みかん小説
本棚

"朝5時の鬼電話" 第2話

「実は、お母さんから話で……」

これまで言われた内容をかいつまんで説する。

輝の表から、寝起きの柔らかさが消えた。

「スピーカーにして」

「え?」

「俺も聞く」

私は言われた通りスピーカーモードに切り替えた。

輝は娘を胸に抱き、いつもよりい声で言った。

「おはよう、母さん。輝だけど」

輝……」

「今の話、もっと詳しく聞かせてくれ」

は落ち着いている。

だが私は、輝の声の奥にりがあることをっていた。

京子もそれをじ取ったのか、先ほどより慎調で話し始めた。

「ご所さんから聞いたのよ」

「何を?」

「あなたの奥さん、夜遊びしてるって。男と歩いてたり、朝帰りしてたりするって」

私と輝は顔を見わせた。

「1が言ってるんじゃないのよ。何か見たがいるの」

「何か?」

「そうよ。向さんと顔見りのたちよ。だから見違いなんかじゃないわ」

輝は娘の背をゆっくり叩きながら、眉に皺を寄せた。

「母さん」

「何?」

向は毎晩ここにいる」

京子が黙る。

「夜授乳だってあるし、毎朝俺よりく起きて弁当を作ってくれてる。夜遊びするなんてどこにあるんだよ」

「でも……」

「それに、向が夜にいたことは俺が証できる」

京子はますます混乱したようだった。

「じゃあ、ご所さんが嘘ついてるっていうの?」

輝はすぐには答えなかった。

広告

私たちは結婚した、義実所にも挨拶している。義実とうちはで30分ほどしかれていないため、活圏がなるがいても議ではなかった。

だからこそ、余計に気が悪かった。

輝はしばらく考えた、はっきり言った。

「確認したいことがある」

「何?」

「今、そっちにく」

その声を聞いた瞬、私は嫌な予を覚えた。

輝には、何か当たりがある。

そんな気がした。

 

義実へ向かうまでにはがあった。

まだ朝6にもなっていない。いくら「今く」と連絡しているとはいえ、朝くから突然押しかけるのは非常識だ。

私は作りかけだったお弁当のおかずを朝用にアレンジしながら、どうしてこんなことになったのか考えていた。

輝との結婚活は、なくとも私にとってはとても穏やかなものだった。

私は向、28歳。

2歳の夫、輝と2に結婚し、今は6かの娘と3で暮らしている。

学卒業、私はさなでキッチンスタッフとして働いていた。

決してではなかったが、所では料理がおいしいと評判で、常連客もかった。オーナー夫婦も気さくなで、私はそこで料理をすることが本当に好きだった。

輝と会ったのも、そのだった。

輝はくにある企業へ勤めていた。

学を卒業し、誰もが名っている会社へ就職。

広告

かられば、世で言う「ハイスペック男子」だったらしい。

けれど初めて会ったの私は、そんなことをらなかった。

雑誌でが紹介された直のある昼。

客が気に押し寄せ、厨だけではりなくなった私は、ホールの伝いまでしていた。

たまたま輝のテーブルに、私が作った料理を運んだ。

「お待たせしました」

皿を置いた瞬輝は嬉しそうにわせた。

「いただきます」

そして

次の瞬きく目を見いた。

「何これ。めっちゃうまい」

あまりに素直な反応で、料理を運んだ私の方が驚いた。

緒にいた同僚らしい男性が、

「え、マジ? ちょうだい」

と箸を伸ばす。

すると輝は皿を自分の方へ引き寄せた。

「やだ」

「何でだよ」

「俺のだから」

「子供かよ」

そんなやり取りを見て、私はわず笑ってしまった。

お昼のピークが過ぎた頃、輝が会計へ来た。

「すみません」

「はい」

「あの、俺が頼んだ料理作ってくれたって誰ですか?」

「あ、それなら私です」

輝はし驚いた、照れたように笑った。

「やっぱり。すごくおいしかったです」

「ありがとうございます。すごくいい反応でべてくれてたので、作った方としても嬉しかったです」

私もつられて満面の笑みになった。

それが最初だった。

輝はその、頻繁にへ来るようになった。

昼休み。

仕事帰り。

には同僚と、には1で。

「最、あの会社のお兄さんよく来るね」

仕込みをしていた、オーナーの奥さんがありげに笑った。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: