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"お湯を奪われた嫁" 第2話

広い軒に残された静子を配した夫の裕介から「同居してやってくれないか」と懇願され、私は渋々承諾した。

夫の裕介は堅械メーカーの営業職で、取り収は約万円。 方の私は、元の堅品卸売会社でフルタイム勤務の営業事務。取り収は約万円。

確かに、額面だけを見れば夫のほうが万円ほどい。 だが、義母がい込んでいるように、私が夫の稼ぎに寄しているわけでは断じてなかった。

毎の費、約万円。 料およびガス代、約万千円。 トイレットペーパー、洗剤、調料などの用品費、約万千円。 ――私の取り万円から、毎きっかり万円を、活維持費として現やカード決済で拠していたのだ。

残りの万円から、自分の奨学の返済(万千円)、携帯代や個保険、そして将来のための積貯。私の元に残る自由なおなど、万円もあれば良い方だった。

方、夫の裕介は何を負担していたか。 宅ローンが万円。気代が万千円。そして自の趣である型スポーツカーのローンと維持費、ガソリン代で万円。残りの約万円は、ゴルフやみ会、そして自分の遣いとして消えていた。

それにもかかわらず、義母の目には「息子が軒を構え、嫁を養ってやっている」

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としか映っていなかった。 費の請求が届くたび、義母は「裕介が汗垂らして働いたがんでいく」と嘆き、私がでリビングにいるは「気代がもったいない」とエアコンを消された。 夕の卓では、裕介の皿には分いステーキが乗り、私の皿には肉を炒めたの端切れキャベツともやしだけが盛られた。

『真理子さんは事務職で座りっぱなしだから、カロリーなんて消費しないでしょう? 裕介は回りで変なんだから、肉をべなきゃ持たないのよ』

その度なる理尽な差別に、私は波をてないよう、笑いを浮かべて耐えてきた。 私がし、を噤んでさえいれば、族という体裁は保たれる――そう信じていたからだ。

だが、違った。 私の沈黙と忍耐は、このに「稼ぎのないは、基本権すら奪われて当然である」という、歪みきった分制度を定着させただけだったのだ。

「もう、はおしまい」

たいシーツので、私は拳を固く握り締めた。 から、私は円もさない。 私の万円の拠が「価値のない端」だというのなら、それが消えたにこのがどうなるか、そのでわえばいい。

翌朝、午分。 階から響いてきた凄まじい号によって、私は目を覚ました。

「母さん!! 体何をやらかしたんだよ!!」

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今まで聞いたこともない、夫・裕介の裏返った叫び声だった。 私は静かにベッドから起きがり、カーディガンを羽織ってドアを数センチだけけた。廊を伝って、リビングでの緊迫したやり取りが々しくにび込んでくる。

「な、何よ裕介、朝から声をすんじゃないわよ……!」 静子の狼狽した声。

「声をすなだと!? 今、真理子からLINEが届いたんだよ!『今限りで活費の負担を完全に止します。来からの費、用品費、ガス代はすべて裕介さんの座から引き落としてください』って! これ、どういうことなんだよ!」

「あ……あの子、本当にそんなこと……」 「母さん、昨の夜、真理子に何て言ったんだ!? 正直に言え!」

裕介の詰問に、静子はごもりながら言い訳を並べてた。 「な、何でもないわよ! 昨の夜、あの子が過ぎに帰ってきて、のうのうとお呂を沸かそうとしたから、し注しただけよ! 今はガス代がいから、しは節約しなさいって……!」

「それだけで真理子がここまでキレるわけないだろ! 本当は何て言ったんだって聞いてるんだよ!」

激昂した裕介の剣幕に圧され、静子は満げにを尖らせて吐き捨てた。 「……なんだから、お湯くらいしてで分でしょうって、そう言っただけじゃないの! 事実でしょうが!」

ドサリ、と何かがに落ちる音がした。

裕介が持っていた通勤鞄を取り落とした音だった。

「……母さん、正気か?」 裕介の声から、りが抜け、底れぬ恐怖が滲みていた。

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