"一万八千円の飯" 第6話
社をる直、父が背へ声をかけた。
「優馬」
「何だ」
「おはより優秀だ」
父から弟と直接比較されたのは、それが初めてだった。
社をてしばらくすると、優馬のスマートフォンへらない番号からメッセージが届いた。
――首を突っ込まない方がいい。おのためにならないぞ。
誰かが、すでに優馬のきをっている。
そしてロビーへ戻ると、例のがチェックインを済ませていた。
40代半ほどで、背はいが体格が良く、腕には派な計。隣には若い女性を連れていた。
宿泊はプレジデンシャルスイート。
費用は全て、ホテル購買部の接待交際費。
予約者は里見剛。
つまりホテルの購買部が、自分たちの納入業者をホテルので接待している。
しかもはそのの夕に、例の18,000円の炊き込みご飯をわざわざ指定して予約してきた。
「帆をめに」
スタッフからその話を聞き、優馬は目を細めた。
ただの事ではない。
にとって、この料理そのものが何らかの利益とつながっている。
優馬は購買データへアクセスした。
の会社は、そのの3からホテルへ帆を納入していた。
それ以、約10取引していた元業者より、仕入れ価格が約40%い。
500gで12,000円。
料理杯に使われる帆が約50gなら、原価は1,200円程度。
米、卵、調料、件費を加えても、原価は1,800円をきく超えない。
広告
販売価格18,000円。
そのうえ、仕入れ側でも価格以の額がいている。
優馬のでつの仮説が来がった。
ホテルが額で料理を売る。
の会社から値で材を買う。
そこでまれたの部が、購買部へ戻る。
もしそうなら、利益が循環する仕組みができている。
昼、腹違いの弟・から話が入った。
「兄貴、聞いたよ。18,000円のご飯ったんだって?」
いつもの軽な声だった。
は22歳。
財務部に所属していることになっているが、に数えるほどしか社しない。級を乗り回し、夜遊びをしている、絵に描いたような御曹司だと周囲からわれていた。
「は悪くなかったよ」
優馬が適当に返すと、は笑った。
「俺なら飯に2,000円以さないけどな」
話を切ろうとしたところで、優馬はいついたように聞いた。
「そういえば、お応財務部だよな」
「応って何だよ」
「最、購買部の接待費が増えてるとか、変な噂は聞いてないか」
話の向こうが静かになった。
ほんの数秒。
だが、優馬はその変化を聞き逃さなかった。
「兄貴」
の声から、ふざけた調子が消えた。
「忠告しておく。首を突っ込まない方がいい」
「どういうだ」
「うちののこと、兄貴がらないことなんてほどあるんだから」
それだけ言って、話は切れた。
その夜、優馬は葵とさな居酒で会った。
広告
財務資料のこと、父との会話、という男、そしてのな忠告まで全て話した。
葵はし巻き卵を箸でつつきながら、最まで黙って聞いていた。
考え事をする、だけが無識にく。
優馬がよくっている癖だった。
「1つ、変だとわない?」
「何が」
「どうしてお父さんは自分で止めないの?」
優馬が眉を寄せた。
「運ホテルはお父さんが作った会社でしょう。社で株主。里見さんがいくら実権を握ってても、お父さんが本気で切ると言えば切れるはずよ」
「関係者がすぎる。ホテル全体が崩れるかもしれないって」
「それは建だとう」
葵は静かに首を振った。
「お父さんは、里見さんを止めないんじゃない。止められないのよ」
「何かみを握られていると?」
「分。それも仕入れのキックバックなんかより、ずっときいもの」
その夜、自宅へ戻った優馬は、匿名メッセージをもう度見た。
普通の携帯番号だった。
試しに話をかける。
数回の呼びし音の、相がた。
だが何も言わない。
10秒ほど沈黙が続き、相が先にをいた。
「本当にかけてくるとはな」
聞き覚えのある声だった。
「……?」
昨、レストランで対峙した健。
「あんたがメッセージを送ったのか」
「そうだ」
「なぜ」
い沈黙の、が言った。
「俺は、あんたの母親の方だからだ」
優馬のが止まった。
「俺の母さんは20にくなってる」
「今の母親のことじゃない。本当のお母さん――子さんのことだ」
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
退職届を出した夫が、最後の会議で暴いた妻社長の嘘
3年前。 妻・美穂が経営する会社で働いていた健二は、突然退職届を提出した。 理由は、妻の秘書・田中から告げられた一言だった。 「空気を読んで、自分から辞めてください」 愛する妻の会社で、自分だけが邪魔な存在になっていた。 しかし美穂は、田中との関係を否定し続ける。 「彼とは同僚としての関係しかない」 健二が信じていた3年間の結婚生活は、少しずつ崩れていた。 だが退職の日、健二はさらに恐ろしい事実を知る。 自分を追い出すために仕組まれた偽のセクハラ告発。 消された顧客情報。 そして、妻と秘書が隠していた本当の目的。 追い詰められた健二は、最後に残された証拠を手に取る。 音声記録。 社内システムの履歴。 競合会社との裏取引。 すべてを明らかにする場所は――妻の昇進をかけた役員会議だった。 そこで暴かれる、愛していた妻の裏切り。 10年間支えてきた会社も、信じ続けた夫婦の絆も、一瞬で崩れ去る。 そして健二は、何も奪わず、ただ一言だけ告げる。 「もう、昔の俺には戻れない」修羅場2.0萬字5 0 -
