"消された登山日誌" 第10話
頂で。もっと緒に登をしませんか、と」
「それで田さんは」
「断られました。丁寧に。しかし、はっきりと。族がいるからできないと」
佐藤刑事は頷いた。
「それであなたはどういましたか」
本は俯いた。
「恥ずかしかったです。惨めでした。でも、それだけです。それで終わりです」
佐藤刑事は静かに尋ねた。
「本当にそれだけですか」
本は頷いた。
「はい。その、気まずい雰囲気でしました。そして田さんが方になった。それが真実です」
佐藤刑事は本の目を見つめた。
「本さん、もう1度、現を確認したいといます。緒に来ていただけますか」
本は揺した。
「現に……でも、もう13ものことで」
「記憶をたどりたいんです。協力してください」
数、佐藤刑事と本、そして捜査員たちは青峰へ登った。
13ぶりに、あの所へ。
本は震えるで登を歩いた。々はあのと同じようにに揺れていた。岩も、も、何も変わっていないように見えた。
佐藤刑事は尋ねた。
「田さんが最に見えた所はどこですか」
本は険しい岩の区を指差した。
「この辺りです。ここで姿が見えなくなりました」
佐藤刑事は周囲を調べた。
「ここから滑落したとしたら、どの方向に落ちますか」
本はの方を指した。
「あちらです。いになっています」
捜査員たちはを調べ始めた。
広告
13には見つからなかった所。が茂り、岩がなり、が入らない所。
そして、ある捜査員が叫んだ。
「こっちです。何かあります」
佐藤刑事と本が駆け寄った。
茂みの奥、きな岩の。そこには古びたリュックサックがあった。
そしてそのくに、い骨が横たわっていた。
佐藤刑事は本を見た。
本の顔は蒼だった。
「本さん、これは」
本は何も言えなかった。ただ、そのにち尽くしていた。
佐藤刑事は静かに言った。
「本さん、正直に話してください。本当は何があったんですか」
本の目から涙が溢れた。
13閉じ込めてきたが、堰を切ったように溢れした。
本はそのに膝をついた。
そして震える声で言った。
「私がやりました。田さんを……押しました」
佐藤刑事は静かに頷いた。
「詳しく話してください」
本は涙を流しながら、全てを語り始めた。
頂で恵子に気持ちを伝えたこと。恵子に拒絶されたこと。恥ずかしさとりで理性を失ったこと。の岩で、恵子を崖から押したこと。
底へり、恵子のを確認したこと。
遺体とリュックを茂みの奥へ隠したこと。
そして13、嘘をつき続けたこと。
本浩司はそので逮捕された。
13隠し続けた真実が、ついにらかになった瞬だった。
発見された遺骨は、科学捜査研究所で鑑定された。
広告
骨の状態、歯の治療痕、残されていた品々。それらは田恵子のものと致した。
佐藤刑事は誠に連絡した。
話で、佐藤刑事の声はかった。
「田さん、奥様が見つかりました」
誠はしばらく言葉を失った。
13、待ち続けたらせだった。
しかし、それはしい真実でもあった。
誠と美穂は警察署を訪れた。
美穂は28歳になっていた。母がいなくなったの齢より、ずっとになっていた。それでも警察署の廊を歩く取りは、15歳の女に戻ったように震えていた。
佐藤刑事から事件の詳細を聞いた。
本が自したこと。
恵子が拒絶した、衝に押されたこと。
そして13、本が嘘をつき続けていたこと。
美穂は涙を流しながら言った。
「信じていたのに。本さんを、お母さんを守ってくれただとっていたのに」
誠は拳を握りしめた。
「許せない」
その声は震えていた。
しかし、誠はすぐに目を閉じた。りだけではなく、胸の奥から込みげるものがあった。
「でも、妻が戻ってきた。それだけでも……」
恵子の遺骨は、族の元に戻った。
13ぶりの帰郷だった。
誠と美穂は自宅の仏壇に遺骨を置した。仏壇には、恵子が頂で笑っている写真が置かれた。
美穂は遺骨のに座り、静かに語りかけた。
「お母さん、やっと帰ってきたね。かった。本当にかった。
でももう丈夫。ゆっくり休んでね」
誠はその隣で、黙ってをわせていた。
