"9,000億円の離婚届" 第4話
そして、それは美穂という女性に関係しています」
私は息をんだ。
「浩司は、何を企んでいるんですか」
「会社に内緒で、しい法を設しようとしています。共同経営者は美穂さんです。ご主は、お父様の遺産をその資源にするつもりだったのでしょう」
浩司の目は、私をから追いすことだけではなかった。
父がくなるのを待ち、遺産を奪い、美穂としい会社を作る。そのために葬儀のを選び、私へ婚届を突きつけたのだ。
「の午、浩司さんの会社へ向かいましょう。彼らの計画に関する資料も、こちらで準備します」
私はく返事をして話を切った。
窓をけると、たい朝のが部へ流れ込んだ。空を見げ、胸いっぱいに息を吸う。
浩司はまだ、自分が9,000億円の資産を持つ女を捨てたことに気づいていない。そして、自分の元がすでに崩れ始めていることにも。
私はバッグを肩にかけ、父の部をにした。
浩司と子が暮らすは、最寄り駅から歩いて15分ほどの宅にあった。
35の宅ローンを組み、私が夜の清掃パートで稼いだのほとんどを注ぎ込んで支えてきた軒だった。名義こそ浩司になっていたが、も毎の返済も、実際には私の収入がなければ成りたなかった。
のへ着くと、庭の隅に黒いゴミ袋が5つ、無造作に放りされていた。
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には私のや古い靴、そして切にしていたき母の形見の着物まで、乱暴に丸められて詰め込まれていた。
空はいつのにかいに覆われ、たいがり始めていた。粒がゴミ袋を濡らし、黒い表面を何本もの筋になって流れていく。
私は傘を差すことも忘れ、そのにち尽くした。
りより先に、28の夫婦活が、たった5つのゴミ袋で終わるという虚しさが込みげてきた。
袋のを縛っていた赤い紐をほどくと、1番には浩司ののついた古いスニーカーが、私の着を踏みつけるように入れられていた。
彼らにとって私は、その靴と同じ程度のだったのだろう。
その、玄関の扉がいた。
「あら。本当に取りに来たのね。未練がましいこと」
温泉へったはずの子が、派なのカーディガンを羽織り、腕を組んでっていた。
「温泉はにしたのよ。浩司に急な来客があるからって言われてね」
わざとらしく嬉しそうな声だった。
葬儀の翌に、連れ添った妻を追いしてまでへ呼ぶ相など、1しかいない。
玄関マットのには、見慣れない赤いパンプスが揃えられていた。美穂の靴に違いなかった。
父の葬儀から1も経っていないのに、美穂はすでに私のへ入り、私の代わりを務めていた。
「ゆみさん、さっさと荷物を持ってていきなさい。
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これからは、もっと若くて気の利くお嫁さんが、このを守ってくれるんだから」
子はで笑った。
「浩司のしい会社が軌に乗れば、私も社の母として忙しくなるの。あなたみたいな貧乏神とは、これでお別れよ」
「そうですか。よかったですね」
私がい声で答えると、子は期待していた泣き顔が見られず、満そうに顔を歪めた。
「本当にげのない女ね。まあ、1で寂しく老を過ごしなさい」
子は勢いよく扉を閉めた。
のから、美穂らしい若い女性の笑い声が聞こえてきた。私は何も言わず、濡れ始めた荷物を袋へ移し替えた。
たいが髪を濡らし、首筋からのへ流れ込んでくる。指先は赤く腫れ、次第に覚がなくなっていった。
それでも、母の着物だけは濡れないよう、番奥へ丁寧にしまった。
3つ目のゴミ袋をけた、私のが止まった。
私の古いコートに紛れ、浩司が以着ていたグレーのジャケットが入っていた。浩司には、ポケットに物を入れたままを捨てる癖があった。
何気なく内ポケットへを入れると、指先にいが触れた。
取りしたのは、4つ折りにされた類だった。私はから守るように体で覆い、ゆっくりいた。
『規設法に関する資同』
発起の欄には、浩司と美穂の名が並んでいた。
そしてそのには、資予定額として「3,000万円」と記されていた。
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