"俺を脅し続けた同級生が、留守中の家で出会った男" 第9話
けれど、その先で俺は働いた。
失敗した。
と話した。
友を作った。
自分の活を、自分ので作り直した。
今、俺の隣ではを取ったワンコがゆっくり歩いている。
帰国したの夕方、いつもの公園へくと、し先でメイがを振っていた。
その横には犬塚がいる。
「お兄さん、遅い!」
「ワンコがゆっくり歩くようになったんだよ」
「犬塚、抱っこして」
「俺がですか?」
「ワンコをだよ」
「分かってます」
犬塚がしゃがみ、ワンコを抱きげる。
あれほど怖かった男の腕ので、ワンコはしきった顔をしていた。
「犬塚さん」
「何だ」
「俺、本当にじゃなくなりました」
犬塚は瞬こちらを見た。
そしていつものように、素っ気なく答えた。
「最初からじゃねえだろ」
「え?」
「おが勝にだとってただけだ」
返す言葉がなかった。
メイが犬塚を見げる。
「たまにはいいこと言うね」
「たまにはって何ですか」
俺は笑った。
夕方の公園を、4で歩いた。
俺。
メイ。
犬塚。
そしてワンコ。
血のつながった族ではない。
んでいる国も違う。
毎連絡を取るわけでもない。
それでも、俺に何かあればきっとこのたちはを差し伸べてくれる。
そして今度は俺も、同じことができる。
できることと、きりできることは違う。
それを教えてくれたのは、のに捨てられていた匹の犬と、どう見ても普通ではない男と、犬が好きなさな女の子だった。
広告
「」
犬塚が呼んだ。
「はい?」
「今夜、飯ってけ」
俺はし笑った。
「友達でもないのに?」
犬塚は骨に嫌そうな顔をした。
「……うるせえ。さっさと来い」
「はいはい」
メイが横から笑っている。
ワンコも犬塚の腕ので尻尾を振った。
俺はもう、このたちとの関係に名をつけなくてもいいとっている。
友達でも。
仲でも。
族のようなものでも。
切なたちであることだけ分かっていれば、それで分だった。
あの、健からかかってきた話しか鳴らなかった俺の携帯には、今ではいくつもの名が並んでいる。
そして、誰かがで苦しんでいる。
俺もいつか、犬塚が俺に言ってくれたように言えるでいたい。
「話してみろ。困ってるなら、しくらい力になる」
そう言えるなら、悪くない。
俺はワンコのを撫でながら、3と並んでへ向かった。
それから、さらに2が過ぎた。
俺はの会社で現スタッフの教育を任されるようになり、以より本へ帰れる回数は減っていた。それでもに度だけはめの休暇を取り、ワンコを連れて実へ戻るようにしていた。を売ろうとったこともあるが、両親とのいが残っていることもあり、今では帰国に使う所としてそのまま残している。
ワンコも、最初に会った頃のように元気いっぱいではなくなった。
広告
散歩の途でち止まることが増え、以なら気に駆けがっていた玄関の段差も、今では俺がしだけ支えてやる。それでも欲だけは変わらず、犬塚がそうな肉を持ってくると、驚くほど素くちがった。
「お、俺が呼んでもそんな速くかないだろ」
俺が言うと、犬塚は得そうに笑った。
「誰についていけば得するか分かってんだよ」
「俺が飼い主なんですけど」
「およりいいんじゃねえか?」
相変わらず腹のつ男だった。
メイは学になっていた。背もずいぶん伸び、初めて会った頃の面を残しながらも、しずつびた顔をするようになっている。それでも犬塚への扱いだけは変わらず、「犬塚、荷物持って」「犬塚、ジュース買って」と当然のように指示をし、犬塚も文句を言いながら全部従っていた。
そんな帰国のある午、俺はワンコと昔よく歩いたを散歩していた。
がりしそうな曇り空だった。
コンビニのを通り過ぎた、駐の端にの若い男が座っているのが見えた。齢は20歳くらいだろうか。作業着姿で、元にはきなリュックが置かれている。
最初は気にせず通り過ぎようとした。
ところがワンコが突然ち止まった。
「どうした?」
リードを軽く引いてもかない。
男の方をじっと見ていた。
すると若い男がワンコに気づき、さく笑った。
「かわいいですね」
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
孫の一言で取り戻した通帳