完結第13話
10年契約の果てに消えた夫
10年前。 事故で妻と娘を失ったタケシの前に、謎のシステムが現れた。 「別の世界で10年間、ユキとその娘に寄り添えば、失った家族を復活させる」 愛する家族を取り戻すため、タケシは契約を受け入れた。 そして彼は、ユキと幼いヒメのために、すべてを捧げる10年間を過ごした。 しかしユキが愛していたのは、タケシではなく、かつて自分たちを捨てた初恋の相手・シャオだった。 タケシは夫ではなく、都合のいい存在として扱われ続ける。 残り7日で任務が終わる日。 シャオが戻ってきたことで、タケシの最後の居場所は完全に奪われた。 そして彼は、10年間守り続けた家族からも、最後まで信じてもらえなかった。 やがて任務を終えたタケシは、すべてを捨てて元の世界へ帰る。 数年後、真実を知ったユキとヒメは、初めて彼がどれほど傷ついていたのかを理解する。 だが――。 もう彼の隣には、二度と離したくない本当の家族がいた。 10年間の犠牲は愛だったのか。 それとも、ただ失った家族を取り戻すための契約だったのか。修羅場1.9萬字5 3 -
完結第11話
一つの証拠が暴いた8年間の嘘
八年前、誰にも期待されず、孤独な海外勤務へ送られた男――朝倉洋一。 灼熱のインドで技術を磨き、ただひたすら努力を重ねた彼は、八年ぶりに日本へ帰還する。 しかし、待っていたのは栄光ではなく、同僚からの侮辱と冷たい視線だった。 そんな彼の前に現れたのは、かつて突然姿を消した初恋の女性・七瀬美咲。 「契約の鬼」と恐れられる彼女が、なぜ一介の技術者である朝倉だけを選んだのか――。 やがて社内で発生した機密情報流出事件。 犯人に仕立てられ、すべてを失いかけた朝倉を救ったのは、遠い異国で築いた一つの友情だった。 裏切り、嫉妬、そして八年越しの想い。 忘れられた男の本当の価値が、今、世界を変える。因果応報|人生逆転1.7萬字5 79 -
完結第16話
閉ざされた玄関の暗証番号
田園調布の豪邸で暮らす田中勇気と妻・桜。勇気は一人暮らしになった母・澄子を思い、妹の弓とともに同居を始める。しかし、その優しさは次第に家族の境界線を曖昧にしていった。 勇気が海外出張中、桜は高熱で倒れながらも義母の来客対応を強いられる。初めて「できません」と拒んだ彼女に、澄子は怒りを募らせ、桜本人の意思を無視して荷物をまとめ、家から追い出してしまう。 夫に心配をかけまいと黙って耐える桜。しかし異変を感じた勇気は急いで帰国し、隠されていた真実を知る。 妻を守れなかった自分の過ち、そして母が家族への感謝を「支配する権利」と勘違いしていたことに気づいた勇気は、家族の在り方を見直す決断をする。 本当の家族とは何か。愛情と依存の違いを描く、再生と絆の物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4萬字5 10 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 51 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 17 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 4 -
完結第12話
寿司屋で暴かれた嫁
68歳の田村節子は、息子の再婚相手である嫁・美咲を、ずっと“よくできた人”だと思っていた。 亡き夫を失い、1人暮らしになった節子の家へ通い、手料理を届け、病院の送り迎えまで申し出てくれる優しい嫁。近所の人たちからも羨ましがられ、節子自身も本当の娘のように感じ始めていた。 しかし、美咲は少しずつ、家の権利書や預金、保険の受取人について尋ねるようになる。 そんなある日、節子は美咲に誘われ、馴染みの寿司屋へ向かった。ところが店主は、美咲の顔を見た瞬間、血相を変えて叫ぶ。 「節子さん、その人から早く逃げてください」 店主の父を騙し、財産を奪った女と同じ顔――。 信じたい気持ちと、拭えない違和感。やがて節子は、嫁の荷物の中から決定的なものを見つけてしまう。 優しい嫁の正体は何者なのか。 そして節子は、息子と家を守るため、静かに反撃を始める。因果応報|相続|親子関係1.7萬字5 2 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 2