"返されなかった合鍵" 第6話
奈が尋ねた。
「し休む」
ちがり、台所へった。
裕子の言葉が、自分に向けられているようにじた。
守るため。
族のため。
子どものため。
そう言えば、の選択はすべて正しくなるようにえる。
千鶴も奈に何度も言った。
計が苦しいから。
お父さんが変だから。
あなたの将来のためだから。
の奈が京の美術学へきたいと言った、千鶴は反対した。
「絵でべていけるなんて、ほんの部よ」
「でも、受けてみたい」
「受験料も授業料もいの。うちの状況をしは考えて」
奈は元の期学へ学し、卒業は般企業へ就職した。
今は広告会社で事務をしている。
絵は描いていない。
「あの、私、お父さんが職になった理由をらなかった」
千鶴は湯を沸かしながら言った。
「うん」
「おがなかった。あなたの塾も受験もあったし、私が働かなきゃいけなかった」
「分かってるよ」
「だから美術学は無理だって……」
奈が遮った。
「今、それを謝ろうとしてる?」
千鶴は振り返った。
「違う。ただ、事があったって」
「お母さん」
奈は困ったように笑った。
「事があったことは、もう分かってる。でも、事があったら私が残じゃなかったことになる?」
同じことを以にも言われた気がした。
学の運会。
友達との旅。
結婚式の装。
千鶴はいつも、できなかった理由を説した。
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理由を理解してもらえば、娘の満も消えるとっていた。
けれど理解と納得は同じではない。
「ならないね」
千鶴は答えた。
奈がし驚いた。
「ならない。ごめん」
謝罪は、っていたよりい言葉だった。
その夜、は残りのテープを聞いた。
裕子はに1、2度、娘への言葉を録音していた。
美咲の15歳の誕。
18歳。
20歳。
成式のには、買っておいたという青い振袖について話していた。
『着なくてもいい。帰ってこなくてもいい。ただ、きていてくれればいいと、何度も自分に言いました。でも本当は、帰ってきてほしい。私を許さなくていいから、度だけ顔を見せてほしい』
裕子は病気になった。
入退院を繰り返し、仕事ができなくなった。雅夫の送額が3万円から5万円へ増えたのは、その頃だった。
最のテープは8。
『美咲へ。たぶん、これが最です』
声はく、聞き取りにくかった。
『野寺さんに、あなたの持ち物とこのテープを預けます。野寺さんは、私たちを助けたことで、ご族にも迷惑をかけました。それでも、最まで私に謝りました。守り切れなかったと』
裕子は咳き込んだ。
『でも、私はっています。あのにも守れなかったがいることを』
千鶴と奈は顔を見わせた。
『奥さんと、娘さんです』
千鶴は息を止めた。
『野寺さんは、あなたを助けるために、自分の族へ何も話しませんでした。
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話せなかったのではなく、話さない方がいいと決めたのです。それが正しかったかは、私には分かりません』
テープので、裕子がさく息を吐いた。
『私はあのに言いました。守ることと、信じないことは、々よく似ていますね、と』
雅夫は、千鶴に話さなかった。
妻が理解できないとったのか。
秘密を守れないとったのか。
危険に耐えられないとったのか。
いずれにしても、千鶴へ選ぶ会を与えなかった。
裕子は最に言った。
『美咲。もしこれを聞いているなら、野寺さんの奥さんに謝ってください。あなたのせいではありません。でも、私にはもう謝りにけません』
そこで録音は終わった。
部は静かになった。
奈がラジカセの止ボタンを押した。
「お父さん、何でこれをお母さんに聞かせようとったんだろう」
千鶴は答えなかった。
雅夫は、自分で説することを最まで避けた。
、別の女の声に語らせた。
卑怯だとった。
同に、雅夫自も何をどう謝ればいいのか分からなかったのだろうともった。
を助けたことは悔していない。
族を傷つけたことは謝りたい。
そのつは、同にする。
正義と悔は、どちらか方ではない。
「私、お父さんを許さなくてもいいかな」
千鶴が言った。
奈はすぐに答えた。
「いいんじゃない」
「くなったなのに」
「くなったら、何でも許さなきゃいけないの?」
千鶴はし笑った。
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