"断髪新郎の逆転婚礼" 第7話
「気にするなよ」
兄は真剣な声で続けた。
「俺たちの式にはおが必なんだ。おがいたから、俺と美紀の今がある」
また同じ言葉だった。
私は理由を尋ねようとしたが、健太は会の方を指差した。
「それも今分かるよ。面いもの見せるから、席で待ってろ」
「美紀さんもサプライズがあるって言ってた」
「そうか」
「初めての共同作業?」
「まあ、そんなところだな」
「普通はケーキカットじゃないの?」
「それは見てのお楽しみ」
兄はそう言い残し、郎控へ戻っていった。
私は親族席へ座った。
向かい側にいる礼子さんは私を見つけると度睨んできたが、もなく照が落ちたため、それ以何も言ってこなかった。
「それでは皆様、入にご注目ください。郎婦のご入です」
司会者の声と同に扉へが当たった。
いウェディングドレスの美紀さんと、タキシード姿の健太が現れる。
会からきな拍が起こった。
2は笑顔で会を歩き、砂席へ向かった。
披宴が始まると、最初に司会者が料理について紹介した。
「本のお料理は、郎である川崎健太さんの監修となっております。何を隠そう、郎は当ホテルのシェフでございます」
会から驚きの声ががった。
兄が料理として働くホテルを、そのまま披宴会に選んだのだ。
運ばれてくる料理は、どれも見た目から美しかった。
広告
「すごい。さすがシェフだね」
「これ本当に美しい」
あちこちから嘆の声が聞こえてきた。
披宴はやかにみ、盤に入った。
やがて会が再び暗くなり、きなスクリーンへ兄と美紀さんのプロフィール映像が映しされた。
幼い頃の写真。
学代。
社会になってから。
2が会い、親しくなっていくまで。
懐かしい兄の写真がるたび、私は両親のことをいした。
そして映像が終わると、司会者がるい声を響かせた。
「それではここで、郎婦による初めての共同作業をご披いただきます」
会がざわついた。
私も当然、ウェディングケーキが運ばれてくるのだとった。
しかし司会者は続けた。
「通常でしたら、ここでウェディングケーキへのファーストカットとなります。しかし、このお2のはし違います」
会の線が兄たちへ集まった。
「それでは郎婦のお2、ご準備をお願いします」
健太と美紀さんがちがった。
スタッフがスクリーンへ子を置く。
そこへ兄が座った。
美紀さんはその首へケープを巻いた。
私は首を傾げた。
そして美紀さんがにしたものを見て、わず目を見いた。
バリカンだった。
「ちょっと!」
きな声をげたのは礼子さんだった。
「あなたたち何をするの? 美紀、それ何?」
美紀さんは母親を見て、にっこり笑った。
広告
「もちろんファーストカットよ」
「ファーストカット?」
「だって私は美容師でしょう?」
美紀さんはバリカンを持ちげた。
「美容師のファーストカットなら、やっぱり髪を切らなくちゃ」
招待客のにいた美容師仲らしいたちから歓声ががった。
「いいぞ、美紀!」
「やっちゃえ!」
美紀さんは楽しそうに笑い、兄の髪へを添えた。
「これからを共にする切なの髪を、妻になって初めて切りたいといます」
バリカンのスイッチが入った。
い械音が会に響く。
美紀さんはためらうことなく、兄の側の髪へバリカンを入れた。
黒い髪がまとまってへ落ちる。
「うわっ」
「本当にやった!」
会が気に盛りがった。
兄は楽しそうに笑ったまま座っている。
美紀さんはの周りから部へ、際よくバリカンをかしていった。
そして側がある程度くなったところで、突然を止めた。
「ここからは、もう1伝ってもらいたいがいます」
私は何となく嫌な予がした。
美紀さんは会を見渡し、私の方を見た。
「これから私の義理の妹になる、彩佳さん。こちらへお願いします」
「え?」
周囲の線が斉に私へ向いた。
私は戸惑いながらちがり、兄の隣へ向かった。
「私も?」
「健太さんの髪、切ってみて」
「やったことないよ」
「丈夫。私が教えるから」
美紀さんは私へバリカンを渡した。
そして今度は司会者からマイクを受け取った。
