"桜袴の女組長" 第8話
「承しました」
黒たちは静かにへ戻っていく。
エンジン音が響き、黒塗りのがをていった。
私は結のを握った。
「結、丈夫よ。もう誰もあなたを傷つけたりしないから」
結は涙を浮かべながら頷いた。
「お母さん、ありがとう」
さな声で言う。
私は娘を抱きしめた。
「お母さんは、いつでもあなたを守るから」
そして私たちは、に向かって歩き始めた。
桜ののをゆっくりと。
ろから、まみれの礼子が泣きじゃくる声が聞こえる。社が妻を叱りつける声も聞こえる。
でも、私は振り返らなかった。
ただを向いて歩いていく。
娘のを握りながら。
のが、優しく吹いていた。
をるまで、私は度も振り返らなかった。
背ではまだ、礼子の泣き声が聞こえていた。社が妻を叱りつける声、保護者たちがひそひそと囁く声、先たちが戸惑いながらを収めようとする声も、のに混じってへ届いていた。
けれど、私はを止めなかった。
結のさなを握り、ゆっくりと桜並のを歩いた。破れた袴の袖がに揺れるたび、裂けた布の先が腕に触れた。痛みはない。それでも胸の奥が、静かに疼いた。
母が夜なべをして仕ててくれた袴。
成式の、母はもう病院のベッドから起きがることも難しくなっていた。
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それでも私が袖を通した姿を見ると、細くなったを伸ばして、泣きそうな顔で笑ってくれた。
「似ってるよ、美咲」
あの声をいすと、今でも胸が詰まる。
その切な形見を、礼子は笑いながら引き裂いた。しかも、母のことまで侮辱した。娘の結ので、父親がいないことまで嘲った。
それでも私は、暴力を振るわなかった。
黒たちを呼んだ。名刺をした。建設の真実を告げた。礼子がどれだけ自分のを勘違いしていたのか、それを本と周囲に分からせただけだった。
母が言っていた「としての筋」。
それを、私は守ったつもりだった。
「お母さん」
隣からさな声がした。
私はを止め、結を見ろした。
結はまだ目を赤くしていた。けれど、さっきまでの震えはし収まっている。真しいランドセルを背負ったさな背が、ののでし頼りなく見えた。
「なあに?」
私がしゃがむと、結は私の袴の袖をそっと見た。
「破れちゃったね」
「そうね」
「おばあちゃんが作ってくれた、事なものなんでしょ?」
その言葉に、私は胸が痛んだ。
結には詳しい事をすべて話しているわけではない。けれど、この袴が私にとって特別なものだということは、何度か話していた。入学式にはこれを着ていきたいと私が言った、結は目を輝かせて「きれい」
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と言ってくれた。
その結に、破れた姿を見せてしまった。
私は結の髪をそっと撫でた。
「丈夫よ。きっと直せるわ」
「本当に?」
「ええ。お母さんのっているたちに、腕のいい職さんがいるの」
結はしだけしたように頷いた。
けれどすぐに、またそうな顔になる。
「お母さん、さっきの黒いのたち……怖い?」
私はすぐには答えられなかった。
黒たちは確かに、普通の保護者が見れば怖いに見えるだろう。黒いスーツ、鋭い目、無駄のないき。あのにいたたちが息を呑んだのも無理はない。
けれど、結にはまだ、組織のことを話すつもりはなかった。
健太との約束がある。
「美咲、結を普通の子として育ててやってくれ」
その言葉を、私はずっと守ってきた。
私は結の目を見て、ゆっくり言った。
「お母さんを助けてくれるたちよ」
「お母さんの友達?」
「そうね。昔から、お母さんを支えてくれているたち」
嘘ではなかった。
黒は、私がどんなでも支えてくれた。組織のとしてだけではなく、私の覚悟を理解してくれる部でもあった。
結はそれ以聞かなかった。
ただ、さく頷いて、私のを握り直した。
「お母さん、怖かった?」
「しだけね」
「ゆいも怖かった」
「ごめんね。結の入学式なのに、怖いいをさせて」
私は結を抱き寄せた。
結は私の胸に顔を埋め、さな声で言った。
「でも、お母さんが守ってくれたから丈夫」
その言に、私は涙がそうになった。
私は裏ので何度も修羅をくぐってきた。
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