みかん小説
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"水を盗んだ隣人の末路" 第13話

その損害賠償請求の総額は、実に

7800万円

に達していた。

もちろん、黒杉にそんな巨額の現括で支払える資力などあるはずもなかった。 彼の自宅と広には、即座に債権者たちによって仮差押えの登記が設定された。

さらに致命だったのは、業界内での「信用の完全な失墜」だった。 盆栽の世界は、や職のコミュニティが極めて狭く、報が瞬くに巡る。

『黒杉というブローカーは、顧客から額な管理料を騙し取りながら、代を惜しんで隣を盗んで散していた』 『その結果、を止められて預かり品を全滅させた』

この噂は、インターネットと業界を通じて瞬くに全国の盆栽園やバイヤーのるところとなった。 黒杉が運営していたウェブサイトは炎し、からの商談や注文はすべてキャンセルされた。彼がかけて築きげてきたという「国際派盆栽ディーラー」としてのキャリアは、わずかに完全に消滅したのだ。

旬、には黒杉の代理弁護士から本の話が入った。

これまでの盗被害に対するの差額分(約35万円)と、破壊されたダイヤルロック代、配管の修繕事費用(約18万円)、計53万円を満額支払うことで示談にしてほしいという申しだった。刑事告訴を取りげてもらうための、必の懇願だった。

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は弁護士ち会いのもとで示談にサインし、全額が以内に座へ振り込まれた。

そのの夜、久しぶりに平穏を取り戻した卓で、芽がしみじみと呟いた。

「ねえ、お母さん」

「何、芽?」

「黒杉さんって、結局何のためにあんなことしたんだろうね。たかがに何万円かの代をケチったせいで、何千万円もの借を背負って、仕事も信用も全部なくしちゃったんでしょ?」

が湯呑みを置き、く頷いた。

度でも『のものを掠め取って得をする』を覚えると、覚が麻痺してしまうんだろうな。あいつはを盗んでいたんじゃない。自分自の信用とを、しずつ削り取ってドブに捨てていたんだよ」

失われた8000万円の盆栽。 しかし、黒杉が本当に失ったのは、どんなを積んでも、どんなに量のを注いでも、度と元には戻らない「としての信用」だったのだ。

事件の決着からが過ぎた、旬。 の涼やかなが吹き抜け、の桜の葉が赤くづき始めた頃。

黒杉邸は、すっかり静まり返っていた。 枯れ果てた盆栽の残骸はすべて専業者によって撤され、庭に組まれていた巨な単管パイプの棚も解体されて更に戻っていた。扉には産会社の「売物件」の板が掲げられ、黒杉がこのいことを告げていた。

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そして——は、延期に延期をねていた「沖縄族旅」の発をに控えていた。

の会社からのの決算賞与と、私のパートの特別当、そして芽休みに郵便局でアルバイトをして貯めたおわせ、ついに分の旅費が完全に準備できたのだ。

「お母さん、しく買っちゃった!」

リビングで嬉しそうに荷造りをする芽の姿を見ながら、私は幸せを噛み締めていた。

ところが——発の。 ゴミしのために庭へた私は、息が止まるような景を目撃した。

栓のに、あの見覚えのある「緑のホース」が横たわっていたのだ。

「……っ!!」

臓が鐘を打った。 まさか、また……!?

「正さん! 正さん、来て!」

私の鳴のような呼び声に、正と芽が血相を変えてしてきた。

「どうした、紀!?」

「見、見て……ホースが……!」

構え、スマートフォンのカメラを構えながら慎に蛇づいた。 しかし、正は途でピタリとを止めた。

「……あれ?」

よく見ると、ホースはの蛇には繋がれていなかった。 ホースの先端は、蛇の横の敷に、まるで供え物のように静かに置かれているだけだった。は流れていない。

「どういうこと……?」

私たちが困惑していると、境界フェンスの向こう側の茂みから、ガサリと音がした。

黒杉だった。

その姿を見た瞬、私はわず息を呑んだ。

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