「皆さんに紹介したいがいます」
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
退職届を出した夫が、最後の会議で暴いた妻社長の嘘
3年前。 妻・美穂が経営する会社で働いていた健二は、突然退職届を提出した。 理由は、妻の秘書・田中から告げられた一言だった。 「空気を読んで、自分から辞めてください」 愛する妻の会社で、自分だけが邪魔な存在になっていた。 しかし美穂は、田中との関係を否定し続ける。 「彼とは同僚としての関係しかない」 健二が信じていた3年間の結婚生活は、少しずつ崩れていた。 だが退職の日、健二はさらに恐ろしい事実を知る。 自分を追い出すために仕組まれた偽のセクハラ告発。 消された顧客情報。 そして、妻と秘書が隠していた本当の目的。 追い詰められた健二は、最後に残された証拠を手に取る。 音声記録。 社内システムの履歴。 競合会社との裏取引。 すべてを明らかにする場所は――妻の昇進をかけた役員会議だった。 そこで暴かれる、愛していた妻の裏切り。 10年間支えてきた会社も、信じ続けた夫婦の絆も、一瞬で崩れ去る。 そして健二は、何も奪わず、ただ一言だけ告げる。 「もう、昔の俺には戻れない」修羅場2.0萬字5 36 -
完結第13話
10年契約の果てに消えた夫
10年前。 事故で妻と娘を失ったタケシの前に、謎のシステムが現れた。 「別の世界で10年間、ユキとその娘に寄り添えば、失った家族を復活させる」 愛する家族を取り戻すため、タケシは契約を受け入れた。 そして彼は、ユキと幼いヒメのために、すべてを捧げる10年間を過ごした。 しかしユキが愛していたのは、タケシではなく、かつて自分たちを捨てた初恋の相手・シャオだった。 タケシは夫ではなく、都合のいい存在として扱われ続ける。 残り7日で任務が終わる日。 シャオが戻ってきたことで、タケシの最後の居場所は完全に奪われた。 そして彼は、10年間守り続けた家族からも、最後まで信じてもらえなかった。 やがて任務を終えたタケシは、すべてを捨てて元の世界へ帰る。 数年後、真実を知ったユキとヒメは、初めて彼がどれほど傷ついていたのかを理解する。 だが――。 もう彼の隣には、二度と離したくない本当の家族がいた。 10年間の犠牲は愛だったのか。 それとも、ただ失った家族を取り戻すための契約だったのか。修羅場1.9萬字5 18 -
完結第11話
追い出された私が離婚届を渡した日、夫の人生は崩れ始めた
新築の我が家に突然押しかけてきた義両親一家。 七人もの親族に家を占領され、家事も生活費もすべて押し付けられる日々。さらに夫・進は「養ってやっている」と私を見下し、ついには「お前は赤の他人だ」と言い放った。 限界を迎えた私は、静かに離婚届を差し出す。 しかし、彼らはまだ知らなかった―― 私が本当に失うものなど何もないことを。 そして、夫が隠していた重大な秘密と、一族を待ち受ける衝撃の結末を……。 これは、踏みにじられた妻が、自分の人生を取り戻すまでの逆転劇。兄弟姉妹|嫁姑1.7萬字5 119 -
完結第16話
閉ざされた玄関の暗証番号
田園調布の豪邸で暮らす田中勇気と妻・桜。勇気は一人暮らしになった母・澄子を思い、妹の弓とともに同居を始める。しかし、その優しさは次第に家族の境界線を曖昧にしていった。 勇気が海外出張中、桜は高熱で倒れながらも義母の来客対応を強いられる。初めて「できません」と拒んだ彼女に、澄子は怒りを募らせ、桜本人の意思を無視して荷物をまとめ、家から追い出してしまう。 夫に心配をかけまいと黙って耐える桜。しかし異変を感じた勇気は急いで帰国し、隠されていた真実を知る。 妻を守れなかった自分の過ち、そして母が家族への感謝を「支配する権利」と勘違いしていたことに気づいた勇気は、家族の在り方を見直す決断をする。 本当の家族とは何か。愛情と依存の違いを描く、再生と絆の物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4萬字5 13 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 66 -