「ばあばの通帳、ママのバッグにいつも入ってるよ」 年金支給日の朝、6歳の孫が何気なく口にした。 嫁の箸が止まり、黒いバッグから緑色の通帳ケースが覗いていた。 2年前、骨折した私に代わり、毎月4万円だけ下ろす約束で預けたものだった。 「今日は自分で記帳してくるわ」 そう告げると、嫁の顔から血の気が引いた。 近所の信用金庫で、1年8か月ぶりに通帳を開く。 4万円だった出金は、いつしか6万、8万、10万円へ増えていた。 そして今日も、私が朝食を取る前に8万円が引き出されていた。 私は何も問い詰めず、キャッシュカードを停止した。 その日の午後、嫁は青ざめて帰宅した。 さらに翌日、ゴミ箱から落ちたATM明細を広げた瞬間――私はその8万円が生活費ではなかったと悟った。人生逆転|祖父母と孫|嫁姑|第二の人生|金銭問題1.6万字5 92 -
完結第11話
息子に捨てられた母の逆転
「お母さん、今日は少し外へ出ませんか」 息子夫婦に誘われ、70歳のはる子は雪の降る夜、車の後部座席へ乗った。 ところが車は町を離れ、山沿いの介護ホームの前で止まった。 「数日だけ、ここで休んでください」 そう言われた時、トランクから自分のスーツケースが出てきた。 荷物はいつの間にか詰められ、携帯電話は嫁に取り上げられた。 息子は「また来るから」と言い残し、母を301号室へ置いて帰った。 翌日、嫁は面会に来るなり尋ねた。 「通帳はどこですか? 実印は?」 さらに、見覚えのない白い錠剤を「いつもの薬」として渡してきた。 はる子は黙って薬を受け取り、認知症のふりを始めた。 そして翌日の病院で、嫁が電話口で話す声を聞く。 「診断が出たら、家も通帳も動かしやすくなるでしょう」 はる子はその会話を、コートの内側に隠した一本の録音機へ残していた。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|介護|金銭問題1.7万字5 220 -
完結第11話
義母に通帳を渡さなかった妻
「これからは私が家計を管理してあげるわ」 月給25万円の夫にそう言われ、月収100万円を超える私は黙って義母を見た。 結婚前に自分で買ったマンションなのに、給与口座のカードと暗証番号を渡せと言う。 夫は止めるどころか、「母さんは金の管理が得意だから」と賛成した。 さらに義母は、夕食、洗濯、外食の回数まで書いた「林家の新しい生活ルール」を作っていた。 その翌日、共同口座から100万円が消えた。 振込先は、夫の弟だった。 「家族なんだから、100万円くらいで騒ぐなよ」 夫はそう言い、義母も「女は夫を立てるもの」と笑った。 私はその夜から、自分の分だけ洗濯し、夕食も作らなくなった。 3日後、帰宅した夫が「飯は?」と聞いた時、私は寝室のキャリーケースを指さした。 「そんなにお義母さんが正しいなら、これからはお義母さんの家で暮らして」 夫が固まった直後、私はもう一枚の書類をテーブルへ置いた。夫婦|第二の人生|金銭問題|修羅場1.7万字5 484 -
完結第12話
夫に「姉のふり」を頼まれた日
「30分だけ、俺の姉ということにしてくれ」 妊娠7か月の奈緒が夫の昇進祝いへ行くと、夫の隣には淡い青のドレスを着た若い部下が座っていた。 社員たちは彼女を「奥様」と呼び、「来年の結婚が楽しみですね」と祝福していた。 夫は社内で、奈緒とは離婚協議が終わっていると説明していたのだ。 「じゃあ、お腹の子はあなたの姪ということ?」 その時、若い部下が廊下へ現れた。 夫は慌てて、奈緒が別の男の子を妊娠し、自分につきまとっているのだと言い出した。 奈緒は黙って、その日の朝に届いたメッセージを見せた。 《帰ったら赤ちゃんの名前を決めよう》 《日曜日はベビーベッドを見に行こう》 部下の顔から血の気が引いた。 しかし会場のスクリーンに映し出された夫の受賞企画を見た瞬間、奈緒はさらに重大な嘘に気づく。 それは2年前、彼女が自分の名前で作ったはずの企画だった。怒り|夫婦|第二の人生|不倫1.8万字5 427 -
完結第12話
嫁の「逃げて」で暴かれた妻の計画
