"ラジオの涙" 第4話
正が涙を流したのは、茂をいすからだけではなかった。放送で読まれるつつの名に、待つ族のがなって聞こえたからだった。
昭27の、正は放送局へ茂との捜索依頼をした。類には2の特徴と故郷、最に確認した所を詳しくいた。
数か、放送で取りげるという通が届いた。
その、族が眠ったも正はラジオのからかなかった。アナウンサーが茂との名を読み、報を求めた。正は息を止めるようにして聞いた。
しかし翌も、その次のも連絡はなかった。
1週、放送局から通のが届いた。『力な報は寄せられていません』というい文面だった。
正はを破らず、背嚢のへしまった。その夜も8になるとラジオのへ座った。
「もう放送は終わったでしょう」
子が初めて声をかけた。
正は振り返らなかった。
「俺が聞いていない夜に、向こうの名が呼ばれるかもしれない」
「正さんは、誰を待っているの?」
夫はい黙っていた。やがて、「帰れなかっただ」とだけ答えた。
子はそれ以尋ねず、夫の隣へ座った。縫い物をしながら、名もらない々を捜す放送を緒に聞いた。
その晩から、正がで泣くことはなくなった。
健が学になる頃、族の暮らしは以より定していた。
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正の勤める印刷には仕事が増え、借にもしい具がつずつ加わった。
古いラジオだけは、変わらず部の番よい所に置かれていた。音がにくくなると正は修理にし、目盛り盤の文字がくなると布で丁寧に磨いた。
健は、そんな父を次第に理解できなくなった。
学では戦のしい本について学び、友たちは将来、会社員になる、技師になると未来の話をした。健も過より先を見たいとった。
ところがへ帰ると、父は毎晩、戦争でれた々を捜す声にを傾けている。誰かの名が読みげられるたびに顔を曇らせ、ときには事の会話さえ止めた。
「いつまで聞くつもりなの」
になった健は、ある夜ついに父へ言った。
「もう戦争が終わって何たっているとっているんだ。きているは、今の活をしなきゃいけないだろう」
正はラジオのつまみにを置いたまま、息子を見た。
「待っているには、何たったかは関係ない」
「でも、名が呼ばれたことなんて度もないじゃないか」
「だから聞いている」
「帰ってこないばかり見て、今ここにいる族を見てないじゃないか」
その言葉に、子が「健」とく呼びかけた。しかし正はらなかった。
正はゆっくりラジオの源を切った。
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途だった放送が途絶え、部には気まずい静けさが残った。
「そう見えていたなら、すまなかった」
父が謝ったことに、健の方が戸惑った。反論されるとっていたため、それ以何も言えず、自分の部へ引っ込んだ。
その夜から3、正はラジオのへ座らなかった。夕は聞を読み、健の学の話を聞き、節子が覚えたにを傾けた。
族を見ていないという息子の言葉が、正の胸に突き刺さっていた。茂との約束を守ろうとするあまり、目のの族へ同じさを背負わせていたのではないかと初めて考えた。
4目の夜、健は父より先にラジオの源を入れた。
「もうすぐ8だよ」
正は聞から顔をげた。
「聞きたくないんじゃなかったのか」
「父さんが誰を捜しているかは分からない。でも、聞くなと言う権利は僕にはないから」
健はそう言って隣へ戻ろうとした。すると正が呼び止めた。
「茂という男だ」
父が初めて名をにした。
健は振り返ったが、正はラジオを見たままだった。
「俺と緒にいた兵隊だ。あいつの妹も捜している」
「きているの?」
「分からない」
それだけで会話は終わった。しかし健は、父が初めて自分へ過の扉をしだけいたようにじた。
その、親子で毎晩放送を聞くようになったわけではない。
健は勉や友との付きいがあり、正も無理に座らせなかった。
ただ815だけは、正は昼に古いラジオを磨き、族全員を呼んだ。
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