"湖底の白衣" 第2話
部に争った様子はなかった。
ベッドはきれいにえられていた。
はクローゼットに掛けられ、医学は本棚へ並び、台所にも特別変わったところはない。
しかし林は、部を見れば見るほど奇妙な覚に襲われた。
活が突然途切れたというより、あまりにもいすぎていた。
「先……本当に帰ってくるつもりだったのかな」
林がわず呟くと、伯母は振り返った。
「どういう?」
「分かりません。でも、何か……」
言葉にすることができなかった。
ただ、その部には翌もここで活するの気配が、妙にかった。
翌朝になっても、田恵美子は帰らなかった。
伯母は警察へき、方者届を提した。ところが当初、対応した警察官は事件性をく疑ってはいなかった。
「成女性ですからね。何か事があってかけている能性もあります」
「でも、仕事を途で放りすような子ではありません」
伯母はく訴えた。
「患者さんを待たせたまま消えるなんて、絶対にしません」
林も同じだった。
「先は無断で休んだことさえありません。何かあったに決まっています」
族と同僚のい望を受け、警察もしずつ恵美子の取りを追い始めた。
まず確認されたのは、彼女がクリニックをるににした「急な往診」だった。
警察は予約表を調べ、クリニックへ連絡してきた患者を確認した。
広告
しかし、そこで最初のきな疑問が浮かんだ。
そのの午、恵美子へ往診を依頼した患者は1もいなかった。
普段訪問していた齢患者にも聞き取りがわれた。
「先を呼んでいません」
「そのはにいましたが、来ていませんよ」
誰も恵美子を呼んでいなかった。
つまり、恵美子は林に嘘をついてクリニックをたことになる。
なぜだったのか。
誰かに呼びされたのか。
それとも、自分から仕事をれる理由が必だったのか。
警察は恵美子の活を詳しく調べ始めた。
すると、周囲がらなかったがしずつ見えてきた。
まず座だった。
恵美子は失踪の数かに、それまでほとんどしなかったきな現の引きしを何度かっていた。
預残はきく減っていた。
さらにアパートのは、恵美子から奇妙な相談を受けていた。
「しに、契約を途で終わらせるはどうなるかと聞かれました」
「引っ越すと言っていたんですか?」
「いいえ。そこまでは。ただ、急に部をるの続きだけ聞かれました」
結局、解約続きはされていなかった。
最も気が悪かったのは、夜の話だった。
隣たちは11から12にかけて、夜や朝に恵美子の部の話が鳴ることが増えていたと話した。
当のアパートは壁がかった。
広告
話にた恵美子が、さな声で誰かと話しているのが聞こえることもあった。
会話はいつもかった。
ある隣が廊で会った、何気なく尋ねたことがあった。
「最、夜によく話が鳴ってますね。変ですね」
その瞬、恵美子はし張った笑みを浮かべた。
「医療の相談なんです。急なことがありますから」
そう答えたものの、すぐに話題を変えたという。
クリニックの同僚にもい当たることがあった。
失踪の数週、恵美子は以より落ち着かなくなっていた。
診察のに計を見る。
話が鳴ると、瞬肩を震わせる。
何もないに考え込んでいる。
だが患者が診察へ入ってくると、すぐにいつもの笑顔へ戻った。
「疲れているんだろうとっていました」
林はにそう話した。
「患者さんのでは、本当にいつもの先だったんです」
捜索は全国へ広げられた。
恵美子の写真が駅や商に貼られ、聞やテレビも事件を取りげた。
「京の女医、突然の失踪」
そんな見しが並んだ。
札幌で見たという報。
州へ向かうに乗っていたという証言。
方の病院で働いているという話。
本から報が寄せられた。
警察は1つずつ確認したが、そのほとんどが違いだった。
そして、もう1つなものが消えていた。
のトヨタ・コロナ。
恵美子がクリニックから乗ってただった。
警察はナンバーと種を全国へ配した。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
15年後に消えた罪
1984年、東京・世田谷の古い木造住宅で起きた火災。 亡くなったのは、72歳の老人・近藤商司だけではなかった。 焼け跡から見つかったもう一人の女性の遺体は、なぜか新聞紙に包まれ、灯油の痕跡まで残されていた。 当初、事件は老人と介護士の間で起きた悲劇として処理された。 しかし15年後、古い書類に残された一つの署名と、焼け跡に残された小さな証拠が、隠され続けた真実を再び動かし始める。 消えた500万円。 偽造された署名。 そして、誰も疑わなかった親族の存在。 長い年月を経て明らかになった、静かな住宅街の奥に隠された衝撃の真相とは――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 131 -
完結第11話
地下室に消えた名前
旧精神療養所の解体前調査で発見された、図面には存在しない地下室。 そこには、番号だけを付けられた6人分の遺骨と、半世紀前に消された人々の記録が残されていた。 かつて「自死」と処理された女性たちは、本当に自ら命を絶ったのか。 調査を進める刑事たちは、古いカルテ、残された手紙、そして元医師の告白から、病院の地下に隠されていたもう一つの歴史へたどり着く。 しかし、そこにあったのは単なる事件の真相ではなかった。 名前を奪われ、声を失った人々と、長年沈黙を守り続けた社会の記憶だった――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 79 -
完結第13話
嘘葬りの豆腐店
1991年、茨城の古い商店街で、豆腐屋の嫁・美香が突然姿を消した。 姑と夫が語ったのは、「男を作って夜逃げした」という話。幼い息子を置いて消えた母親として、美香の名は商店街で長く汚され続けた。 しかし6年後、借金による強制執行で高橋豆腐店が取り壊されることになる。誰も近づこうとしなかった裏手のボイラー室。そのコンクリートを掘り返した時、そこから現れたのは、色褪せたスカーフと小さな金の指輪だった。 男と逃げたはずの嫁は、なぜ自宅の床下にいたのか。 そして家族は、6年間何を隠し続けていたのか。 雨の夜に消えた母の名誉を取り戻すため、古い商店街の沈黙が少しずつ崩れ始める。ミステリー|行方不明1.9萬字5 13 -
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 9 -
完結第13話
長野中部山岳紅葉山カップル失踪事件
2019 年 10 月、韓国束草・雪岳山で忽然と姿を消した 20 代の恋人カップル。 山の監視カメラに最後の後ろ姿を残し、それきり跡形もなく消えてしまった二人。 大規模な山間捜索を何度も行ったものの、衣類の切れ端一つ見つからず、3 年間も謎のまま放置されていたこの失踪事件。 3 年後、排水溝の底から発見された一台の携帯電話。 本体に復元された記録の中に、たった 9 秒(原文 6 秒調整可)の謎の通話履歴が残っていたのです。 撮影した第三者の姿は監視カメラにも目撃談にも一切残らず、臨時インターネット電話番号からかかってきた不可解な電話。 通話直後、二人のスマホが同時に電源オフになる不可解な記録。 リュックの隠しポケットから出てきた手描き地図と謎のメモ「ここへ行けばある。17 時 25 分より前に渡るな」。 警察が調べても特定できない撮影者、地図に載っていない危険な山道、時系列が繋がる不自然な証拠たち… 長野(原文韓国束草に統一)の山に隠された、誰も想像できない真相とは? 年配の方も分かりやすく時系列順に整理した事件全貌、今すぐ全文を読んでみてください。真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 12 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 9