「お義父さん、今すぐ車を降りてください。絶対に奥さんのところへ戻らないで」 妻との旅行中、ほとんど電話をしてこない嫁から突然そう告げられた。 「食べ物も薬も、絶対に口へ入れないでください」 私は妻が差し出した、水なしで飲める白い錠剤を思い出した。 トイレへ行くふりをして車を降り、観光バスの陰まで必死に走った。 やがて駐車場へ出てきた妻は、笑顔を消し、鋭い目で私を捜し始めた。 嫁の車へ逃げ込むと、一通の誤送信メールを見せられた。 《サービスエリアを過ぎたら薬を飲ませる。お兄ちゃんからそっちに連絡を入れておいて》 その夜、妻が持ってきた私の旅行鞄を開けると、底から見覚えのない書類が出てきた。 山間部にある介護施設のパンフレット。 入所予定者の欄には、私の名前と病歴が記されていた。 《認知機能の低下》《本人に病識なし》《今週末に入所予定》 そして保護者欄には、息子でも妻でもない、私の知らない男の名前が書かれていた。人生逆転|夫婦|真実|裡の顔1.7万字5 0 -
完結第10話
父の料亭を継いだ翌日、板長が全員連れて独立
「料理も作れないあんたじゃ、この料亭も終わりだな」 父の葬儀を終え、私が老舗料亭を継いだ翌朝だった。 板長は12人の従業員を連れ、駅前で独立すると宣言した。 「客も仕入れ先も、全部俺についてくる」 私は引き止めず、「分かりました」とだけ答えた。 13人が去った板場には、包丁一本残っていなかった。 ところが予約帳を調べると、宴会7件に謎の《保留》が記されていた。 新店舗の契約日は、父が倒れる3週間前。 酒屋にはすでに「先代は長くない」と話していたという。 さらに父の金庫から、黒ずんだ一冊のノートが見つかった。 過去に辞めた従業員の名前、その横には何度も同じ文字が残されていた。 《黒田君》 そして父が亡くなる4日前のページには、《黒田誠治 断る。二度目》の一行があった。 その下に書かれた短い文章を読んだ瞬間、私は板長を追わなかった父の本当の意図を知った。人生逆転|金銭問題|修羅場1.5万字5 0 -
完結第12話
失踪した妻を道の駅で見つけた――「来ないで」と怯えた理由
「パパ、あの人……ママじゃない?」 半年前に消息を絶った妻が、山あいの道の駅で宝くじを売っていた。 車椅子に座り、別人のように痩せていた。 娘が「ママ!」と駆け寄ると、妻は青ざめて叫んだ。 「来ないで! 私はあなたたちを知らない!」 だが左手には、私が贈った結婚指輪。 そして手の甲には、見慣れた2つのほくろがあった。 「本当は、ずっと会いたかった」 妻は泣きながら娘を抱きしめた。 その直後、震える声で私に告げた。 「私が帰ったら、あなたと杏奈まで消される」 さらに宝くじ箱を差し出し、底を指さした。 そこには、妻が消息を絶った夜の“声”が残されていた――。 (続)因果応報|人生逆転|夫婦|真実|第二の人生|親子関係1.9万字5 638 -
完結第11話
母が残した最後の住所
母を亡くした14歳の俺には、頼れる人が誰もいなかった。 父は幼い頃に亡くなり、母は朝から夜まで働き続けていた。 葬儀の後、親戚にも「うちでは面倒を見られない」と断られた。 一人になった部屋で母の遺品を整理していると、古い桐の箱から一枚のメモが出てきた。 《本当に一人になった時だけ、この場所へ行きなさい》 書かれていた住所は、隣の市の山手にある大きな屋敷だった。 俺は制服のまま、片道2時間近くかけてその場所へ向かった。 石造りの門柱には、母が一度も口にしたことのない名字が刻まれていた。 帰ろうとした、その時。 重い門がゆっくり開き、黒い服の老人が現れた。 老人は俺の顔を見るなり、深く頭を下げた。 「坊っちゃま、お待ちしておりました」 母が隠していたのは、いったい何だったのか。 (続)人生逆転|相続|第二の人生|金銭問題1.7万字5 542 -
完結第10話
空っぽの弁当箱
「5万円の居候でしょ?」 そう笑われながら、58歳の私は毎朝5時に起き、息子一家4人分の弁当を3年間作り続けた。 息子の好物、嫁の職場向けの彩り、孫の部活用のおにぎりまで、全部私が考えていた。 食費や学校用品も、足りない時は自分の財布から払った。 それでも家族から返ってくるのは、「家事くらいちゃんとしてよ」という言葉だけ。 迎えた58歳の誕生日、誰も私の誕生日を覚えていなかった。 「今日で、この家の家事係を降ります」 そう告げても、息子は「またすねてる」と笑った。 その夜、私は誰にも何も言わず、自分の荷物だけをまとめた。 翌朝、台所に並んでいた4つの弁当箱は、すべて空っぽだった。 冷蔵庫には、短いメモが一枚だけ残されていた。 そして家族は初めて、私が毎月5万円以外に何をしていたのかを知ることになる。因果応報|人生逆転|嫁姑|第二の人生|親子関係|金銭問題1.4万字5 375