みかん小説
本棚

"エレベーターの7時間" 第13話

私は元の証を折らないよう持ち直した。

回しに言う方が、余計に傷つくでしょう」

はうなずいた、赤ちゃんがまれたららせてほしいと頼んだ。

私は1秒考え、父親として必報は法と医療倫理に従ってらせると答えた。

そので、彼の目を見て境界を伝えた。

「父親のを、私へづくために使わないで」

はわずかな期待を失った顔で、理解したとうなずいた。

茜のづくと、私は階段をりた。

へ乗る直が背から声をげた。

、無事に産できることを祈っている」

私は振り返り、最に彼へ願いを返した。

「私も祈っているわ。あなたが罪悪や泣き声ではなく、本当に救助を必とするを見極められるようになることを」

すと、は役所の階段に残り、やがて見えなくなった。

々は静かに過ぎた。

さんは毎事を作り、茜は週2回、果物とくだらない話を抱えて訪ねてきた。

のり子のおかげで、私はクリニックの資料を使った宅勤務も始められた。

恵は々、息子を連れて遊びに来た。

男の子は私を見げ、エレベーターで1番勇敢だったと話した。

私はその髪を撫で、笑って首を振った。

「勇敢だったのではないわ。みんなで協力して、き延びようとしただけよ」

妊娠30週になると、私はし広いアパートへ移った。

広告

当たりのよいリビングとバルコニーがあり、公園と病院にもかった。

きな窓のそばへベビーベッドを置き、さなを1枚ずつ洗って干した。

義母は1度だけロビーまで来たが、ドアを叩かず、と赤ちゃんを会わせてほしいとメッセージを送った。

私は画面を確認し、必な連絡は弁護士を通すよう返信した。

義母が酷なだと送り返してきても、それ以は答えなかった。

桜からも、京をれるという連絡が届いた。

には「あなたの勝ちよ」とかれていたが、私はすぐ削除した。

私は桜と競争したことなどなく、勝ち取ったのは、自分を犠牲にしての欠片を求めていた過の私からの自由だった。

は茜を通して胎児の状態を確認するだけで、私活へ干渉しなかった。

3か、彼が現へ復帰したと健太から聞いた。

指揮官には戻らず、と同じ位置から訓練をやり直していた。

健太は、が訓練のたびに繰り返す言葉を教えてくれた。

私は届いたメッセージをき、その文を読んだ。

「現では叫び声だけに惑わされるな。1番静かなが、1番危険な状態にいることがある」

私は画面を閉じ、腹のく娘へを添えた。

あの7が将来の救助を変えるなら、暗も完全に無駄ではなかったのかもしれない。

まり、る夜けに陣痛が始まった。

広告

分娩へ入るまで、茜は私のを握り、正さんは緊張で涙を流していた。

陣痛の、私はあのエレベーターのたい壁をした。

で腹を抱き、もうしだけ頑張ってと呼びかけた夜から、私たちはここまで来た。

やがて赤ちゃんの鋭い泣き声が分娩へ響いた。

助産師は笑顔で、さな体を私の胸へ置いた。

「元気な女の子です。肺もしっかりしていますよ」

私はしわの寄ったさな顔を見つめ、涙を止められなかった。

娘の温かさを胸にじながら、初めて名を呼んだ。

「初めまして、優凪。この世界へようこそ」

私は、優しく穏やかにきてほしいという願いを込め、娘を優凪と名付けた。

危険のでも落ち着きを失わず、静かなの真実を見極め、平穏なを結んでほしかった。

、茜は約束どおり、産をらせた。

は病院へ押しかけず、健太に束と分な額面のを託した。

健太が病へ来ると、私と優凪の状態を確かめてから、束と封筒をテーブルへ置いた。

さんからです。必な記録も付けてあります」

健太は私へ礼し、病た。

封筒にはと、1枚のカードが入っていた。

私は優凪を抱いたまま、の文字を読んだ。

へ。娘を無事に産んでくれてありがとう。望まれた境界は守り続ける。ただし、父親としての義務は果たす。

そして、自分が失ったものを忘れない」

私はカードを読み終え、束をナイトテーブルへ置いた。

は茜へ渡し、父親からの支払いとして正式に記録してもらった。

へのも憎しみも、もう残っていなかった。

には、過へ置いてくるべきがいる。

消防署の事故記録ファイルに収められた結婚指輪と同じように、も今では、私と娘がき延びた事故の記憶の部にすぎなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: