みかん小説
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"一杯の鍋が変えた人生" 第3話

会社へ戻れるようになったわけでもなかった。

それでも、以とは違うさな変化があった。

朝、目が覚めた

「今も何もできない」

そうに、ふと隣の部から聞こえる声を待つようになった。

「ママ、起きて」

「今は学だからくしないと」

美咲のしっかりした声。

そのろから聞こえる双子の眠そうな声。

そんな何気ない音が、優太にとっては議な支えになっていた。

の部は静かすぎた。

蔵庫の音。

計の針の音。

スマホの通音。

それだけが響く空だった。

しかし今は違う。

壁の向こうには、の暮らしがある。

誰かが朝を迎えている。

誰かが今きようとしている。

その事実だけで、優太はしだけ布団からることができるが増えていた。

ある朝、優太は久しぶりに台所にった。

蔵庫をける。

なら、何も入っていない蔵庫を見てため息をついていた。

しかし今は、実から届いた野菜がまだ残っている。

菜。

根。

参。

母親が育てた野菜だった。

優太は包丁を握った。

し震えた。

料理をすること自体が久しぶりだったからだ。

は簡単な料理すら面倒で、コンビニのおにぎりやパンだけで済ませるが続いていた。

でも今は違った。

誰かがべてくれる。

そのことを考えるだけで、議と体がいた。

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夕方。

里がさくげながら訪ねてきた。

「昨は本当にありがとうございました」

「いえ、こちらこそ。野菜をべてもらえて助かりました」

優太がそう言うと、里はし困ったように笑った。

「優太さんって、議ですね」

「え?」

「自分の方が変そうなのに……のことを気にするんですね」

その言葉に、優太は返事ができなかった。

自分ではそんなつもりはなかった。

ただ、あのの翔夜と同じような姿を見たくなかっただけだった。

「昔、友達を助けられなかったことがあって」

優太は静かに話した。

「だから……見て見ぬふりをするのが怖かったんです」

里は何も言わず、優太の話を聞いていた。

その目には同ではなく、理解しようとする優しさがあった。

それが優太にはし嬉しかった。

適応障害になってから、周囲の反応を見るのが怖くなっていた。

「気にしすぎ」

「考えすぎじゃない?」

そんな言葉を聞くたび、自分がになったような気がした。

でも里は違った。

否定しなかった。

ただ静かに聞いてくれた。

そのの夕も、5で鍋を囲んだ。

最初は慮していた双子も、しずつ優太に慣れていった。

「ゆう君」

そう呼ばれた、優太はし戸惑った。

「俺?」

「うん」

柚葉が笑う。

「ゆう君、お野菜切るの

「ありがとう」

「また作って」

その言が、優太の胸に残った。

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また作って。

誰かにそんな言葉を言われたのは、いつ以来だろう。

会社では「ありがとう」より「まだ終わらないの?」と言われることの方がかった。

誰かの役にっている実など、いつのにか消えていた。

でも今、自分の作った料理を待ってくれるがいる。

それだけで、しずつが戻っていくようだった。

数週が過ぎた頃。

里はしずつ自分の事を話すようになった。

彼女が以んでいた所。

婚に至った理由。

そして、3の娘を連れてのこと。

里の元夫は、では優しい父親を演じていた。

所からも評判の良い男性だった。

しかしでは違った。

仕事のストレスを理由に鳴る。

物に当たる。

子供たちが泣けば「うるさい」とる。

最初はしていた。

子供のためだとった。

父親がいた方がいい。

庭を壊してはいけない。

そう考えていた。

しかし、ある夜。

美咲がさな声で言った。

「ママ……もう笑わなくなったね」

その言葉で里は気づいた。

守っているつもりだった。

でも、本当は子供たちにも苦しいいをさせていた。

翌朝、里は3の娘を連れてた。

持っていた荷物はなかった。

それでも、子供たちのを握った瞬議と怖くなかった。

「この子たちは私が守る」

そう決めた。

その里は母親の助けを借りながら活していた。

しかし、

頼れるだった母親が病気でくなった。

そこから活は気に苦しくなった。

仕事を探した。

パートも始めた。

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