋骨の側部には、に受けたとみられるきな損傷があった。鋭利な刃物ではなく、のようなく丸みのある物体でく打たれた形跡であり、因につながった能性がいと判断された。
「事故ではない」
捜査本部がちがった。
黒瀬にも連絡が入った。当の捜査資料を最もよくっていることから、再捜査に資料担当として参加してほしいという依頼だった。すでに定を迎えていた黒瀬は嘱託職員というだったが、断る理由はなかった。
翌朝、彼は柏尾警察署3階の会議へ入った。壁には町の図、現写真、そしてスーツ姿でわずかに笑う34歳の優の写真が貼られていた。17にはさな元写真だったものが、今では「被害者」の写真としてきく引き伸ばされている。
黒瀬の机には、茶く変した古いファイルが30cmほど積まれていた。
広告
最段の表には「藤代優失踪関係綴り」とかれている。いた瞬、乾いたと埃の匂いがちった。
20031114、曜。
その、柏尾町の最気温は氷点1度だった。優は2の12夜、京から実へ帰っている。法律事務所には「私用のため」とだけ届け、数の休暇を取っていた。
14午、沢子の証言によれば、優は昼に支度をえた。
「京へ戻ると言っていました」
当の供述調には、そう記録されている。
柏尾駅の防犯カメラには147分、ベージュのコートを着た男がろ姿で改札を通る様子が映っていた。顔は映っていないが、肩からげた黒い鞄とコートは優が普段使っていたものだと沢子が確認した。
その男が1414分発のり列へ乗ったと考えられた。
さらに優の携帯話は、15台に野内、17台に崎付、1938分には京都内の基局を経由していた。京まで移したことは、当の捜査員にとってほぼ疑いのない事実だった。
ところが自宅マンションへ戻った形跡はない。法律事務所にも勤せず、携帯話もその夜を最に沈黙した。1119、正式な方届がされ、警庁と野県警が同で取りを追った。
黒瀬は17の報告を読み直した。
担当していた訴訟。
消費者融会社との争い。
過の交際相。
広告
銭関係。
自殺の能性。
つずつ調べられ、どれも決めを欠いた。
当の捜査が完全に怠だったわけではない。それどころか、京へ移したという提にてば、かなり広い範囲を調べていた。それでも見つからなかった。
夕方、再捜査の最初の会議がわれた。
管理官がホワイトボードへつの能性をいた。
つ。
優は実際に京へ向かい、そのなんらかの理由で柏尾へ戻り、実で殺された。
もうつ。
駅を通った男は、最初から優ではなかった。
「者だとすれば」
若い刑事の沢田が言った。
「携帯話も別が持っていたことになります」
「そうなる」
管理官が頷く。
「つまり、誰かが藤代優になって京まで移した」
会議が静かになった。
黒瀬は机ので拳を握っていた。
17。
その能性がをよぎらなかったわけではない。
だが追わなかった。
防犯映像。
携帯話。
継母の証言。
つも証拠が揃っていた。
そして何より。
沢子は泣いていた。
黒瀬は会議ので正直に言った。
「当、沢子さんに審な点はつもじませんでした」
全員が彼を見た。
「私は、彼女を疑わなかった」
誰も責めなかった。
その沈黙の方が、黒瀬には堪えた。
「彼女は、の子ではないのに息子は自分を母と呼んでくれたと言って泣きました。私はそれを母親の涙だといました」
管理官は静かに答えた。
「その涙が本物だったかどうかではなく、その涙の裏側に何があったのかを調べましょう」
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
15年後に消えた罪
1984年、東京・世田谷の古い木造住宅で起きた火災。 亡くなったのは、72歳の老人・近藤商司だけではなかった。 焼け跡から見つかったもう一人の女性の遺体は、なぜか新聞紙に包まれ、灯油の痕跡まで残されていた。 当初、事件は老人と介護士の間で起きた悲劇として処理された。 しかし15年後、古い書類に残された一つの署名と、焼け跡に残された小さな証拠が、隠され続けた真実を再び動かし始める。 消えた500万円。 偽造された署名。 そして、誰も疑わなかった親族の存在。 長い年月を経て明らかになった、静かな住宅街の奥に隠された衝撃の真相とは――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 131 -
完結第11話
地下室に消えた名前
旧精神療養所の解体前調査で発見された、図面には存在しない地下室。 そこには、番号だけを付けられた6人分の遺骨と、半世紀前に消された人々の記録が残されていた。 かつて「自死」と処理された女性たちは、本当に自ら命を絶ったのか。 調査を進める刑事たちは、古いカルテ、残された手紙、そして元医師の告白から、病院の地下に隠されていたもう一つの歴史へたどり着く。 しかし、そこにあったのは単なる事件の真相ではなかった。 名前を奪われ、声を失った人々と、長年沈黙を守り続けた社会の記憶だった――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 80 -
完結第13話
嘘葬りの豆腐店
1991年、茨城の古い商店街で、豆腐屋の嫁・美香が突然姿を消した。 姑と夫が語ったのは、「男を作って夜逃げした」という話。幼い息子を置いて消えた母親として、美香の名は商店街で長く汚され続けた。 しかし6年後、借金による強制執行で高橋豆腐店が取り壊されることになる。誰も近づこうとしなかった裏手のボイラー室。そのコンクリートを掘り返した時、そこから現れたのは、色褪せたスカーフと小さな金の指輪だった。 男と逃げたはずの嫁は、なぜ自宅の床下にいたのか。 そして家族は、6年間何を隠し続けていたのか。 雨の夜に消えた母の名誉を取り戻すため、古い商店街の沈黙が少しずつ崩れ始める。ミステリー|行方不明1.9萬字5 13 -
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 9 -
完結第13話
長野中部山岳紅葉山カップル失踪事件
2019 年 10 月、韓国束草・雪岳山で忽然と姿を消した 20 代の恋人カップル。 山の監視カメラに最後の後ろ姿を残し、それきり跡形もなく消えてしまった二人。 大規模な山間捜索を何度も行ったものの、衣類の切れ端一つ見つからず、3 年間も謎のまま放置されていたこの失踪事件。 3 年後、排水溝の底から発見された一台の携帯電話。 本体に復元された記録の中に、たった 9 秒(原文 6 秒調整可)の謎の通話履歴が残っていたのです。 撮影した第三者の姿は監視カメラにも目撃談にも一切残らず、臨時インターネット電話番号からかかってきた不可解な電話。 通話直後、二人のスマホが同時に電源オフになる不可解な記録。 リュックの隠しポケットから出てきた手描き地図と謎のメモ「ここへ行けばある。17 時 25 分より前に渡るな」。 警察が調べても特定できない撮影者、地図に載っていない危険な山道、時系列が繋がる不自然な証拠たち… 長野(原文韓国束草に統一)の山に隠された、誰も想像できない真相とは? 年配の方も分かりやすく時系列順に整理した事件全貌、今すぐ全文を読んでみてください。真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 12 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 9