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"閉ざされた玄関の暗証番号" 第10話

桜は唇を噛み締め、答えることができなかった。勇気はそれ以追及することを止め、リビングの隅へと線を向けた。

壁際に、見慣れた型のスーツケースがつ、ぽつんと置かれていた。

単に友へ数遊びに来ただけの荷物量ではなかった。勇気はスーツケースを見つめた、ゆっくりと桜の顔を見つめ直した。

「君が……自分で荷物をまとめて、てきたのか?」

桜の唇が微かに震えたが、言葉は紡がれなかった。そのい沈黙こそが、何よりの雄弁だった。勇気はその沈黙を受け止め、母が話でにしていた『数お互いにれていればいい』という言葉の裏に、自分にはらされていない過酷な現実が隠されていることを完全に悟った。

勇気はスーツケースから目をし、桜の向かいのソファに腰をろした。の張り詰めた空気を察した蒼井が、控えめに声をかけた。

「私、ちょっとくのコンビニまで買い物にってくるね」

桜が顔をげた。

「蒼井ちゃん、ごめんなさい……」

「いいのよ。でゆっくり話して」

蒼井が玄関ドアを閉めてていくと、部にはだけの静寂が落ちた。勇気は桜の瞳をまっすぐに見つめ、静かに問いかけた。

「何があったんだ? 最初からすべて話してくれないか」

桜はどこから話し始めるべきか迷うように線を泳がせたが、やがてぽつりぽつりと、あの起きた来事を語り始めた。

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38度を超えるで寝込んでいたこと、義母の友への対応をいられたこと、片付けを断ったことから論に発展したこと、そして自分は実くつもりはないとはっきりと拒否したこと。

桜は呼吸置き、躊躇いながら言葉をねた。

「お義母さんが言ったの。『私ので、どうしてあなたの顔を伺わなきゃいけないのか』って」

勇気の目が微かに見かれた。

「……母さんが、自分のだと言ったのか?」

「うん。だから私が『どうして病気の私がていかなければならないのですか』って聞いたら、『ここがいつからあなたのになったの?』って……」

勇気は言葉を失い、拳を握りしめた。桜は淡々と、だが震える声で続けた。

「私は、自分のだとは度も言っていない。あなたと私がだと言ったの。そしたら……」

桜は、そのに起きた信じがたい景を語った。澄子と弓が階の寝に無断でがり込んできたこと、クローゼットからスーツケースを引きずりし、桜のやドレッサーの化粧品をに詰め込み始めたこと。

勇気はただ黙って聞いていた。母が語った「ちょっと言いいになって、実で休むと言ってていった」という説とは、根本から違っていた。桜が自らていったのではない。確に拒絶のを示したにもかかわらず、母と妹のがかりで荷物をまとめられ、実質に力ずくでから叩きされたのだ。

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「君が嫌だと拒否したのに……が勝に荷造りをめたのか?」

「『私のものに触らないで』って何度も言ったわ。でも、お義母さんは『けないなら伝ってあげる』って……荷物を詰めるを止めなかった」

勇気の線が再び壁際のスーツケースへと向いた。

「……それで、結局てくるしかなかったのか」

「あの状態のと、これ以争う気力はなかったの。体も、本当に限界だったから……」

勇気は妻の憔悴しきった横顔を見つめ、掠れた声で尋ねた。

「どうして……どうしてすぐに俺に話してくれなかったんだ?」

桜の瞳が揺れた。

話しようとしたわ。でも、あなたはアメリカで会社の命運を分ける事な交渉の真っ最だったじゃない」

勇気の眉い苦悩のシワが刻まれた。

「それが今、何の理由になるんだ! 俺にとって事なのは……」

わず語気がくなり、桜が微かに肩を竦めたのを見て、勇気はハッと息を呑んで声を落とした。

「……すまない。鳴ったわけじゃないんだ。でも、こんな酷い目に遭わされて、どうして俺を頼ってくれなかったんだ」

桜は膝のねたをぎゅっと握りしめた。

「だって……あなたがったら、仕事を投げしてすぐにんで帰ってきちゃうとったから」

勇気の喉が詰まった。妻の懸は完全にしていた。現に自分は、現の残務を切りげて予定を倒しし、こうして京へ戻ってきているのだ。

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