みかん小説
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"午前5時30分の配車係" 第9話

の肩がいた。

を打って、俺の名を呼んでたんだろ」

「はい」

「帰るって言ってたんだろ」

「はい」

「だったら俺が迎えにった」

修平は机のに両を置いた。

「おが奪ったのはだけじゃない」

は顔をげなかった。

「俺が妻を迎えに会だよ」

それ以、修平は何も言わなかった。

はその、事故を隠した経緯、由紀子をのまま施設へ預け続けた経緯について捜査を受けた。

庭も、元確認をせず施設に置き、銭と引き換えに部へらせなかった事を調べられた。

修平は処分の詳しい見通しを聞こうとはしなかった。

法律が何分を裁けるのか。

どこからが事故で、どこからが故なのか。

それは捜査関が決めることだった。

彼が欲しかった答えはつだけだった。

由紀子はなぜ帰らなかったのか。

その答えは、もう分かっていた。

帰らなかったのではない。

帰るための連絡を、

に止められていた。

 

由紀子と修平が初めて会ったのは、元確認からだった。

青葉ホームではなく、県内の医療関に移されただった。

医師からは、

「過度な期待を持たないでください」

と言われた。

由紀子の記憶は、完全に失われているわけではない。

ただし、昔の記憶と現の状況がうまくつながらない。

を覚えていても、そのの今の顔と致しないことがある。

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のご主の顔を覚えていても、今の瀬さんをすぐに夫だと認識できない能性があります」

修平は頷いた。

鏡を見るたび、自分でもそうっていた。

歳になった由紀子だけではない。

自分も歳になっている。

髪はくなった。

目尻の皺も増えた。

妻が覚えている修平とは違う。

面会へ入ると、由紀子は窓際に座っていた。

のカーディガン。

膝のさなタオル。

修平は入ち止まった。

写真で見ていた。

何度も見た。

それでも実際に目のへ現れると、息ができなくなった。

妻だった。

頬の線も。

の形も。

考えるし唇を尖らせる癖も。

の由紀子とは違う。

でも、由紀子だった。

「こんにちは」

修平が言った。

由紀子は顔をげた。

しばらく見ている。

返事はない。

修平は子へ座った。

「修平だよ」

由紀子の眉がわずかにいた。

瀬修平」

を聞くと、由紀子は修平の顔ではなく、

線を落とした。

結婚指輪がある。

修平はしていなかった。

由紀子はゆっくりを伸ばした。

指輪に触れた。

「これ?」

修平が尋ねる。

由紀子は何も言わない。

指先だけで属の表面をなぞった。

しばらくして、

「しゅう……」

と声がた。

修平は息を止めた。

「うん」

「しゅうへい」

ノートに何度もかれていた名

修平は、

「そうだよ」

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とだけ答えた。

泣かないつもりだった。

妻をにさせたくなかった。

それでも涙が落ちた。

由紀子は議そうに見ていた。

修平の涙の理由までは分からないようだった。

面会は分で終わる予定だった。

由紀子は昔のことをほとんど話さなかった。

横浜。

スーパー。

同窓会。

どの言葉にもし反応はするが、会話にはならない。

修平が自宅の写真を見せると、

「ここ」

と言った。

「覚えてる?」

由紀子は首を傾げた。

次に、失踪に夫婦で撮った旅写真をした。

由紀子は若い自分の顔を見つめた。

「これ、由紀子だよ」

修平が言うと、

「ゆきこ」

と繰り返した。

「俺と緒にったんだ」

由紀子は写真の若い修平を指した。

「しゅうへい」

「そう」

今の修平を見た。

写真を見た。

また修平を見る。

つをつなげようとしているのが分かった。

やがて、

「おじいちゃん」

と言った。

修平は瞬、呆気に取られた。

それから笑った。

「まあ、そう見えるよな」

由紀子もしだけ笑った。

その笑い方だけは、昔と変わらなかった。

帰り際。

職員がとペンを持ってきた。

「今し疲れたので、最に字をいて終わりにしましょう」

由紀子はペンを握った。

を見ている。

修平は横から何も言わなかった。

しばらくして、文字目をいた。

【修】

線は震えている。

次に、

【平】

文字。

修平は何度も見てきた。

ノートにも同じ字があった。

けれど目のく姿を見るのは初めてだった。

由紀子はを修平へ向けた。

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