"退職届を出した夫が、最後の会議で暴いた妻社長の嘘" 第12話
会はしばらく何も言わず、彼の顔を見つめた。
やがて机へ指を置き、平坦な声で告げた。
「田。、自分で事部へき、退職続きをしろ」
田の顔から血の気が引いた。
彼は会へを伸ばし、弁解しようとした。
「会、俺は――」
鈴会はをげ、田の言葉を止めた。
「自分から辞めれば、まだ体面は保てる。会社から解雇処分を受ければ、この業界でおを雇うところは2度とない」
田は美穂へ助けを求めるように顔を向けた。
しかし美穂は、机にある浅い傷を見つめたままかなかった。
田はしばらくその横顔を見ていたが、返事を待つことを諦めた。
田は子からジャケットをつかみ、肩を落としてへ向かった。
扉が閉まり、彼の姿が会議から消えた。
扉の留め具がさな音をてると、誰も田を追わず、そのに静けさだけが残った。
田がていくと、鈴会は娘へ向き直った。
その目には、たい失望が表れていた。
美穂は父親の顔を見たまま、演台の縁からゆっくりをした。
鈴会は娘から目をそらさず、平坦な声で告げた。
「おも同じだ。おの問題については、へ帰ってから話す」
美穂は演台から1歩がり、父親を見た。
「お父さん――」
鈴会は資料を閉じ、娘の言葉を止めた。
「へ帰ってからだ」
私は机に残った最の封筒を持ち、鈴会のへ置いた。
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3つの封筒の端をそろえ、原本は私が保管していると説した。
「会、これはすべての資料のコピーです」
鈴会は封筒を見つめ、私の続きを待った。
私は会議にいる役員たちへ線を移した。
「証拠をメディアへ送るつもりも、広く公するつもりもありません」
美穂が顔をげた。
会議が始まってから初めて、彼女は私だけをまっすぐに見た。
私は彼女の目を見たまま、ここへ来た理由を伝えた。
「彼女を破滅させたいわけではありません。ただ、先の段で、すべてをもみ消せるわけではないと分からせたかっただけです」
私は署名済みの婚協議を机へ置いた。
が机のへ触れる音を確認してから、取り決めの内容を順番に伝えた。
「、正式に郵送します。マンションは美穂へ、は私へ。預は折半で、ほかに財産の争いはありません」
鈴会は婚協議へ目を落とした。
美穂は反論せず、両を体のでねた。
私は子かられ、鞄を持ちげた。
「私は何も求めません」
呼吸置き、美穂の方へ顔を向けた。
「ただし、彼女には自分のしたことへ、きちんとけじめをつける義務があります」
それだけ告げ、私はへ歩き始めた。
靴がいカーペットへ沈み、音はほとんど聞こえなかった。
ドアノブへをかけた、背から美穂の声が届いた。
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彼女は初めて、役職ではなく私の名を呼んだ。
「健」
私は扉を握ったまま、を止めた。
会議は静まり返り、美穂の呼吸だけがかすかに聞こえた。
美穂は演台から私の背を見つめ、声を絞りした。
「ごめんなさい」
さな声だったが、そのにいる全員へ届いた。
私はドアノブを握ったまま数秒ち止まったが、返事はしなかった。
私は振り返らず、会議をた。
扉が閉じる音によって、そこでの話は終わった。
廊の突き当たりでエレベーターへ乗り、1階のボタンを押した。
30階からがり始め、表示が29、28と切り替わった。
会議の扉が閉じたも、美穂が追ってくる音はなかった。
28階で扉がくと、段ボール箱を抱えた由がっていた。
箱にはファイルと私物が詰められ、にはさな観葉植物が載っていた。
葉はエレベーターから流れるに揺れ、反り返ったファイルの端へ触れていた。
由は私を見て1歩がった。
私は閉まりかけた扉を腕で止め、彼女が乗れるようにした。
由は箱を抱え直し、かれた声で礼を言った。
「ありがとうございます、マネージャー」
私は事を尋ねず、うなずいた。
由が乗ると、扉は再び閉じた。
エレベーターはそのまま1階へり、私たちはエントランスへた。
由は段ボール箱を落とさないよう両腕で抱え直した。
由は箱を抱えたまま別の方向へ歩き、私はガラス扉のへた。
午4のが、会社の正面階段へ広がっていた。
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