完結第12話
一万八千円の飯
自分の家族が経営する5つ星ホテルで、何気なく注文した一品の炊き込みご飯。 メニューでは1,800円に見えたはずなのに、会計明細には「18,000円」と記されていた。 帰国したばかりの後継者・小川優馬は、単なる表示ミスだと思い責任者を呼ぶ。だが、レストラン責任者は「社長が承認した価格です」と言い切った。 父が守ってきたホテルで、なぜ一杯のご飯が10倍の値段になっているのか。 優馬が調べ始めると、異常な価格変更、不可解な仕入れ、法人客への不自然な請求、そして継母・里見の影が浮かび上がっていく。 やがてその小さな違和感は、20年前に亡くなった実母・秋子の死、奪われた母方の財産、腹違いの弟の秘密、そして恋人だと思っていた女性の正体へとつながっていく。 始まりは、たった一杯の炊き込みご飯だった。 だが、その18,000円の明細は、運海ホテルに隠された20年越しの闇を開く鍵だった――。因果応報|修羅場1.7萬字5 0 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 2 -
完結第13話
消えた託児代7万円
2001年、東京の外れにある義実家で暮らす保育士のゆいは、夫の妹・安奈から何度も娘の子守りを押しつけられていた。 「保育士でしょ?」 「家族なんだから」 「今日だけお願い」 そう言われるたび、ゆいは仕事帰りに1歳のクレアを風呂に入れ、寝かしつけ、夜泣きにも起きてきた。けれど夫も義母も、それを“当然の手伝い”としか見ていなかった。 ある朝5時半、安奈は39度の熱を出したクレアを抱えて現れる。 「娘の子守りよろしく」 仕事を理由に断ろうとするゆいへ、夫は笑って言った。 「保育士なんだから慣れてるだろ。ケチくさいこと言うなよ」 その一言で、ゆいの中で何かが切れた。 なぜ安奈は、そこまで頻繁に娘を預けていたのか。 なぜ“仕事”と言って家を空ける日が増えていたのか。 そして、クレアの父親だけが知らなかった事実とは――。 便利な保育士として扱われ続けた嫁が、初めて「無理です」と告げた日、義家族の隠された嘘が静かに崩れ始める。兄弟姉妹|夫婦1.9萬字5 8 -
完結第12話
桜袴の女組長
娘の入学式の日、シングルマザーの水島美咲は、校門の前でボスママ・霧谷礼子に袴を引き裂かれた。 それは、亡き母が一針一針仕立ててくれた大切な形見だった。さらに礼子は、娘の前で父親のいない家庭を嘲り、母の思い出まで踏みにじる。 美咲はただ黙って耐えていた。 娘の晴れの日を壊したくなかったから。 しかし、礼子が最後の一線を越えた時、美咲は静かにスマートフォンを取り出す。 5分後、校門前に次々と黒塗りの車が現れた。 誰も知らなかった。 この“貧しいシングルマザー”と見下された女に、学校中が凍りつくもう一つの顔があることを――。修羅場1.8萬字5 4 -
完結第12話
家賃55万の置き土産
夫の家族と13年間暮らしてきたまゆ子は、ある日突然、義母から告げられる。 「里帰り出産で長男夫婦が来るから、あなたは明日までに出ていって」 家族のために尽くしてきたはずだった。血のつながらない息子にも、義母にも、夫にも、ずっと気を遣ってきた。けれど義母にとって、まゆ子はもう“用済み”の存在でしかなかった。 しかも夫は出張と偽り、別の女性と会っている疑いまで浮かび上がる。 翌日、まゆ子は言われた通り家を出ることにした。 ただし、何もかも置いていくつもりはなかった。 月55万円の家賃を払っていたのは誰なのか。リビングを埋める家具家電を買ったのは誰なのか。 まゆ子が引っ越し業者に告げた一言で、義母たちの“幸せな同居計画”は静かに崩れ始める――。兄弟姉妹|親子関係1.8萬字5 1