"水を盗んだ隣人の末路" 第1話
曜の朝、初の陽が古い造のリビングに柔らかく差し込んでいた。ダイニングテーブルの央に広げられた旅会社のパンフレットには、加されたかのように鮮やかなコバルトブルーのと、まばゆいい砂浜が印刷されている。肩には太いポップ体のフォントで「族でく極リゾート・沖縄4泊5の旅」と躍っていた。
「お母さん、これ、本当に本気なの?」
トーストにかぶりつきながら、2の娘・芽がパンフレットを指先で弾いて笑った。制のブレザーを脱ぎ、部着のパーカーを着崩した芽の顔には、からかい半分、期待半分のが浮かんでいる。
「本気に決まってるでしょう。今こそ、でちゃんとした族旅をするの。芽が学受験になっちゃったら、もう族でなんてできなくなるんだから」
私——青井紀は、今で47歳になる。郊の古びた宅に建つ築22の古戸建てに、夫の正と芽ので暮らしている。パート勤めの私の収入と、堅建材メーカーに勤める正の料。決して極貧ではないが、宅ローンの残債と芽の私学学を見据えた学資保険の支払いがくのしかかり、がの財政は常に「引き締めモード」だった。旅といえば、に度、でのの温泉か、帰りバイキングが関のだったのだ。
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「でもなぁ、沖縄って言っても、ハイシーズンなら代とホテル代だけで軽く万はんでいくぞ」
老鏡をのに乗せ、方の朝刊をめくっていた正が、聞の端から目をのぞかせた。くなり始めた頂部を気にしながら、現実な数字を突きつけてくる。
「だから今から、徹底に節約するのよ。目標期はヶ。気、ガス、費、そして代。計のあらゆる無駄を削ぎ落とせば、万円や万円くらいは浮くはずよ。それに私の特別ボーナスのパート代をせば、分の届く額になるわ」
「おの節約宣言、に痛い目を見てるからなぁ……」
正が苦笑いを浮かべた。
「いつの話よ」
「ほら、。呂の残り湯を洗濯だけじゃなく、ベランダのプランター菜園と観葉植物のやりに使うって張り切って、リットルのバケツを両に持って階段をがっただよ。を踏みして階の廊にぶちまけて、階の井まで浸しにして板を腐らせただろう」
「あっ、あのの!」
芽が吹きし、牛乳を喉に詰まらせそうになった。
「あれは単なる抗力の事故! 今回はあんな力仕事はしないわよ」
「あののの張替えと消臭事で、修繕費が8万円んだのを俺は忘れないぞ」
正はげさにため息をついたが、芽が「でも私、沖縄きたいな。
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美ら族館でジンベエザメ見たいし、古宇利島のカフェにもってみたい」と目を輝かせると、渋々ながらも「……まあ、無理のない範囲なら協力するか」と元を緩めた。
こうして、青井の「沖縄奪還作戦」と銘打った猛烈な節約活が幕をけた。
私の気込みは凄まじかった。 まず、台所では器を洗う際にを決して流しっぱなしにしない。油汚れはあらかじめ古聞やスクラップした牛乳パックで拭き取り、ために浸けてから最限の流で素くすすぐ。 呂の残り湯はポンプを使って洗濯の「洗い」と「回目のすすぎ」に徹底活用した。 シャワーの使用はあたり分以内と厳しく定め、タイマーを脱所に設置した。正が湯に浸かりながら「たまにはをゆくまでシャワーで流したい」と愚痴をこぼしても、私はドアのから「あと分!」と容赦なくカウントダウンを浴びせた。 庭のアジサイや庭菜園のプチトマトへの散も、朝の涼しい帯にジョウロ杯分だけと決め、余計なやりは切断った。
費も徹底して切り詰めた。所のスーパーの見切り品を買い集め、もやし、豆腐、鶏むね肉を駆使した節約レシピが毎晩卓に並んだ。 正は最初のうちこそ「刑務所の飯か」などと軽を叩いていたが、芽が楽しそうに「今の節約ポイントはどこ?」
とクイズ形式で夕を盛りげてくれたおかげで、のにはどこか文化祭のような向きな連帯がまれていた。
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