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"60万円の命の値段" 第3話

担当医が険しい表で告げる。

「保証の件、にいませんでしたね。現、通常の点滴処置のみをっていますが、血栓の溶解は絶望です。今夜が限界でしょう」

「先、父を諦めないでください」

「そうはおっしゃいますがね、奥さん。度医療には相応の準備と費用が必なんです。あなたのような般の方には……」

医師の言葉が、突如として鳴り響いた苦しいサイレンの音にかき消された。

病院の正面玄関に、けたたましい非常音とともに滑り込んできたのは、赤灯を回す台の特別医療搬送と、漆黒のセンチュリー台だった。ドアが斉にき、イヤホンを装着した屈なSPたちがロータリーの封鎖線を瞬に構築する。

待が騒然となる、完璧に仕てられたスリーピーススーツの紳士が、数名の医師団を従えてICUへと歩み寄ってきた。黒田だった。

「お嬢様、お待たせいたしました」

黒田は美央ので完璧な度の最敬礼をった。その背で、京の都学臓血管科の名誉教授たちが斉にをげる。

「な、なんだ君たちは! ここは部者のち入りを——」

をなして制止しようとする方病院の院に対し、黒田は懐から枚の文字入りの分証を徹に提示した。

「馬グループ特別医療統括本部です。これより患者・馬総郎氏の医療管理権を当方が完全に掌握します。

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救急搬送の全責任はがグループが負う。材を搬入しろ」

黒田の鋭い見得とともに、最の体循環装置を備えたストレッチャーがICUへと運び込まれていく。圧倒な財力と権力のに、方病院のスタッフたちはただ呆然とち尽くすしかなかった。

「お嬢様、こちらへ署名と認証を」

黒田が恭しく差ししたチタン製のタブレット端末。美央は切の躊躇なく、の親指を静脈認証センサーに押し当て、桁の暗証コードを打ち込んだ。

ピピッ。

『認証完。全グループアクセス権限、および第種緊急決済座を復旧します』

画面に浮かびがった利用能残の表示は、国予算の部をわせる文学な数字だった。

昨夜、たった万円の端のためにをげさせられ、夫に嘲笑われた記憶が脳裏をよぎる。美央の元に、たく乾いた笑みが浮かんだ。

「父を京の特別医療センターへ。……それと黒田さん、帝都産業という会社を調べて」

「承しております。すでに対象者・佐々達也の辺調査および社内査察の準備を始しております」

防弾仕様のハイヤーに乗り込み、美央は京へとりす列の窓を見つめた。狩りのは、静かに幕をけていた。

京・港区の等にそびえつ、馬グループ本部ビル。最階の階に位置する総帥執務は、の世界の喧騒を完全に遮断したな静寂に包まれていた。

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面に敷き詰められたペルシャ絨毯、壁面のマホガニーの本棚。美央は最級のブラックフォーマルスーツにを包み、かつて父が座っていた広なデスクのにっていた。

専用医療センターに搬送された総郎は、国内最峰のチームによる緊急術を受け、奇跡に命を取り留めたものの、識の篤な状態が続いていた。医師からは「残されたはくない。いつ呼吸が止まってもおかしくない」と告げられていた。

父の命を繋ぎ止めながら、美央はこの数、グループの全容を掌握するための執務に忙殺されていた。数千億円の投資案件の決裁、子会社の統廃。美央がペンを度らせるだけで、何万もの雇用と経済がく。

コンコン。

「失礼いたします。統帥(とうすい)様、ご指示の調査報告がいました」

入してきた黒田が差しした分いファイルを、美央は無言で受け取った。

「帝都産業の営業課代理・佐々達也。……はどうだったの?」

「極めて杜撰、かつ悪質です」

黒田の報告は、美央の像を遥かに回る浅ましさに満ちていた。

達也が誇っていた「エリート商社マン」の実態は、親会社から回ってくる定型な資材配分のルーチンワークを処理しているだけに過ぎなかった。

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