みかん小説
本棚

"午前5時30分の配車係" 第11話

今度はに決めさせたくなかった。

由紀子の昔のは、そのまま残っていた。

修平は度、

「見にく?」

と尋ねたことがある。

由紀子は、

?」

と聞き返した。

んでたところ」

しばらく考えて、

「今度」

と答えた。

修平はそれ以勧めなかった。

帰ることが正解だとは限らない。

由紀子にとっての今の活は、

施設の部

毎朝決まったるお茶。

窓際の席。

写の

に来る修平。

それもすでにつの活だった。

をなかったことにはできない。

だから修平は、

妻を昔へ引き戻すのではなく、

今の妻の活へ自分が入っていくことにした。

ある

由紀子は写のだった。

修平が部へ入ると、机のが置かれている。

由紀子はいつものようにペンを握っていた。

「今は何いてる?」

修平が尋ねた。

には、

【修平】

とあった。

そのにも、

【修平】

き続けた名

修平は、

「相変わらず俺ばっかりだな」

と笑った。

由紀子は首を傾げた。

職員が言った。

「今は、もういてもらったんですよ」

の方。

ゆっくりとした字で、

瀬】

その横に、

【由紀子】

かれていた。

修平は何も言えなかった。

「お名を聞いたら、今は全部けました」

職員が嬉しそうに言った。

由紀子はを見ている。

修平が尋ねた。

「これ、誰?」

由紀子は最初、

【修平】

を指した。

「俺だね」

次に、

瀬由紀子】

の文字を指した。

しばらく考える。

そして自分の胸へを当てた。

「私」

修平は頷いた。

「そう」

声がなくなった。

「由紀子だよ」

由紀子はもう度、

「由紀子」

にした。

彼女は夫の名を忘れなかった。

修平。

帰る。

瀬。

断片になった言葉ので、

何度も夫のいる所へ戻ろうとしていた。

けれどその

ようやく戻ってきたのは、

夫の名ではなかった。

机のに、

の女性の名があった。

瀬由紀子。

ぶりに、

彼女は誰かの妻としてではなく、

自分自の名で、

そこにいた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: