みかん小説
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"水を盗んだ隣人の末路" 第10話

庭全体から、植物が干からびていく独特の青臭く乾いた匂いが漂っていた。

私は恐怖を覚えた。 「あなた……やっぱり、警察か局を通じて、黒杉に連絡を入れた方がいいんじゃないかしら。あんなに価なが、本当に全部枯れてしまうわ……」

夜、実で正に相談すると、正は静かに首を横に振った。

紀、同するな。あいつは警察ので何と言った? 『を使って何が悪い、止めたら訴える』と俺たちを脅したんだぞ。業者にも確認したが、予定通り目に事をうのが全だ。に今、元栓をけてを供すれば、『やはりがあった』と揚げを取られかねない」

の言う通りだった。これはけをかける問題ではない。法と権利の徹な境界線の問題なのだ。

そして、運命の【目】。

朝から台の両がに到着した。 使用許証を掲示し、作業員たちがスコップとを使って、の敷内のを掘削していく。

「うわぁ……こりゃ酷いな」

掘り起こされたから姿を現した正分岐管を見て、現監督が吐き捨てるように言った。

「本管から分岐させた、逆止弁まで付けて隣の敷に引き込んでますよ。完全にプロのだ。奥さん、こんなの放置してたら、で何百万円分盗られてたか分かりませんよ」

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作業員のによって、正なT字継は完全に切断され、頑丈なしい本管へと取り替えられた。隣へと伸びていた黒い圧ホースは根元から引き抜かれ、鉛のキャップでに封印された。

事が完し、正ぶりにメーターの元栓を全にした。

の蛇から、勢いよく清らかなが噴きす。 台所も、呂も、トイレも、すべてが元通りになった。 しかし、フェンスの向こう側——黒杉の庭へと続く脈は、永久に断たれた。

事が終わった夕暮れ、私たちは母のから自宅へと完全に荷物を引き揚げてきた。 階のベランダから見ろした隣の庭は、もはや「緑の楽園」ではなかった。 かつて8000万円の価値を誇っていたという盆栽の群れは、の猛暑に焼かれ尽くし、茶く干からびた無惨な残骸となって、静まり返る夕ち尽くしていた。

黒杉達也がヨーロッパの遊から帰国したのは、発からが経過した、旬のうだるような暑さの午だった。

11過ぎ。 のリビングで麦茶をんでいた私のに、タクシーがするスキール音と、トランクを乱暴に閉める音が聞こえてきた。

「ハハハ! サンキュー!」

陽気な英語交じりの黒杉の声。 窓から覗くと、黒杉はイタリア製の仕ての良い麻のシャツを着て、こんがりと焼けし、両にはルイ・ヴィトンやグッチの袋をいくつも抱えていた。

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の豪遊と商談が、いかに満ちりたものであったかを全で誇示しているようだった。

タクシーがり、黒杉がい鉄製の内けて庭へとを踏み入れた。

その、わずかだった。

「……ぎゃあああああああああああああっっ!!!」

のものとはえない、喉をつ裂きにするような絶叫がの静寂を切り裂いた。

「嘘だろ!? おい! なんだこれはぁぁぁっ!!」

ガシャーン!と級ブランドの袋が面に叩きつけられ、免税で買った級ワインの瓶が割れる鈍い音が響いた。

私は正と顔を見わせた。正聞を置き、静かにがった。

「帰ってきたな」

「ええ……」

庭にてフェンス越しに様子を伺うと、そこには狂乱状態の黒杉の姿があった。 男は狂ったように盆栽の棚へ駆け寄り、茶く干からびた真柏の枝を掴んでは絶叫していた。

「あ、あああ……真柏が……! 葉が全部落ちてる……!? 葉松も……黒松も……全滅だ……! 嘘だろ、タイマーはどうした!? スプリンクラーは!?」

黒杉は散システムの制御盤にびつき、スイッチを何度も乱暴に叩いた。 パイプからは、カラカラという空虚な械音しか響かない。 男は面にいつくばり、に埋められていたはずの配管を掘り返そうとした。しかし、そこには側で完全に切断され、鉛のキャップで封印された黒いホースの残骸が虚しく転がっているだけだった。

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