"地下室に消えた名前" 第5話
「医師の命令に従わない」「退院求を繰り返す」とある。病気の症状ではなく、自由を求める言そのものが異常として扱われていた。
残る3も、それぞれ事は異なった。
夫から暴力を受け、逃げ帰った実から療養所へ送られた女性。戦争で子どもを失い、嘆からち直れなかった女性。軽度の障害があり、族の世体を理由に入院させられた女性。
彼女たちは聖でも、単純な被害者でもなかった。病気に苦しみ、には周囲と衝突し、自分やを傷つけたことも記録されている。
だが、それでも医師が命を選別してよい理由にはならない。
族のには、再び患者を迎えることを拒んだ者もいた。病院へを送りながら、面会には度も来なかった者もいる。
社会も族も、治療できないを施設のへ押し込み、そのを見ようとしなかった。
羽療養所のい壁は、病院だけが築いたものではない。その代をきたくの々が、都の悪いを見えなくするために支えた壁だった。
6の資料を読み終えた夜、瀬は捜査本部に1残っていた。
机には、入院の顔写真が並んでいる。
文は穏やかな目をした27歳。は疲れた顔で正面を見つめている。千鶴は唇を固く結び、撮者を睨むような表をしていた。
の棚では番号しかなかった。
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だが、彼女たちには名があり、族があり、病院へ来るのがあった。
瀬は番号札の写真を裏返した。
翌朝、川のむ潟へ向かうことを決めた。
その老が真実を語らなければ、今度はきている者が彼女たちを2度目の沈黙へ追いやることになる。
川のは、潟県部の岸から100メートルほどれた所にあった。潮に晒された造宅で、庭には枯れた陽が並んでいた。
瀬とが到着したのは、のい午だった。
呼び鈴を押すと、髪の老が自分ので玄関へてきた。87歳とはえないほど背筋が伸び、透なレンズの鏡の奥から、鋭い目で2を見た。
「形県警の方ですね」
名乗るに言われ、瀬は老の顔を注した。
「私たちが来ることをごじだったのですか」
「旧病院で何か見つかったという記事を読みました。いつか誰かが訪ねてくるとっていました」
川は2を居へ通した。内は簡素で、医学の並んだ本棚と古い机、を見渡せるきな窓がある。
壁には、羽療養所の職員たちを写した集写真が飾られていた。央につ院のろで、若い川がを着ている。
「く勤めておられたそうですね」
「36です。医師としてのの半を、あそこで過ごしました」
「どのような病院でしたか」
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川はしばらく窓のを見た。
「の世界に居所を失ったが送られる所でした。治療施設と呼ばれていましたが、実際には終着駅にかった」
薬も員もりず、1の護師が30以の患者を担当するもあった。暴れる患者を布帯で拘束し、鎮静剤を投与する。気けいれん療法もわれたが、分な麻酔や筋弛緩剤を使えない代がく続いたという。
「今の基準で見れば、許されない治療もかったでしょう。しかし当、々は限られた段ので最善を尽くしているつもりでした」
川の説は然としていた。自分を正当化しようと声を荒らげることもなく、過度に悔いる様子もない。
瀬は般な質問を終えると、鞄から6枚の写真を取りした。
骨につけられていた番号札だった。
川は写真を瞥し、指先を止めた。
顔は変わらない。
しかし、それまで定だった呼吸がわずかにくなったことを、瀬は見逃さなかった。
「この番号に、見覚えがありますか」
川はい、写真を見つめていた。
壁計の秒針と、窓を揺らすの音だけが聞こえる。
やがて老は、写真から目をさず答えた。
「あります」
がを乗りした。
「誰の番号ですか」
「羽療養所の女性患者たちです」
「6の骨が、図面にないから発見されました。
布で包まれ、番号をつけられた状態でした」
川は驚かなかった。
瀬は言葉を続けた。
「病院の記録では、6とも自ら命を絶ったことになっています。
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