"返されなかった合鍵" 第8話
『私は、美咲のを尊したつもりでした。だが、裕子さんの声を渡す努力をしなくてよかったのか、今も分かりません』
最に、美咲の現の所がかれた封筒が、机の裏へ貼られていると告げた。
『千鶴。を渡すか、物を捨てるか、何もしないか。君が決めてください』
録音はそこで終わった。
千鶴はしばらくかなかった。
夫に会いたかった。
会ってりたかった。
なぜ自分に押しつけるのかと問い詰めたかった。
同に、雅夫の声をもう度聞きたかった。
巻き戻しボタンにを伸ばしたが、押さなかった。
翌、千鶴は203号へ向かった。
机を壁からかす。
裏側に、茶い封筒が貼りつけられていた。
消印は20206。
差は、
《森川美咲》
所は野県松本だった。
封をける。
便箋にはい文章しかなかった。
《野寺さんへ。母がくなったことはっています。私を探してくださったことも聞きました。でも、私は母のところへ戻りません。母をんでいるからではありません。戻れば、私はまた、あの頃の怖い子どもに戻ってしまうからです》
《今は夫と娘がいます。娘には、私の父親のことも、逃げていた頃のことも話していません。この活を守りたいので、連絡しないでください》
最に文あった。
《母の物は処分してください》
千鶴はを畳んだ。
美咲ははっきり拒んでいる。
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ならば、希望通りに処分するべきだ。
雅夫も、本のを尊して連絡しなかった。
それが正しい。
そううのに、赤いランドセルと31本のテープを、そのままゴミにすことはできなかった。
千鶴は、雅夫の言葉をいした。
守ることと、信じないことは似ている。
美咲は、母親の声を聞けば壊れるのか。
過をれば今の庭を失うのか。
それを決めるのは、美咲本ではないのか。
千鶴は便箋の所を見た。
6の所である。
今もんでいる保証はない。
それでも度、をくことにした。
母親のためでも、雅夫のためでもない。
25、選ぶ会を与えられなかった自分が、美咲に同じことをしたくなかった。
千鶴はを7回き直した。
最初の文章はすぎた。
夫がどれほど族へ迷惑をかけたか、美咲のために何を失ったかをいているうちに、責めるような内容になった。
破った。
2通目は、雅夫を派なとして説しすぎていた。
それも破った。
3通目には裕子の最期を詳しくいたが、会ったこともない千鶴が語るべきではないとい直した。
最終に残ったのは、便箋2枚だった。
《森川美咲さま。突然のおをお許しください。私は野寺雅夫の妻、千鶴と申します。夫は今2にくなりました》
《夫が借りていた部に、あなたのランドセルと類、お母さまが録音されたカセットテープが残されています。
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6のおに、すべて処分してほしいとかれていたことも読みました》
《ご希望が変わっていなければ、その通りにします。ただ、あなたの物を私の判断だけで処分するに、もう度だけ確認したいといました》
《受け取らない、聞かないというお返事でも構いません。返事がなければ、3かに処分します》
雅夫を許してほしいとも、母親の声を聞いてほしいともかなかった。
千鶴はを郵便ポストへ入れた。
返事は来ないだろうとった。
ところが12、い封筒が届いた。
差は森川美咲。
千鶴はすぐにはけられなかった。昼を済ませ、洗い物をし、洗濯物を取り込んでから、居のテーブルへ座った。
便箋には、った字が並んでいた。
《野寺千鶴さま。おをありがとうございました。ご主がおくなりになったことをり、驚いています》
《母の物は、すべて処分してください。私の持ち物も必ありません》
やはりそうかとった。
しかし、続きがあった。
《ただし、カセットテープが何本あるのか教えてください》
千鶴は《31本です》と返した。
そのうち7本は幼い美咲自の録音、23本は裕子、最の1本は雅夫のものだと説した。
5、もう度が来た。
《母の声が入っている23本のうち、最の1本だけ送ってください》
千鶴は迷った。
裕子の最のテープには、美咲だけでなく千鶴と奈についても語られている。
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