"水を盗んだ隣人の末路" 第2話
ヶが経過した。
の旬、蒸し暑いが吹き抜ける夕暮れ。ポストをけると、青い枠線で縁取られた自治体の局からの「ご使用量・料等のおらせ」が入っていた。
「来た……!」
私はわず声を漏らした。このヶ、爪にを点すようないでを節約してきたのだ。はおよそ2万1000円だった料が、体どこまでがっているか。1万5000円か、うまくいけば1万2000円台まで落ち込んでいるかもしれない。族の努力が目に見える数字となって結実する瞬を像し、私の胸は鳴っていた。
「正さん、芽! ちょっとリビングに来て!」
夕の支度を断し、階にいたを呼び集めた。正が階段をとんとんとりてきて、芽もスマートフォンをにしたまま卓の子に座る。
「いよいよ結果発表ね。刮目して見なさい」
私はしげさに胸を張り、封筒の端を丁寧にペーパーナイフで切り裂いた。から折りたたまれた請求用を取りし、正と芽の線が集まるで勢いよくく。
印字された請求額の欄に線を落とした。
「……え?」
界に入ってきた数字列を、私の脳が認識することを拒絶した。
「どうした、紀。いくらだったんだ?」
正が覗き込んでくる。私は唇を震わせ、掠れた声で数字を読んだ。
「……15万……?」
「は? 1万5000円の違いだろ?」
「違う……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……じゅうごまん、よんせん、さんびゃく、はちじゅうえん……」
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「見せてみろ!」
正が私のからを奪い取った。聞を読むよりも鋭い目つきで、請求を凝する。
「15万4380円……!? 使用量が……380方メートル!? なんだこれ、民プールでもいたのか!?」
「ええっ!?」
芽が子からびがり、正の肩越しに面を見た。
「嘘でしょ!? 先2万円くらいだったよね? なんで倍以になってるの!?」
「何かの違いよ! 械のエラーか、検針員の打ち違いに決まってるわ!」
私は半狂乱になりながら叫んだ。ヶ、油汚れを聞で拭き取り、シャワーのを秒単位で管理し、族全員で汗を流してし続けた結果が、15万円の請求? そんな条理が許されていいはずがない。
「おい、落ち着け。まずはのだ。漏かもしれん」
正の静な声にハッとに返った。漏。古いだから、の配管が破裂して、誰も気づかないうちにで量のが吹きしているのではないか。
夕の鍋のを消し、私たちはの回りを確認して回った。 台所のシンクのをけ、排管の周りを確認する。乾いている。 洗面台の、洗濯のホース、呂の蛇、シャワーヘッド。どこからも滴つ垂れていない。 階と階のトイレのタンクをけ、内部でがチョロチョロと流れ続けていないかも確認した。正常だった。
「どこも漏れてないぞ」
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正が懐灯をに取り、勝からへた。私と芽もサンダルを突っかけてに続く。際にある青いプラスチックの量器の蓋をけ、丸いメーターの盤面を照らした。
「ののは、全部止まってるよな?」
「うん、さっき全部確認した」
「……なのに、見ろ」
正が指差したメーターの央、さなのパイロットマーク(のような型の部品)が、目にも留まらぬ猛烈なスピードでくるくると回転していた。のでは滴のも使っていないというのに、メーターはまるで滝のような勢いでを消費し続けていることを示していた。
「いてる……めっちゃ速く回ってる……!」
芽が恐怖を帯びた声で呟いた。で顔を見わせる。背筋にたいものがった。がので、見えない洪が起きているのか?
「配管のルートを追うぞ」
正はメーターボックスから伸びるの配管の向を推測しながら、の基礎に沿って歩き始めた。私と芽はスマートフォンのライトで面を照らしながら、正の背を追う。 側の庭を抜け、普段はめったにがち入らない、の側の狭い通——隣との境界フェンスが迫る裏へと回り込んだ。
雑がまばらにえる暗がりに、の側壁に設置された古い栓(散用蛇)がある。
のついたスニーカーを洗ったり、に数回庭にをやったりするだけの蛇だ。
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