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"「孤児の貧乏女」と捨てた妻の本当の正体" 第1話

京の夜景が望できる港区の級タワーマンション。その最階にあるリビングの央、井から吊りげられた豪華なシャンデリアの煌びやかなが、巨なガラステーブルをたく照らししていた。部を満たす静寂を切り裂くように、男の威圧な声が響き渡る。

「孤児院育ちの貧乏女には、この級マンションは息が詰まるだろう。さっさとその婚届に判子を押して、俺たちの目のから消えてくれよ」

夫である拓也の酷な言が、たくね返った。

拓也の腕には、派な装いの若い女、由がぴったりとまとわりついている。は勝ち誇ったような、そして獲物を見すような品な笑いを浮かべながら、私をじっと見つめていた。彼らは完全に、自分たちこそがこの世界の勝者であり、私を無力な敗者として切り捨てたつもりでいるのだ。

だが、このは気づいていなかった。俯き加減の私の元が、かすかにがっていることに。そして彼らはる由もなかった。私から全てを奪い、ゴミのように捨てたつもりの彼らが、たった数に文字通り全てを失い、獄の底をいずり回ることになるなどとは。

ガラステーブルのには、枚のっぺらいが置かれていた。緑のインクで印刷された婚届だ。

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その用には、すでに夫である拓也の力い署名と捺印が済まされている。あとは私の欄を埋め、判子を押すだけで、私たち夫婦のにわたる結婚活は完全に終わりを告げ、ただの赤のへと戻ることになる。

拓也は仕てのいい級スーツを着崩しながら、苛ちを隠そうともせずにテーブルの端を指先でトントンと叩いた。

「ほら、さっさとけよ。おみたいな寄りもない、学もない女を、俺がここまで養ってやってたんだ。謝こそすれ、文句はないだろう」

歳になる拓也は、都内の商社で最の営業部に抜擢されたばかりだった。最ではテレビの経済番組にコメンテーターとして呼ばれることもあり、すっかりになり、自分のことを選ばれた特別なだと信じきっている。

拓也の腕にを寄せた由が、甘ったるい声をしながら私を嘲笑うように言った。

「美桜おばさん、拓也さんみたいなエリートには、もっとふさわしい奥さんが必なの。あなたみたいなで貧乏臭いじゃ、拓也さんの世の邪魔になるだけでしょう?」

まだ半の由は、ハイブランドの作ワンピースにを包み、これ見よがしにの薬指にはめられたきなダイヤモンドの指輪をチラつかせている。

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それは本来、私の結婚記に贈られるはずだった指輪の予算が、そっくりそのまま化けたものに違いなかった。

はさらに元を歪め、私のちをくえぐるような言葉をねる。

体、親の顔もらない孤児なんて、血筋がれたもんじゃないわ。うちの親も、そんな素性のれない女が奥さんだなんて拓也さんがだって言ってたわよ」

拓也は由の言葉を咎めるどころか、満そうにく頷いてみせた。

「由の言う通りだ。俺も部になった以、これからは役員たちとの族ぐるみの付きいも増える。その、妻が施設育ちの卒ですなんて、恥ずかしくてが裂けても言えないからな。俺の完璧なキャリアに傷がつくんだよ」

ない言葉の矢が、次々と私に向けられる。普通なら、も連れ添った夫の裏切りに泣き叫んだり、り狂って浮気相の女に掴みかかったりする面かもしれない。

しかし、私は言も発することなく、ピクリとも表を変えずに、ただ静かにを見つめ返していた。りやしみではない。私のにあったのは、ただひたすらにえ切った失望と、底れぬれみだけだった。

、借まみれでそのべ物にも困っていたフリーターの拓也を拾い、必に支え、裏からを回して流企業の正社員になれるようを作ってやったのは誰だとっているのか。

彼が商社でトントン拍子に世できたのが、本当に自分の実力だとい込んでいるその滑稽さ。

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