台所には、かつて恵子がっていた頃と同じように、噌汁の匂いが漂っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
15年後に消えた罪
1984年、東京・世田谷の古い木造住宅で起きた火災。 亡くなったのは、72歳の老人・近藤商司だけではなかった。 焼け跡から見つかったもう一人の女性の遺体は、なぜか新聞紙に包まれ、灯油の痕跡まで残されていた。 当初、事件は老人と介護士の間で起きた悲劇として処理された。 しかし15年後、古い書類に残された一つの署名と、焼け跡に残された小さな証拠が、隠され続けた真実を再び動かし始める。 消えた500万円。 偽造された署名。 そして、誰も疑わなかった親族の存在。 長い年月を経て明らかになった、静かな住宅街の奥に隠された衝撃の真相とは――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 141 -
完結第11話
地下室に消えた名前
旧精神療養所の解体前調査で発見された、図面には存在しない地下室。 そこには、番号だけを付けられた6人分の遺骨と、半世紀前に消された人々の記録が残されていた。 かつて「自死」と処理された女性たちは、本当に自ら命を絶ったのか。 調査を進める刑事たちは、古いカルテ、残された手紙、そして元医師の告白から、病院の地下に隠されていたもう一つの歴史へたどり着く。 しかし、そこにあったのは単なる事件の真相ではなかった。 名前を奪われ、声を失った人々と、長年沈黙を守り続けた社会の記憶だった――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 94 -
完結第13話
嘘葬りの豆腐店
1991年、茨城の古い商店街で、豆腐屋の嫁・美香が突然姿を消した。 姑と夫が語ったのは、「男を作って夜逃げした」という話。幼い息子を置いて消えた母親として、美香の名は商店街で長く汚され続けた。 しかし6年後、借金による強制執行で高橋豆腐店が取り壊されることになる。誰も近づこうとしなかった裏手のボイラー室。そのコンクリートを掘り返した時、そこから現れたのは、色褪せたスカーフと小さな金の指輪だった。 男と逃げたはずの嫁は、なぜ自宅の床下にいたのか。 そして家族は、6年間何を隠し続けていたのか。 雨の夜に消えた母の名誉を取り戻すため、古い商店街の沈黙が少しずつ崩れ始める。ミステリー|行方不明1.9萬字5 13 -
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 9 -
完結第13話
長野中部山岳紅葉山カップル失踪事件
2019 年 10 月、韓国束草・雪岳山で忽然と姿を消した 20 代の恋人カップル。 山の監視カメラに最後の後ろ姿を残し、それきり跡形もなく消えてしまった二人。 大規模な山間捜索を何度も行ったものの、衣類の切れ端一つ見つからず、3 年間も謎のまま放置されていたこの失踪事件。 3 年後、排水溝の底から発見された一台の携帯電話。 本体に復元された記録の中に、たった 9 秒(原文 6 秒調整可)の謎の通話履歴が残っていたのです。 撮影した第三者の姿は監視カメラにも目撃談にも一切残らず、臨時インターネット電話番号からかかってきた不可解な電話。 通話直後、二人のスマホが同時に電源オフになる不可解な記録。 リュックの隠しポケットから出てきた手描き地図と謎のメモ「ここへ行けばある。17 時 25 分より前に渡るな」。 警察が調べても特定できない撮影者、地図に載っていない危険な山道、時系列が繋がる不自然な証拠たち… 長野(原文韓国束草に統一)の山に隠された、誰も想像できない真相とは? 年配の方も分かりやすく時系列順に整理した事件全貌、今すぐ全文を読んでみてください。真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 12 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 9